第56話 次の行き先は……北に決めた!
「え……コーディ隊長達は戦闘能力が全く無んですかい? 攻撃魔法とか……」
「無い。魔素避音波使って逃げるくらいしかない」
「有る訳ないでしょ!? 聖職者なんだし回復魔法と防御魔法とかしかないわよ!」
「私もチロリちゃんと似たような魔法しか使えない……」
「そもそも魔法が使えないー」
そう、俺達は自衛手段が皆無なのだ。
「参りましたねぇ。整備されてるロンドヴルーム側の森ならともかく、この辺の森は普通に大土鬼とか犬鬼とか出るんすよね。それどころか野生の狼とかも出てくるし、危険なんですよねぇ」
やっぱり狼は居たか。
「砦内に居る間は大丈夫でしょうが、住むとなると守りきれない所が出てくるかも知れねーっすよ?」
「だよなぁ……。この辺どうにかならんかなぁ……」
「早めに新しい魔法を覚えるか、武術のひとつやふたつは身に付けて下さいね。じゃあこれで失礼しますよ」
ウィルソンチャックは砦を出ていってしまった。
「さて、3人の騎士さんよ。あまり無いとは思うけど、戦力を聞いてみましょうか」
「私? 私は戦闘はまるでダメよ。魔法なら最大MPは32粒かな。だけど1日50粒位は回復するかも。色は青だから水の魔法を使う時にちょっぴりお徳になるわね。小魔法しか使えないけど水癒、水膜、精神感応会話なら使えるわよ」
「戦闘は無理です。最大MPは55粒です。計った事はないのですが、多分1日で回復するMPは少し多そう。色は白で光属性です。使える魔法は小魔法の光癒、水癒、水膜、隣光ですね」
「この中では多分一番強いけど、土鬼と似たようなものだと思う。戦闘となると無理かも。最大MPは42粒、多分1日で回復する量も42だと思う。色は茶色。土属性やね。魔法は覚えてない」
「俺は最大MP14で、回復する量も多分14。色は薄い白で無属性……。使える魔法は光癒と魔素避音波……あと大魔法の接続型乱数転移かな。ってみんな凄くね? MP42とか大人並みに魔法が使えるの!?」
「いや、大魔法使えるってだけでコーディの方がおかしいよー。どこで習ったの?」
「あー、これはハイパワー・ナグルス先生がいざと言う時に天使憑きの園児達を連れて逃げて欲しいって……」
「そうなの!? まぁハイパワー・ナグルス先生は伝統派だしね。私達を大分大切にしてくれてたし……」
「そうだな。あの時はなんか急いでたから出来なかったが、挨拶くらいしてくれば良かったな」
「まぁ、行けば会えるでしょ。落ち着いたら行きましょう」
「そうだな」
……俺達は、時々話を脱線させつつ、戦力を増やす為の長期的な計画を練った。その結果、まず、自衛手段は捨てる事にした。
それはそもそも俺達が戦闘用の魔法を新たに習得しても、来るべき戦いの日の戦力としては半端になると踏んだのだ。いつ戦争になるのかはわからないが、戦争になった際に俺達が前線に出て戦う可能性は極端に低い。
まず、俺達が現時点で4歳児で、戦争までどれだけの時間があるか分からないが、先のクロスアーミー先生とウィルソンチャック十人隊長の作り話を信憑性のある話とするならば3年、或いはそれより早いかも知れない。だとしたら俺達は7歳児となっている筈だが、流石に戦場に出る年齢じゃないだろう。
なので、魔法は今の通り回復や防御に特化して後方支援をした方が良いと言う事になった。
で、肝心の自衛手段は“魔導具”を入手しよう。と言う事になった。
――魔導具。それは異世界の浪漫。魔術回路の刻み込まれた道具で、魔法同様の効果や、それだけでは説明の付かない程に複雑な効果を齎すものも存在する。魔導石の様にMPを消費しない道具もあれば、電池の様にMPを補充しながら長く使えるもの、常時MPを消費するものもある。
いつか解説した“兵士の指輪”や“対死の指輪”や、先に出た魔導石等がその魔導具に当たる。上等な物は金銀宝石貴金属をふんだんに使うので、値段はべらぼうに高い。
さて、俺達の身を守る魔導具は、どれくらいの値段になるかな。
「そもそも清貧が旨のロンドヴルームにはまともな魔導具は売ってない。武器も少し時代遅れの物だし、買うなら北部都市国家郡に行った方がいい」
「北部都市国家郡かぁ……、それこそ戦争続きの泥沼なんだよなぁ……」
北部都市国家郡とは、ロンドヴルームの北西側にある海辺から大陸の反対側にある山脈にかけての広い平野に9つ程乱立する城壁都市郡で、その1つ1つがロンドヴルーム並の規模の都市を形成している。
そして、その全てが聖別教会の祝福を受けている為に、聖別教会の総本山には攻めてくる事はない……とされている。因みに8人の神殿騎士と10人の大神官は基本的にこの都市国家郡から1人づつ選ばれ、残った9枠を教会側の采配で他の地方都市からの代表や教会の幹部の中から選ぶ。
故に、都市国家郡の中にも帝国に対しての「伝統派」「急進派」「属国派」が出来つつあり、元々仲が悪いところに拍車をかけている。それどころか「脱教会」を宣言して富国強兵の道を進もうとする国家もあるとかないとか。
この辺は『設定集』なので、「脱教会」の話は多分この辺の人が知らない情報かも知れない。
因みにロンドヴルームの街を歩いている貴族はここの貴族様々が殆んどだ。だってロンドヴルームは宗教国家だから領主が居ないから。それにロンドヴルーム程清潔な都って、実は周辺には全く無かったりする。その辺も貴族が集まる理由だったりするのだ。
ともあれ、ウィルソンチャックを1人護衛にして、その都市国家郡に行く事を決めた。
出発は4日後の朝。
しょうもない話だが、労働時間の兼ね合いで出発が遅れると言う悲しいスケジュールだった。




