第57話 ゴブリン農法未遂
「やって参りました、現代チートのお時間でございます。本日は俺ことコーディ山田と」
「私ことゲロゲロがお送りいたします……」
そう、俺達は買い物までの4日間を活かす為に生産チートを始める事にした。アグレッシブなヤンデレストーカーでありながら意外にも身体の弱いゲロゲロちゃんと、頭脳労働を以て監督する俺はナレーションを入れて砦の範囲をウロウロする予定なのだ。
「生産チートと言えば農業! しかし土地すらないので俺の入る余地なし! 現在敷地を増やすべく皆さん開拓中!」
「皆さん良く働いてますねぇ」
砦は原生林に囲まれた10m程の真四角な平地のほぼ真ん中に建っている。その周囲の木をドンドコ切り倒して敷地の開拓中だ。切り倒した木は、枝葉は乾燥させて薪に、形の良い幹は火で炙ったり魔法で水分を抜いて建材に使うらしい。
建材に使う木は、現代と違い魔法の力を使って乾かすのだが、それでも1ヶ月はかけて乾かさないと変な感じに曲がるとの事。マジもんの工作兵だったウィルソンチャックはその辺の魔法が使えるらしい。
しかし、この辺は冬でも雪の降らない位暖かい地方になるので、生えている木が悉く横に広がるタイプの木なのだ。つまり、建材に使える木材が松や黒檀等の数種類しかない。後は食料や資材を生産する銀杏の木やトックリキワタ等になるので、自活するならばあまり伐る訳にはいかないと言う事だった。
我が社畜隊の皆さんは労働時間の兼ね合いで大半が昼寝をしているし、適当な木の実を食べてダラダラしているが、勤務時間はバリバリと働く。今も2人組の兵士が木の根っ子を掘り返した所だ。感覚としては1日1~2㎡程平地が増えている感じがする。
砦のこれからの展開としては、正面を少し広く取るものの、真四角に広げた敷地を取り囲むようにして石垣を積み、やがて高さが揃ってきたら建物にする。□の形の回廊をイメージしてもらえると分かりやすいかもしれない。上からみると現在の砦と合わせて30㎡程の回の形の建物となる予定だ。
「やる事が殆んどねぇー」
「私達に出来るのはチロリちゃんとかパットミちゃんみたく石拾い位ですかね?」
「その通りなのが悔しい」
俺達はあまり離れ過ぎると何に襲われるか分からないので、目の届く範囲で掘り返した穴に土を運んで整地の手伝いをしたり、石を拾って集めるくらいしかする事がない。実に悲しい。
「農業チートを行う場所がない」
「先ずは場所作りからですね。パットミちゃんが土属性なので、整地する系の魔法を覚えても良いかもしれませんね」
「……! それだっ!」
パットミちゃんはやけに高いMPをもて余している。そして、土を操作する系の魔法は陣地構築等にも役立つので、その魔法を覚えてもらうってのは良いアイディアだ。
「しかし、何処で習えば良いんだ?」
「大体の魔導具屋さんの近くには魔法屋さんがありますから、買い物のついでに一緒に覚えましょうか」
「おう!」
俺はウロウロと徘徊しながら、皆が働いている様子を見て「足元ヨォシ!」とか「頭上ヨォシ!」とか適当な事を言いながら通り過ぎる。
「ねぇ、コーディ。アンタ他にやる事有るんじゃない?」
「おっ、チロリちゃん。うーん。考える事は沢山有るんだが、考えても仕方無い事が多いし、考えても実行する手が無いからなぁ。気持ちを落ち着ける為に散歩してる位だったよ。手伝おうか?」
「良いわよ、それよりアンタの“羊皮紙”に何か役に立つ情報はないの?」
「ああ、そっか。成る程ね。俺の“設定集”の情報は価値があるんだったな……ちょっと待ってて。色々思い付いたから、ちょっと作業してくる。後で4人で話し合いをしよう」
「じゃあ私も石拾い手伝うね」
「はーい」
「よろしく」
3人の騎士が仲良く石拾いしているのを横目にウィルソンチャック十人隊長に目当ての物があるか訪ねる。有るようなので、モノを準備する。
久し振りだな……。
俺はウィルソンチャックから受け取った獣皮紙と羽根ペンで或るモノを書いた。
……ほうほう。
……ふむふむ。
……出来た。
出来上がったのがこれです。
この辺一帯の地図。
今後の作戦会議で必要になるだろうから、勢力図として有用な情報のみを書き記してみた。
だが、この地図は流出したらヤバいレベルの機密でもあるので、基本的には俺が持っている事にしよう。
チラリと砦の外を見たら、砂掛けババアごっこをして遊ぶ三人の騎士が見えた。
さぁ、3日後には都市国家に出発だ。折角だから楽しもう。何処に行こうか楽しみだ。
「おーい、みんな。作戦会議しよーぜー!」
「「「はーい!」」」
そう言えば結局俺達はまだ現代チート出来ていない。と言うか現代チート出来るもの何かあるかな?
思案は尽きない。




