第46話 ミーティング
さて、俺達は砦の中に入って会議と洒落込むか。
この砦は以外と広くて快適だった。外壁は四角い石を隙間なく敷き詰められており、その内側は四角く削った太い角材が壁の三面に敷き詰められていた。入り口側もそれなりの量の角材で補強してあるので、外の石垣に強い力が加えられてもちょっとやそっとじゃあ崩れない様に出来ていた。石と角材を合わせると幅80cmはある筈だが……それでも鉄巨人の攻撃だと……?うん、考えないようにしよう。中は10畳程の広さがあり、12個の木箱が置かれていた。
俺とパットミ=ポリエステルちゃんとウィルソンチャック、ケンデリカット・ユタ、デブスペクトル・ユタの5人は今回の件の最終的な調整を行うべく、誰のかわからん木箱に腰かけた。
「さて、ケンデリカット・ユタさん、デブスペクトル・ユタさん、あなた達には帝国の占領下にある今は名もなき国へ出発して貰います。薬の仕入れと旅支度はご自分で行って下さい。資金は昨日お渡しした金貨10枚でお願いします。報酬は先程の資金とは別に2人1年計画で金貨5枚ですから、兵士さんよりも少し高めです。計画が成功したり、有力な情報を仕入れてきたら出来高で追加報酬をお渡しします。宜しくお願いしますよ?」
「うう……怖いけどやります」
「金の魔力で踊ります」
ふむ。中々面白い奴だ。商人にならなければ良い芸人にでもなっていただろう。
「うむ。では出発は10日後だ。それまでは偽装でその辺に転がっている鉄塊を売って来るが良い。一応鉄の売却益や薬の売り上げは申告して納めるように、その辺は普通の商会と同じなので宜しく。どこぞの国みたくポッケナイナイは厳禁で」
「ぐっ……四歳児の癖に」
「おちんちんびろーん」
本当に面白い奴だ。ふーむ、そしてよく伸びる奴だな。
「そして、薬屋の婆ちゃんは話がついてるか?」
「一応薬屋は趣味でやってるので商品を仕入れるなら材料費程度で構わないし、それをどこで販売しようと自由と言われました。その辺は“こんな取引があって良いのか”って思うほど順調です。仮に会長に雇われた身でなくても薬の行商人はやっていきたいッスね」
「はっはっは、そう簡単に逃がさないぞ?ユタ兄弟」
「やばいよやばいよ」
「うんこ半分こ」
なんというギャグ。末恐ろしい連中だ……!
「次は俺達か」
「はい。魔物の作り方は教えたとおりです。月夜の晩に露天鉱床に魔物の死体をばら蒔いて下さい。生まれたての鉄巨人や鉄人形ならばさほど苦労なく倒せるかと思います。一応先程の鋼鉄の轢断棍棒やハンマーは用意しましたので」
「ああ、やってみる」
「緊急時のために爆裂の魔導石も10個程用意しましたが、使えば赤字なので使用は極力控えて下さい。生産が終わったら聖水で場を清めないと下手すると寝てる間に魔物が発生したりするかも知れません。焚き火と同じです。不始末は厳禁です」
「ああ、魔導石は助かる。焚き火も始末するようにするよ」
「焚き火だけ? 魔物の始末も頼みますよ」
「あいわかった」
「では、10日間は毎日昼の鐘が鳴る頃に西の森の入り口で待ち合わせして、鉄の取引を行う事。以上何かあるか?」
「はい」
「おろ? 何かあるか? パットミ=ポリエステルちゃん」
「これ、隊員の皆さんとユタ兄弟に、一応西の森は魔物が出て危ないから」
パットミ=ポリエステルちゃんは部屋の隅っこの木箱から幾つかの物を引っ張り出してきた。あの木箱、隊員の荷物にしては1つ多いと思っていたらパットミ=ポリエステルちゃんのか。
「革のベルトに沢山のポシェットを付けました。10人の隊員全員分とユタ兄弟、私とコーディの分もあります」
「俺達の物もあるのか」
「やばいよやばいよ」
「ほう、気が利くなお嬢ちゃん」
「どういたしまして。あとロンドヴルームの街にある高価な魔導石は買い占めたので、今はろくな物が残ってませんので良い物では有りませんが、30個程見繕って来ました。ポシェットに入るようになってます。半分は隣光や浮遊蝋燭等の灯り系、半分位は光癒と水癒にしてあります。お好きなものを2つづつどうぞ」
うーん。はじめはチロリ=ツンパカブリエルちゃんの女優でビビっていたけど、パットミ=ポリエステルは中身が完全に仕事が出来る系の人なんだよな……。4歳児としてはパットミ=ポリエステルちゃんの方がヤバい気がするな。
と言うか、最近の園児達は急加速して大人になりつつある感じがする。軍事関連の仕事をグローリアに見せたくなくて、半ば無理矢理心の部屋に鍵掛けて軟禁しているってのも理由としてはあるんだろうが……。
時々、控えめなノックで俺の胸を叩くグローリアに負い目はある。だが、俺は進まなきゃいけないんだ……。大丈夫。俺はやれる。
「コーディは浮遊蝋燭2つと対魔障壁でいい?」
「あ、……ああ」
「……コーディ。何かあったら私が支える。命は、1人では持てない」
……大人だな。と言うか遠回しのプロポーズみたいだな。
「……ありがとう」
俺達も会議の終了と共に幼育園へと帰った。
グローリアを閉じ込めて繋いだパットミ=ポリエステルちゃんの手からは、大人の、……不倫の匂いがした。




