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“偽天使転生”~社畜編集者の異世界成り上がり録~  作者: 林集一
聖の章 後編 都市国家群と祈りの道
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第67話 雪だるま式

「すいません……私達もご一緒しても宜しいでしょうか……?」


 山賊か何かに身ぐるみを剥がれた6人の裸の怪我人が話し掛けてくる。


「いいよ。魔法都市グルグル迄一緒に行きましょう」


「ありがとうございます……神様!」


「俺は神じゃなくて偽天使だよ」


 ……。


 雪だるまが坂道を転がる如くと言えば良いだろうか。何と、森林国家アイヌから魔法都市グルグル迄の道を進むに当たって、可哀想な追い剥ぎ被害者一向はみるみるうちに増えていった。


 はじめは6人、次に4人、また次に6人……、3人……と、裸んぼうの血だらけマンとスレ違う度に俺達一行の人数は膨らんでいった。


 彼等は盗賊横丁とでも呼んで良い位沢山の盗賊の住む街道で2度3度と盗賊達に襲われ、裸で放り出されていたのだ。運の悪い奴は死んだか、奴隷にされたのだろう。


 そして、藁にもすがる思いで俺達に声をかけた……と。


 まぁ、俺達の半分はついさっきまで身ぐるみを剥いだ側の盗賊で、そいつらに護られるんだからある意味マッチポンプだよなぁ……と半笑いになる。盗賊同士顔見知りだから襲わないのか、人数が人数だから襲わないのか、ともかく幸運な事に道中で盗賊に襲われる事だけは無かった。


「あっ、その木の実食べられますよ。赤いのは木から全部毟ってください。あっ、そこ岩菫は小さいですけど繁殖力が強いので数が集まりますよ、沢山食べれば腹は満たせます。あっ、林の奥に水包(スライム)が居ます! 誰か水筒持っていって倒して! 水包体液(スライムゼリー)で傷薬作ります。あっ、月桃の葉っぱも全部毟って! 傷薬を調合する受け皿にします。あっ、そこ気を付けて……その木は漆科だからかぶれるよ!」


 道中の俺は持てる知識を総動員して食料の補給と怪我人の手当ての為の薬作りを行った。衣服や包帯の代わりに泣く泣く小説を書いた獣皮紙を使った。獣皮紙に穴を開けて蔦草で縛り、裸の人の身体に簑虫のように巻き付けた。


 可哀想に、裸にひん剥かれながらも奴隷商人に見向きもされなかった婦女子の方も居たので、少ししっかりした服も作る。裁縫スキル舐めんな。師匠直伝の縫い物を行い型紙を使ったかと言われるくらい完璧な衣服を作った。ふふん。有り難く思え! 馬子にも衣装だ。


 怪我人の回復に回復魔法も限界まで使った。パットミちゃんにお願いして、水包(スライム)の核に余っているMPを込めて貰い、俺がそれを使って光癒(ヒールライト)を使って癒した。


 そうこうする事丸1日、動けない程の怪我をしている人も裸の人も何とか移動出来るようになり、総勢30人近くの集団は当初の倍の日数6日かけて魔法都市グルグル迄辿り着いた。


 森の恵みと大量の獣皮紙のお陰で追い剥ぎ被害者達は裸で都市に入る事もなく済んだ。それは、俺の先見の明が火を吹いたと言わざるを得ない。


「ありがとうごぜーます! コーディ山田様は天使です!」

「amen!ハレルヤ!」

「ケツの穴しか差し出せないのが悔しいッ!」

「必ず恩返しします!」

「オウッオウッオウッ!」

「神様天使様コーディ様ッ!」


 何か変なのが混ざっているが、あまりに可哀想なので銀貨を2枚づつ配給した。もし今後生き延びられて、余裕があるならばロンドヴルームの西の森の砦に居るから何でも良いから寄付してくれると助かるぞ。……と言う事で解散とした。


「検討を祈る!」


「「「「「ありがとうございます!」」」」」


「コーディ、親切」

「カーッ! また配給かよ、カーッ!」


「言うなウィルソンチャック十人隊長。他の兵士の2倍の給料を貰っている十人隊長で、護衛の癖に盗賊に顔面斬りつけられて骨折して護衛対象が襲われてるにも関わらずのびてる奴ですら雇う余裕はあるんだ。だから、な! 許してくれよな!」


「ぐ……! 4歳児の癖に……ッ!」

「コーディ鬼畜」


「ハーッハッハッハ! 気分が良いわ!」


 しかしヤベェ、残り金貨が51枚。まだ片道も終わってないのに資金は半分。時間は倍掛かってる。人数も沢山増えたから食費なり、夜営道具も買わないといけないし……!


「金の補給が必要」


 パットミちゃんも呟く。


 そうたんだよな~。


「そうだよな、そろそろ金策が必要だ……ねずみ講、印刷チート、うーん。ダメだ。今すぐ出来るものがない……!」


「おかしら、ちょちょいっと盗みにでも入りやすか?」


「お頭はやめろ! 元2番手の盗賊の人! そして、ちょちょいっと盗みに入るってのもやめろ!」


 盗賊達は俺達の事をよく知らない故にちょっとした過激派だと思っている節がある。


「だが、資金がないと言うのは事実だぞ、コーディ隊長」


 ルルーシュインが割り込んできた。


「ぐぬぬ……! かと言って盗みに入るのは……」


「有りだと思うぞ」


「はぁ?」


「コーディ隊長。世の中には魔物と言う究極的な人類の敵が居る。そして、そいつらは屡々人を拐ったり金銀を溜め込む事がある。そいつらをいただくならば問題ないだろう。それから盗賊の後ろに居る寄生虫共ももう人間じゃないと(魔物だと)言われてるぞ。これなら金も手に入るし、助かる人も多いだろう」


「しかし、戦力がなぁ……」


 そうなのだ、殆んど戦力がない。うちの戦力になるのはルルーシュインと2番手の盗賊と3番手の盗賊位しか居ない。ルルーシュインは長年の投獄生活で痩せ細っているし、2番手の盗賊と3番手の盗賊も顔面に大火傷で、それ以外の怪我もある。一応道すがらアロエの果肉と水包粘液(スライムゼリー)の軟膏を塗ってあるが、皮の捲れて剥き出しの肉に皮が再生するのは1週間や2週間じゃないだろう。


「ともあれ、今はまず戦力の確認と部隊の整理だな」


 俺達は、入隊希望と言う事で解散後も残った、“盗賊に相手にされなかった女性”と、数人の裸で打ち捨てられていた数人を受け入れ、総勢20人で宿屋に泊まった。





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