第54話 Re:お前もかブルータス
聞くところによると、チロリちゃんもゲロゲロちゃんもパットミちゃんも俺が大教会に行ったあの日、バラバラに大教会の神殿を訪れたらしい。
その時に各々アドバイスを受けて今回の退園となったらしい。その際に皆が言われた事……それは「クロスアーミー先生とYOROZU修理店の店員に気を付けなさい」……だったらしい。
「だから退園迄するって言ったのね。まぁ……気を付けなさいってんならそうだよな。幼育園に居たら絶対に影響受けちゃうもんな」
「所でコーディ、グローリアはどうなってるの!?」
チロリちゃんは手元の“錆斬”をくるくると回してギリと握り締めた。目付きが怖い。
「ああ、グローリアは~」
「いるよー! どうしたのー?」
っと、出てきたか。
「グ……グローリアちゃん久しぶり! お話出来て良かったよー! 大丈夫だった? 閉じ込められてない?」
「どこにとじこめられるのー?」
「あー、何もなかったら良いんだ、何もなかったら……」
「“コーディ、後で私達4人で話があるから、グローリアが寝たら右手で丸を作って合図なさい。返事は不要……”」
……。
久々に精神感応会話が来た。
何やら俺の知らない所で何かの話が進んでいるようだな……。適当に話を合わせつついつもの様子で適当にふざける。
4歳児の足では単粒強化しても20kmの山道はキツい。俺も他の3人もMPは年相応の倍はあるので、80%程使っていいのであれば筋力に5~8%位の補正が1時間ほど掛かる。使い果たすと逆に怠くなるので80%程使ったら回復する迄はもう使えないがな。
「朝御飯位は食べたかったなー」
パットミちゃんが溢す。
「あっ、この野草食べられますよ。苦いけど」
「食べられるけど食べたくない。草じゃん」
「草だけどね」
俺は山羊の如く、その辺に生えている蓬を食う。ウーン、テイスティ。
背後からパットミちゃんのえずく音が聞こえた。
◇ ◇ ◇ ◇
そして、アロエの果肉やタンポポの葉っぱ等をかじって根性入れて歩く事6時間半。何とかリヤカーを押しつつ西の森の奥地に辿り着いた。
「やっぱり此所に引っ越すの辞めようかな……」
「疲れ……た……」
やっとの事辿り着いた砦ではあったが、どうも様子がおかしい。……具体的に言うと無人だった。
石造りの砦の中に入ると、前回来た時の木箱の配置のままになっており、金貨の袋だけが全て持ち逃げされていた。何で持ち逃げされたと断定したかって?丁寧に置き手紙までされていたのだよ。
「素敵な装備と大量の金貨をありがとう!」
……。
隊長以外は文盲で隊長も多少怪しいと言っていたが、こんな置き手紙は律儀に残すのね。はぁ。
ともかく、俺達は今日から此処で生活をしなければならない。
荷物を下ろして、木張りの床に転がり込んで休んだ。
「今日からここでサバイバル生活か……」
ふと呟きが出た。
「サバイバルは嫌。葉っぱ不味い」
パットミちゃんが苦々しくポツリ。うん、でも大人が居なかったら完全にサバイバル生活だからね?
ふと、入り口の影が揺れる。
……。ガサガサ。
何者かが砦の中に入ってきた。おいおいおい、お前は~
「ウィルソンチャック!」
「おっ、コーディ隊長。こっちに来てたんですかい?」
続々とウィルソンチャック以下10人の隊員も入って来る。
逃げたんじゃなかったの?
「丁度良かった。俺達、付いていく人を代えたいと思いますぜ」
それを言いにわざわざ戻ってきたのか!
「それを言いにわざわざ戻ってきたのか……? こんな置き手紙を書いておきながら?」
俺は置き手紙を手放して、床に落とす。台詞も少し怒気を込めてみた。どう意気がっても戦闘では敵わないので、鼻で笑われるだろうけど。
「隊長、だから言ったじゃないですか! これ勘違いする可能性があるって!」
ん? 勘違い?
「あー、すまん。えーッと、何処から話せば良いかな……」
……ウィルソンチャック十人隊長はポツポツと説明を始めた。
……。
……!
……。
…………。
◇ ◇ ◇ ◇
……結論から言うとウィルソンチャックはクロスアーミー先生に雇われた私兵だった。ウィルソンチャックが帝国兵だぜぇーという話も嘘、クロスアーミー先生の自作自演で「議会」を騙そうとしていたらしい。しかし、たまたま「議会」の風向きの問題でウィルソンチャック達が不要となり、急遽計画を変更したらしい。
こないだクロスアーミー先生が言ってた「既に帝国の砦が出来ている事を会議に報告したら属国派がさっさと降伏して属国になろうとする」とか言う話の事だろう。
それで、鉄巨人にやられたふりをして俺達の仲間になり、横から俺達を監視しろとクロスアーミー先生に言われたらしい。
そもそも師匠が鉄巨人の胴体を置いていったのもわざとなんだと。元々あの窪地はそう言う風に採掘する造りになっているらしい。
「何て先生だ! クロスアーミー・グロースター! ……ん? それだと……もしかして……」
「そうだな。YOROZU修理店の連中もクロスアーミー・グロースターとグルだよ。まぁ今の俺達はフリーではあるんだがな。役目御免だとよ。ははは」
「それで金貨を持ち逃げしたのか?」
「ほらー、隊長、勘違いされてますー!」
「むぅ」
どうやら、ただ単純に装備と給料の金貨を貰えた事が嬉しくて手紙を書いただけらしい。紛らわしい。そして、給料は貰ってる訳だから1年は俺達4人に従うと言う事だった。ありがたい。金貨が消えていたのは、万が一にも盗まれると困るから持ち歩いていただけだった。セーフ。
「ってか自分で作らせた砦に自分で偵察に行ってたのか、あの髭野郎は!」
改めて思うに、なんと言う策士だ。そりゃあ俺も掌の上で転がされる訳だ。これは早めに退園して大正解だな。
「言ってやるな、皆が皆必死なんだよ。この国は最高の理想を体現しすぎたんだ。そりゃあ……帝国だって侵略してくるさ」
「……あっ! じゃあ3年を目処に此処が侵略されるってのは……3年の猶予があるってのは……!」
「ああ、嘘だよ」
「そこからかよ!」
「そこからだな。まぁ俺達は契約通り1年間1日8時間キッチリ週休2日で働かせてもらう。それが過ぎたら他人だ。再契約もしてやらねぇ。それで良ければこれからも頼むぜ」
俺達は握手をして同居人を歓迎した。
以下後書き
◇◇胸糞展開でなく謎展開と意見をいただいたので、48話と50話でコーディ山田がパットミ=ポリエステルちゃんを襲うシーンと、クロスアーミー先生と結託してグローリアを可愛がるシーンに赤い紐のエフェクトを増やして、赤い紐に操られている感じの描写を追記しました。
恐怖感を演出するあまり分かりづらくなってしまった様です。すいませぬぬ。
無理に戻って読まなくても今の情報があれば大丈夫です。今後とも宜しくお願いします。




