第66話 ルルーシュイン
目の前には死屍累々といった形でウィルソンチャック十人隊長と盗賊達5人がぶっ倒れている。
「ありがとう。ルルーシュイン、と元囚人達」
「てやんでぃ!」
「伊達に牢獄見てねーぜ」
「フッ……フッ」
「アキョキョキョキョ!」
どうやら、あれから団体行動で行動していたらしく、ルルーシュインの親に挨拶に行ったり、その他の囚人の用事を済ませてからにしようと言う事になり遅れたらしい。
長い間少量の水とネズミやら虫やらしか食べてなかった囚人達は同じ死を待つ者同士の連帯感や外に対する警戒心が強く、団体行動を選んでいたとの事だった。
「そうか、そんな事情があるならもう少し待てば良かった……。……と、皆は俺に雇われる為に来たと思っていいのか?」
俺の発言を受けて他の元囚人の面々がニヤニヤとするのだが、対してルルーシュインの顔は明確に「俺は雇われる為に来たんじゃない」と言っていた。
「勘違いしないで下さい。私は命を救われた恩を命を救って返しただけです」
「……そうか。じゃあこれで貸し借りなしだな」
俺はルルーシュインに一言掛けて立ち上がった。そして、先程まで俺達を襲っていた盗賊達の脈を確かめて回る。
……全員生きてるな。
盗賊達は酷い火傷と謎の打撲跡があるが、命に別状はなさそうだ。
「そいつらをどうするつもりだ? 殺さないのか?」
ルルーシュインは手に盗賊達の頭をカチ割るに丁度良い石をもって淡々と言った。
「ルルーシュイン」
「何だ?」
「あの時に結べなかった手をここで結ぶってのはどうだ?」
「は?」
「今の俺は戦わなければならない敵が多すぎる。だから、ルルーシュインとこの盗賊達が手を取り合って俺の部下として働いてくれると助かる」
「こいつらが改心するとでも?」
「……祈るさ、1回はな」
俺は刑務所でそうしたように盗賊の前に行って1人1人に祈る。最後の1人に祈った後、振り返って声を上げる。
「後は、手を差し出せるかどうかだ、ルルーシュイン」
ルルーシュインの表情が崩れる。顔の中心に皺が寄る。
「俺達を……助けてくれるのか?」
2番手の盗賊が半分焼け爛れた顔をひきつらせて尋ねた。
「俺は許す。だが、ルルーシュインが引き取れないと言うならば刑務所行きにはなるな。そこで生きるか死ぬかはお前次第だよ」
話を受けた盗賊達は目を強く結んで諦めるように地に付した。
一方のルルーシュインは寝起きで浮気を問い詰められた様な顔をしている。
そりゃそうだろう。盗賊とは言え、餓死するまで牢屋に入るのは本人が昨日まで体験してる事だ。団体行動する位仲間意識が強いってのは裏を返せば纏まらなきゃいけないと感じさせる何かが囚人生活には有ると言う事だ。ついでに言えば10年前の盗賊との兼ね合いとかも葛藤に入ってるんだろう。
「ルルーシュイン、手を差し伸べられるか?」
ルルーシュインは震える溜め息を吐いて、その場にある石に腰掛けてしゃがみ込んだ。
「おい、盗賊。お前達10年前は何してた?」
ルルーシュインは目線を合わせずに言い放つ。
「そのくらいの昔はマ・ンの方で農業やってました……」
ルルーシュインは両手で口と鼻を覆い、掌に震える息を吐いた。目には表面張力の限界に挑戦している煌めきがあった。
盗賊と魔物によって滅ぼされた元マ・ンの農民が10年後には盗賊か……。皮肉なものだな。
ルルーシュインは眼を開いた。
「許す。お前達が良ければ私の部下になれ。盗賊なんかしなくても飯を食わせてやる」
荒野に、朝日の光を含んだキラキラとした水滴が垂れて、熱を持った大地に染み込んでいく。
涙の意味を知らない盗賊達は不思議そうにルルーシュインを見る。その顔は心なしか険が取れたように思える。ルルーシュインは俺を見て言った。
「そう言う事だ。私はお前に仕えよう。残りの人生を全て賭ける。コイツら全員の面倒も見よう。私は今日からただのルルーシュインだ」
俺は跪くルルーシュインの肩をトントンと右手で叩く。
「略式だが、ルルーシュインに十人隊長の位を授けよう。そして聖光教会偽天使コーディ山田がお前達の罪を引き受けよう。だが、地獄まで付き合ってもらうぞ?」
唖然とする盗賊達を横目に、社畜隊の実行部隊が誕生した。物陰から拍手を送る元囚人達とのされた盗賊達、彼らを合わせて、非戦闘員を除くと丁度10人、ルルーシュイン十人隊長率いる第2実行部隊が結成された。
そこで、1人話に取り残されている男が起き上がる。
「俺が気絶しているうちに何が……?」
「ウワーッ! 金貨がーッ! ウワーッ! 金貨ガーッ!」
「は?」
ウィルソンチャックだけが話に取り残されているのだった。




