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“偽天使転生”~社畜編集者の異世界成り上がり録~  作者: 林集一
聖の章 前編 聖別幼育園へようこそ!
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第8話 残酷な天使の魔法!

 翌朝の目覚めはグローリアの方が早かった。


 社畜の筈の俺が睡眠時間の短さでグローリアに負けたのは今日が初めてかもしれない。それだけ目覚めは最悪だった。


「グローリアちゃんおはよー!」

「チロリ=ツンパカブリエルちゃんおはよー!」


 クラスメイトは相変わらず元気だ。前世の俺も長生き出来ていたらこんな子供を産んで(産ませて)育てたりしていたんだろうか?


「グローリアちゃんおはよー!」

「ゲロゲロ=ソフィエルちゃんおはよー!」


 だとしたら絶対娘にゲロゲロなんて名前は付けねぇ。キラキラなんてレベルじゃねぇ! 奇抜さ余って可愛さゼロだろうが!


 ……。


 はぁ、少し病んでたな。ハイパワー・ナグルス先生に八つ当たりしても仕方がなかった。少し反省しよう。


 そして、情報の整理だ。俺が知ってるのはこの世界の概要や地図。その情報の鮮明さは忘れられないようにロックが掛かっているようにすら感じる。その情報を元に考えるのならば、確かにこの国は侵略の危機だ。


 勢力的に見るならば、このロンドヴルーム国と赤人の帝国エンパイアオブヴァルゾネスは1対100の戦いにしかならないだろう。隣の水の都ヴェネツィアでも20対100……位だからな。守りが有利だとあってもこれだけ力が離れていればごり押しされてしまうだろう。


 果たして“預言を司る本”だけでどうにかなるだろうか?


 それも怪しい。


 そして、俺……“コーデックス”は、本当に“預言を司る本”なのだろうか? 確かにこの世界をこの世界の住人より知っている。この時代の俯瞰した情報はかなりの優位だろう。しかし、未来を写し出すと言う“預言を司る本”とは毛色が違いすぎる。これは俺以外にも似たような“コーデックス”的な奴が居る可能性が高い。


 小説家本人か?


 ……いや、あれはきっと多分小説家自体も書かされただけだろう。でなければあの量を誤字の1つも出さずに書き上げられる訳がない。あのクソ小説家は1話に3つは誤字があるからな。


 ……。


 ふむ、となると、考えは振り出しに戻るな。そもそも、小説家の野郎が犯人だとして俺は電話番号くらいしか知らんのだがな。この世界に電話もないが。


 となると、マジで天使の歌に呼び出されるパターンか……。となると今夜もまたハイパワー・ナグルス先生と夜の密会だな。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「はい、今日は皆さんに魔法の使い方をお伝えします」


「「「おおー! 魔法! 魔法!」」」


 ハイパワー・ナグルス先生は文字の書き取りの予定を止めて、結構アレな授業をブッ込んできた。


「とは言っても使えるのは1ヶ月位先になる筈です。気長に勉強しましょうね!」


「「「はーーーーい!」」」


 ――――魔法。これはこの世界の住人にとってはかなり頭を使う事で修得する。まず800字詰めの作文用紙に呪文を作って丸暗記する。この時に作る呪文はどんな言語でも構わない。この時に段落等を開けても良いが、文字数が多いほど魔法が安定する。そして、呪文はその魔法の体を表す文言なら(なお)良い。


 こうして覚えた原稿用紙の呪文を頭で再生するか口頭で唱えるとそのその呪文に割り当てた魔法が発動する。慣れてくると、途中の文言をすっ飛ばしたり魔法名を言うだけで発動させたりも出来る。


 但し、2つ目の魔法を覚える時は原稿用紙が2枚、次は3枚と覚える文字数は青天井に増えていく。所謂(いわゆる)魔法使いとか言われる10種類以上魔法が使える奴は卒論(数万字)の丸暗記と言うバカな事をしていると思って良い。


 だが、一旦覚えると脳に刻まれるので何年ほったらかしても忘れにくいと言う特徴はあるみたいだ。


 そしてその呪文を丸暗記した後の脳味噌には魔力(MP)の通り道……つまり魔術回路の刻まれる領域が出来上がる。その領域に「火を起こす」「風を吹かせる」等の現象を魔法としての名前と共に記録すれば完成。


 使えば、その奇跡の量に応じたMPが消費されて発動する。それだけだ。


 ……文字を覚え始めた俺達は少し早すぎる次のステージに放り込まれた訳か。多分、昨日の話も無関係ではないだろう。俺達は多分……いや、きっと帝国と戦わされる戦力としても見られている。


 ハイパワー・ナグルス先生は嫌々ながらの顔で獣皮紙の原稿用紙を配っていた。


「魔法……ね」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 俺は目の前に出された獣皮紙の原稿用紙に「アニメソング」を書きなぐった。残酷な天使のアレだ。


「出来ましたー」


「グローリアさん……? は、早いですね……。どれどr(ブフォァwwwフヒッwww)んん! ゴホン! し……失礼……ブホッ!」


 この魔法を覚えるシステムは俺にとってクソ有利だった。90年代辺りからのアニソンは腐るほど覚えてるからな?


 ハイパワー・ナグルス先生が耳元で囁く。


「(日本語で良いんですか!? コーディさんっ!)」


「(“コーデックス”情報だと何言語でも良いらしいな)」


「(これ、前世の記憶がある人めっちゃ有利じゃないですか?)」


「(ハイパワー・ナグルス先生も利用してみては?)」


「(アッッッッ!)」


 俺はこの後、就寝までの数時間の間に10の魔法を覚える領域を確保した。そして、束ねた獣皮紙の厚さは殴ればバサッと痛いレベルの厚さになっていた。この件が表に出ると神童扱いされるのが目に見えているので、作業は隠れながらやる事をハイパワー・ナグルス先生に許可して貰えた。そもそも日本語を見られたら不味い。


 まだまだ魔法を使うための土台しか立てられていないが、これなら生きていくだけの備えはある筈だ。


 ……夜が来た。






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