第86話 路上勧誘会
俺とパットミちゃんは午前中一杯を人材を確保すべく街を駆け回っていた。街の人は皆俺の事を知っており、最早日の照っている時間帯は護衛すら必要なかったのだが、一応俺には両手の無い男、パットミちゃんには4番手の盗賊が護衛に付く事になった。何故4番手の盗賊かと言うと、弓矢が高コストな為に弓兵の数が揃うまでは訓練を控えると言う理由からだった。
~正午。宿屋の一室。
「パットミちゃん、勧誘どうだった?」
「冒険者達はこないだの騒ぎで負傷していて、まともに貰えた良い返事は2人だけ……後はみんな商人ばっかり。コーディは……?」
「戦力になるかどうか分からんが12人」
「凄い!」
「おーい、お前らー」
ぞろぞろと兵士見習いの連中が大部屋の方から宿屋の一室に入って来た。
「先ず、1番目立つ彼が傴僂のセム君だ。普段は街の外で暮らしているらしいんだが、たまに物を買いに魔法都市グルグルに来るとの事。槍の突撃で大土鬼程度なら一撃らしいよ」
「何処で見付けてきたのよ」
「そして、こっちが盲のメッキー君。貧しい母と二人暮らしだったんだが先月母が亡くなったらしく、困っていると近所の人が推薦してくれた」
「目が見えるようになる魔導具で10人は人が雇える」
「そんで、彼はグルグル5本の指に入る金持ちの三男坊。天使の話を聞いて一旗上げたいなーと思ったらしい。あ、親とは絶縁したってさ」
「厄介事抱えてない?」
「そして、彼は元兵士だったんだけど右目と鼻を失ってる。あと右膝に矢も受けたみたい。まだまだイケるってんで連れてきた」
「どうも微妙で突っ込みにくい」
「そして、彼等は土鬼騒動で孤児になった3人、年齢は10と11と12歳だ。体力も戦意も十分だ。戦えなくはないだろう」
「まだ子供じゃない……って私達もか」
「こっちの彼は酒場の男性ポールダンサー、キュアスパルタカスの同性愛者部隊があるって言ったら飛び付いてきた」
「痴話喧嘩で部隊解散とかやめてよね」
「そして、鼻の長い彼は陸に打ち上げられたカッパ……じゃなかった、元海賊王を自称するデンジャラスな逸材だ!」
「ヒョロガリじゃん」
「そして彼は……特に変哲のない青年かな」
「1番まとも」
「後は特に特徴の無い乞食だ。信念は特に無いが、路上生活が長いからMPは人並みはあるらしい。声掛けたら付いてきた」
「人並み? 人並みは兵士としては少ない!」
「最後は“火玉弾”の使い手のモヒカン肩パット君だ。彼は赤色のMPを持っているから炎系の魔法は得意なんだってさ。あと、とても清潔好きらしい。この辺ポイント高いよね」
「うーん。みんな個性が強過ぎるかな。集団生活大丈夫?」
「めくらのメッキーは紐で繋いでマラソンすれば良いし、彼はMP高めだから炎魔法が得意なモヒカン肩パットと組んで定位置待機の砲撃部隊にしても良い。ヒョロガリ達も子供達も基礎体力付けてゆっくり育てられれば問題ない。あと、あんな身なりだがせむしのセム君は案外素早いし強いぞ」
「アイヤ! セイ! ハイヤー!」
せむしのセム君は手製の槍をヴンヴンと振り回し、ドンと床を叩くと足元に蝿が落ちた。
「ね? 凄いでしょ?」
「いやまぁ確かに凄いけど……」
パットミちゃんは後ろに並ぶヒョロガリ達を見回す。
「まぁいっか。育てるのに時間掛かりそうだけどね」
「おう!」
パットミちゃんが連れてきた即戦力になりそうな奴を2人合流させて、ルルーシュインに引き渡す。不思議と嫌そうな顔をせずに部隊に合流させてくれるそうだ。ルルーシュインの所にも、ルルーシュインの所在を知った元マ・ンの兵士が数人合流したらしく全部で40人超の大所帯となった。故にルルーシュインが五十人隊長に格上げとして、キュアスパルタカス、元1番手の盗賊、せむしのセム君、めくらのメッキー君を十人隊長に格上げとした。
つまりこんな感じだ。
ルルーシュイン五十人隊長
キュアスパルタカス十人隊長(双剣&剣盾兵)
元1番手の盗賊十人隊長(重装兵)
せむしのセム君十人隊長(槍兵)
めくらのメッキー十人隊長(魔法兵)
ウィルソンチャック十人隊長(工兵)←帰還中
せむしのセム君はルルーシュインから見ても戦闘能力が高く、めくらのメッキーはMP500と言う驚異の魔法能力を持っていた為に入隊から直ぐの十人隊長就任となった。俺のスカウトマンとしての才能は証明されたな!
……と、整列した軍を見てうんうん言っていたら、せむしのセム君十人隊長就任の人事に文句をつけた同じく槍使いの元3番手の盗賊がせむしのセム君と決闘との運びとなったが、あっという間にボコボコにされていた。憐れ。しかし、せむしのセム君はボコボコにした元3番手の盗賊の手を掴んで起こし、頭を下げた後に部隊に関して分からない事だらけだから副官として助けてくれとか何とか言って、場を纏めていた。人格者や。
◇ ◇ ◇ ◇
~宿屋。夜。
そして、夜が来て俺主催の宴会を開く事となった。金貨3枚使っての大盤振る舞いや。クソー、軍を維持するのは大変だな。
俺は苦い顔を笑顔に変えて、ルルーシュインに肩車してもらい、挨拶をする。
「じゃあ、今夜は無礼講だ。ボロい宿屋も宿泊人数増え過ぎて最早貸し切りになってるから遠慮はいらないぞ! 飲め! 社畜隊に……乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
しかし、何だかんだで皆楽しそうだった。
人間的にも負けて踏んだり蹴ったりの元3番手の盗賊だが、何だかんだで酒を飲んだらせむしのセム君と肩組んで仲良さそうに歌ってた。セム君肩痛そうだけど。
双剣部隊も何だかポールダンサーが踊り出したり、所々で獣の咆哮が聞こえてきたり、色々と雄臭いようで何より。
魔法部隊は所々で火を吹くので危なくて仕方がない。
マ・ンの歌やらグルグルの歌やら聞いた事の無い言葉の歌まで聞こえてくるのは多国籍軍らしい。それでいてあまり争い事が無いのはとても良い事何だろう。
斜め上から陶器に氷が触れる音が聞こえる。
「飲まないのか?」
「あいにく未成年なもので」
「……そうだったな」
大部屋の窓辺に座っている俺の隣にルルーシュインが腰掛ける。
「全員の兵士化には魔導具を買う資金が足りない。現状20人分の対ステータス異常の魔導具を用意したが、あと20人分は何処かで稼がねばならない」
「……そうか、もう資金は尽きたか」
一国を救った報酬となる金貨500枚が40人分の兵装で足りなくなるのか。軍の維持や戦争ってどれ程金が掛かるのかわからんな。
「だが、それでもこれだけの人員と装備を持っている私軍はそう無いぞ。後は訓練だな。流石に兵士としては認められない連中が多過ぎる」
「ヒョロガリとかな」
俺とルルーシュインはハハと笑い合う。
だが、俺の頭の中では「金策」「クーデターの阻止」「ルシフェル」そして「グローリア」の単語がグルグルと回っていた。




