第39話 社畜隊第1実行部隊結成
結論から言うと帝国からの尖兵は簡単に寝返った。スキンヘッド隊長の名前はウィルソンチャック。ずいぶん長い名前だが、今日からは社畜隊の第1実行部隊十人隊長ウィルソンチャックとして働いて貰う事にした。
取り敢えず年間金貨24枚でウィルソンチャック十人隊長以下10人の工作隊の雇用契約をした。そして、手付金として貰った金貨をすぐさま契約手付金として渡した。来週の土曜日までに残りを渡す予定だ。取り敢えず来週までに金貨23枚用意しないといかんのでこの辺は頑張らねばならないな。
労働条件は週休2日の日勤8時間。それ以外の時間は完全にフリータイム。いやー、ホワイト。作業内容は壊された砦の再建設。そこに俺達の新しい軍事拠点を作る予定だ。幸いにも鉄のシャベルにハンマーやノミは2つづつ位あるらしい。後は木の実でも食べつつ適当にやってくれるらしい。
重傷だった何人かは連れていく? と言ってみたが、「こちらで何とかする」と固辞された。うん、訓練された良い社畜だ。帝国軍は余程躾が上手いとみた。
そして、彼等は元々大工上がりの従軍だったらしく、戦闘はからきしダメらしい。徴兵されたのはいいがあまりにも弱いと言う事と、異民族出身と言うで無茶な任務を食らったのだと言う予想らしい。成る程。
確かに産まれたての鉄巨人とは言え、4歳児と大人1人が投石と中魔法1発程度で仕留めた様な魔物を軍人10人がかりで倒せないとかは問題だと思う。聞いたら隊長以外の全員が魔法が使えないらしく、仕事に使う程度しか読み書き出来ないと言っていた。あの鉄巨人は隊員がハンマーでぶっ叩きながら隊長の持つ爆裂の魔導石で止めを刺したらしい。
――――魔導石。それはMP保存性の高い石に魔術回路とMPを詰め込んだ1度使うと壊れる簡易魔導具。1度詰め込んだMPは1年程持つらしい。
ちなみに爆裂の魔導石は値段にして銀貨1枚程するらしいとの事。爆裂はMPを200は消費するし、石もただの石じゃないし、魔術回路の刻み込みも必要だからその値段は仕方ない所がある。それが3発。もう完全に最終最後の切り札だったとの事。
可哀想に。
そして、どうしてこんなところに鉄巨人が……と最後の最後まで首をかしげていたので、4歳児的感覚に引っ張られてついつい「我々が先週鉄鉱石欲しさに魔物を人工的に作って討ち漏らした」と白状してしまった。案の定めっちゃ怒られた。
鉄巨人は、工兵出身の防具も着けてないウィルソンチャック等ではなく、戦闘向けの十人隊長が完全武装で戦闘に当たるレベルらしく、明らかにこの辺の土鬼やら水包やらのレベルを超越している魔物だと教わった。
ネチネチと言われた戦闘描写から推察するに、金属製のヘビー級ボクサーを集団で取り囲んでハンマーやらシャベルでボコボコにしつつ魔導石で削ったと言うのが全滅相討ちの真相のようだ。それならばまぁ健闘したなぁ……と納得出来る。
と言うか師匠はなんてモンを作ってくれたんだ。私達が初めに倒した時はまだ身体の柔らかい赤ちゃんの時にボコせたから良かったものの……。これが完全体になってたらどーするつもりだったんだ……?
と言うか師匠の様子を見るに何度か魔物を人工的に作ってる経験とか有りそうなんだが……鉄巨人の恐ろしさを分かっていてやってたのか……? そして分かっていながらその胴体を放置したのか?
謎は深まるばかりだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「ねぇねぇ、コーディ! 資金の目処って……もしかして火曜日に書いた……アレ?」
「そう、あれだけ撃てば最低1つくらい当たるでしょうよ」
「まぁ……確かにそうだけど……途中盗まれたりしないって保証はないんだよ?」
俺達は予算の話をしながら西の門を潜って街へ帰って来た。空はうっすらと黄色く変色しており、太陽は傾きを夕方に変えつつあった。
YOROZU修理店のドアを開けると、酸っぱい臭いが風に乗って舞い上がった。倒れている師匠に話し掛けるも、手が僅かに動くだけで返事をする元気もないようだ。これでは話も出来まいと、挨拶だけして俺とチロリ=ツンパカブリエルちゃんは聖別幼育園へと帰った。
……どれだけ飲んだらあーなるんだよ。確か前世高校生の頃に泡盛をストレートで8時間程飲まされ続けて、朝方に緑色の胆汁みたいなヤバい色の汁を吐いた事もあったが、夕方には立ち上がれる程には回復していた筈だが……。
聞きたい事は沢山ある。だがしかし、ついつい聞く機会を逃しちゃうんだよな……。
帰りは俺とグローリアとチロリ=ツンパカブリエルちゃんと3人で楽しく帰った。グローリアとの会話を邪魔したら気にするかと思ったが特に怒らないようだ。例の密約は解約されたと思って良いのかな。良いとしよう。
ただ、俺達は手を繋いでいた。手汗の無い爽やかなデートだった。




