第63話 エルフの司法
お待たせしました。以降49日間は毎日12:00に投稿します。時々2話更新で13:00に更新しますのでその辺も宜しくお願いします。
聖の章も佳境に入ります。
◇ ◇以上前書き
森林国家アイヌ 外縁部シャコターン
魔法都市グルグルへ向かっていた俺達は森林国家アイヌ外縁部シャコターンの街で足止めをさせられていた。
「ですから、この先は危険なんですってば。子連れで行けるような道でもないですし、盗賊が出たら親は死に子は奴隷にされちゃいますよ? ともかく、盗賊団が討伐されるまでは此処は通せません」
何と、森林国家アイヌの国境の門番に森林国家アイヌと魔法都市グルグルを結ぶ道路に盗賊被害が頻発しており、護衛の数が一定数を越えていないと通行出来ないと言われたのだ。
「さてどうするか……」
「農業国家トキオ通ってく?」
北ではなく真西に進むルートを通れと言うのか……しかしそれでは時間もかかるし、そのルートも盗賊が居るとか言って通れなかったら魔法都市グルグルへは行けそうにない。
「だめだ、それだと遠すぎる……。既に遅れているのに倍の日数が掛かってしまう……」
「それ誰のせいなんですかね?」
俺の作家活動が原因だとでも言うのか!
「ウィルソンチャックって嫌み言うよな」
ウィルソンチャックは両掌を上に向けて首を傾ける。
「どーも」
ともかく、このままでは埒があかないので、俺達は一縷の望みを賭けて冒険者の酒場へ向かった。
◇ ◇ ◇ ◇
「護衛? 全員出払ってるよ。今が稼ぎ時だからね」
そりゃそうだ。街を出られない今なら護衛の値段はつり上げ放題だ。今仕事をしない理由もないだろう。
「どうする? コーディ」
「作家ごっこは止めてくだせいよ?」
パットミちゃんとウィルソンチャックが俺の方を向く。
まぁ、選択は俺の仕事だよなぁ……。社畜を通り越して管理職どころか社長になっちまったからな……。ああ、憂鬱。
「どっかに良い護衛がいればなぁ……」
両手を交差して胸の上に置く、そして右斜め上を見る。
…………パットミちゃんもウィルソンチャックも無反応かよクソッ!
「森林国家アイヌの人達は強盗以上の罪を犯すと死刑か無期懲役みたいですね。無期懲役も餓死まっしぐらみたいです。比較的再犯率が低そうな奴は奴隷として買えるみたいなので、声を掛けてみても良さそうです」
ふと右耳に隣に座った客の雑談が入ってくる。それは俺の願いを聞き入れたのか? という内容だった。
俺の頭に豆電球が発光した。
「奴隷部隊とか止めてくださいよ、コーディ隊長」
いやいや、先読みも止めてくださいよ、ウィルソンチャック十人隊長……。
俺の頭の上に閃いたナイスアイディアは左隣に座る大人にポンと砕かれた。
「奴隷部隊怖い」
「多分、反乱して殺されるだけだかんね? 金持ってる4歳児なんて女が裸で貧民街を歩いてるようなもんだかんね?」
「……だが、女が裸で貧民街を歩いていたら逆に警戒して遠巻きに見ているだけって事は無いか? という訳で見学するくらいは良いんじゃないか?」
俺は諦めない姿勢を全面に出して笑顔で語り掛ける。
「…………」
「コーディはこーなったら話聞かない」
「はぁ……見るだけだかんね?」
ちょろい連中だ。
(ちょろりー)
◇ ◇ ◇ ◇
至森林国家アイヌ北部外縁部アバシーリ地区アバシーリ刑務所
酒場の情報を元に、シャコターンから徒歩30分程のアバシーリ地区の刑務所へと向かった。すると、街の真ん中と言うレベルの広場にその入り口はあった。巨大な石を背負う外人の像がシンボルのアバシーリ刑務所は、像に囲まれた地下への階段のみのシンプルな造りとなっていた。
階段を降りると、槍を持った長耳族の兵士が訪問理由を聞いてきたので、素直に奴隷を見繕いにしたと言った。すると、背後から長めの溜め息が2つ程聞こえた。
許せ。旅に犠牲は付き物なのだ。
俺達3人は長耳族の兵士に指差された方向を見た。石造りの壁と天井の廊下は大分奥行きがありそうだった。その指示に従って薄暗い地下通路の中央を歩き始める。足元にはこのラインを出たら危険といった黄色く光る線が引かれていた。
廊下の両側には全面の鉄格子がはめられており、1つの檻に2~3人の囚人が収監されていた。奥へ行くほど元気がなくなっていく様な気もする。
「刑務所の受刑者に長耳族は居ないのな」
「余所者位しか犯罪を犯さないですから」
後ろからカツカツと追ってきた長耳族の看守が答える。
成る程ね。森林国家アイヌの長耳族率95%は伊達じゃないってか。
長耳族の看守はジャラジャラとした鍵を取り出して、笑顔で言い放つ。
「今見た方々は軽犯罪の罪人です。今お売り出来る囚人はこのラインを奥となっています。1人当たり金貨4枚ですが、価値があるかは現物を見て決めて下さいね」
足元の黄色い線は赤く光る線へと変わっていた。
程無くして踞っているガリガリの男が居る牢の前で看守は止まり、倒した掌だけをガリガリの男に向けた。
「この男は……?」
「人身売買ですね、長耳族の子供を誘拐して売り捌いてました」
何と誘拐犯か。
俺は跪いて、手を組んで頭を垂れる。
「あなたの改心を祈ります」
俺の祈りに「こいつは買わないな」と思われたのか、スタスタと看守は奥へ進んでいく。やがて止まって掌だけで囚人がいる事を合図をする。
「この男は……?」
「山賊や盗賊の資金洗浄と武器と薬の密輸ですね」
先程と同じように膝間付いて頭を垂れる。
「あなたの改心を祈ります」
すると、再び看守は奥へ進んでいく。と言っても5歩程のもので隣の牢へ移動するだけだった。再び掌だけで合図をする。
「この男は……?」
「盗みですね。牛を盗んだ所で持ち主に両手を斬り落とされました。使い物になりませんね」
「あなたは既に罰を受けられたのですね。改心を祈ります」
看守を見るに、買わないだろうが一応紹介しないといけないと言った業務的な態度なようだ。看守はトントン拍子で紹介して回る。
「この男は……?」
「第1種殺人ですね。父親殺しです」
父親殺し……?
「……もし宜しければ理由をお聞きしても?」
「本人に殺せと言われたから殺した」
「後悔はありますか?」
「ない。だが、欲を言えば……いや、言うまい」
囚人は頭を垂れて、手で俺達を追い払うように動かした。
「年老いた母が投獄の理由も知らずに一人暮らししています。その点は憐れです」
言いたくない事を看守に言われてバツの悪い囚人は項垂れたまま手を組んだ。
「…………」
「御父上の冥福を祈ります」
……と言う様な感じで、合計8人の囚人を紹介された。護衛どころか逆に襲撃されそうな罪状の連中や、ガリガリに痩せこけて護衛どころじゃない連中だらけだった。……1人は両手ないし。




