閑話休題:ルルーシュインのお話
視点が一時的に変わりますがご了承下さい。
三人称ルルーシュインメイン位の視点です。
「速い……流石七百人隊長と言うだけあるな」
「いや君も十分に速いと思うよ、ルルーシュイン君」
ルルーシュインと額に十字傷の男は魔法都市グルグルの七百人隊長の数m後を並走している。南の城門を出て1km程は10人程度の十人隊長相当の強さのある戦力と謎の巨大ロボットザコが掃除をしてくれていた為にかなり走りやすい状況が作られていた。彼等は足を止めずに駆け抜ける。
そして、ルルーシュインは向かう先から金色の土鬼と赤色の土鬼が来る気配を感じ取った。
「コイツぁビンゴかもなぁ」
「向かう先が巣の可能性の可能性が高まりましたね」
「ヒャッハー血が騒ぐぜー」
同行戦力達はその行く先に確信を持った。今回の目的地は徒歩2時間程度の場所にあるルーシア渓谷の廃棄鉱山跡。
そこは露天鉱山も兼ねると言う作りの場所で、所々5~8m程の深さの擂り鉢状の穴が開いている筈なのだが、その穴の9割は埋められていた。
彼等はルーシア渓谷の廃棄鉱山手前の丘に姿を隠していた。
「おいおいマジかよ……。あれは……人間?」
「生きているみたいですね」
俺達は崖の上に伏せて眼下の露天鉱山を眺めていた。
幾つか仕込まれていない穴を見ての推測も含まれるが、直径2m程度の穴の中心には生きている人間が植物の様に植えられていた。……次々と運ばれてくる土鬼の死体を土として。
――――あれは間違いなく穴と魔素を使って黒い土鬼を作っているのだと誰もが確信した。
作業を指揮しているのは武装している黒い土鬼達で、体格の大きく力の強い大土鬼が作業に当たっている。見渡す限り穴の数は20前後。作業している大土鬼の数は100前後。黒い土鬼は20程度。この場に居る誰もがこの土鬼工場を1人で壊滅させられる。
しかし、奥にある鉱山洞窟の入り口からゾロゾロと行列を作って沸いてくる大土鬼の群れに一行はただただ二の足を踏んでいた。恐らく彼等の行き先は魔法都市グルグル。どの場所にあれだけの土鬼が収納されていたかは定かではないが、このままだと無尽蔵に増える大土鬼に味方が圧迫されるのは目に見えている。
彼等は、数瞬の目配せと頷きで“突入”を選んだ。
「ここはルルーシュイン・額に十字傷の男に外側の掃除をお願いして、魔法都市グルグルの組が中に突入するとしよう。魔法使い百人隊長は通路が詰まらないように大土鬼達の掻き出しを頼むぞ」
七百人隊長の言葉の後に全員が目配せを行って、各自が配置について飛び出す。
ルルーシュインと額に十字傷の男は先頭を七百人隊長達に譲って、その後同時に飛び出したが初めの大土鬼へ到達するのは額に十字傷の男だった。
「素早さには自信があったのだがな」
「遅れたのは、どんな事情があるのか知りませんが痩せているからでは?」
ルルーシュインが放つ青龍円月刀の一撃は広範囲を薙ぎ払った。するとごうと言う風の音の後にバラバラと大土鬼の土の様な臓物と手足が落下した。
その背後では額に十字傷の男が黒い土鬼に腰の長剣を使っての袈裟斬りを放つ。黒い土鬼はその持ち前の素早さで鉄の剣で受ける判断をするが、かんと言う音と共に鉄の剣は弾かれ、同じく鉄の補強のある革鎧の腹に吸い込まれる様に刺さった。額に十字傷の男はそのまま剣を振り上げて、黒い土鬼の内蔵を掻き回すように放り投げた。1m程の高さに放り投げられて落ちてきた黒い土鬼はやがて絶命する。
「ゲギャゲギャ」
「ゲギャゲギャ」
何かを話し合うようにして向かい合う黒い土鬼は、命令のようなものを出していた。その号令で密集陣形の様なものが2つ出来上がる。
「来るぞ」
「来ますね」
出来上がった密集陣形はルルーシュインと額に十字傷の男を分断包囲する様に三又に別れて襲ってきた。大土鬼はその膂力で拳大の石を投擲したり、襲われている味方へのサポートをしながら時間をかけてゆっくりとルルーシュインと額に十字傷の男に攻撃を仕掛けてきた。
しかし、ルルーシュインの持つ青龍円月刀は一度振り回されると、投げられた石と共に数匹、十数匹の大土鬼を葬った。あっという間に包囲を抜けたルルーシュインは槍を構えつつ回転して周囲の敵を切り裂いていく。背中に放たれた投石は真紅のマントに絡め取られてルルーシュインへと衝撃を伝える事はなかった。
同じ頃、額に十字傷の男は大土鬼の包囲を一点だけ切り崩して、塊から飛び出した。その後指揮を取っている黒い土鬼の集団に突撃し、半包囲されながらも着実にその数を減らしていった。
ルルーシュインの武器は巨大な薙刀の様な形状をして居る為に、大土鬼をまとめて薙ぎ払うのに向いており、額に十字傷の男はその切れ味のある長剣と巧みな剣術で黒い土鬼をすぱすぱと葬っていた。これはお互いの武器の特性をお互いが理解した上での住み分けだった。
結果、襲撃から10分を待たずに土鬼達は全滅した。
後は魔法を使って鉱山入り口から土鬼を吸い出すようにして放り投げているグルグル魔法使い百人隊長が作業をしているのみだった。
ルルーシュイン達は互いに頷き合って、土鬼に埋められた人達を助け出し、介抱していく。そして、穴を火炎魔法を使って焼いていく。ほぼ全員を助けたと思ったら、鉱山入り口から土鬼女王の首を持った七百人隊長が現れた。
「何とかこっちは終わったぜ」
「此方もだ」
「こちらも何とか落ち着きました」
「では、巣の掃除は後回しにして魔法都市グルグルに帰還し、味方の援護に行こう。金色の土鬼や赤い土鬼も気になる所だ」
「そうだな」
「行きましょう」
……。そして、帰った彼等が目にしたのは数万匹の土鬼の死体と、強力な魔法防御を展開していた筈の城壁が無惨にも崩れ落ちている様子だった。傍らには金色の土鬼と赤い土鬼も倒れている。
彼等は、その光景に戦慄して、ただただ呆然とするだけだった。




