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“偽天使転生”~社畜編集者の異世界成り上がり録~  作者: 林集一
聖の章 前編 聖別幼育園へようこそ!
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第30話 “偽天使転生”

「おやすみなさいー! チロリ=ツンパカブリエルちゃん」

「おやすみ~! グローリアちゃん///」


 俺は夕方起き出してからウロウロしていた。

 時にチロリ=ツンパカプリエルちゃんと会った。そして、特に他愛ない会話を交わして自室のドアの外で別れる。

 廊下の影に、目と口を三角にしたゲロゲロ=ソフィエルちゃんの半身が見える。


 ……。


 見えなかった事にしよう。


 そして、部屋の中央のベッドに横になる。


 ……今日も楽しい1日が終わったか。


 ……いや、まだ夜中の来客がある可能性はあるか、はぁ。


 俺は寝返りを打つ。


 グローリアは意識の脇で船を漕いでいる。


 ……。


 …………。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 俺がこの世界に来て、初めに「設定集の中に居る」と感じたのは3歳になった頃だった。グローリアと俺の認識力がこの世界の言葉を言語として聞き取れるようになった辺りからだな。


 両親は俺……いや、グローリアの事を愛してくれていた故に大分過保護に育ててくれていた。

 家の中に居ても聞こえる声のでかい村人の話を盗み聞くに、村の中でも食事は大分良い方だったし、両親も畑仕事があるだろうが、長時間留守にする事もなかったし、俺はモンスターや魔法と言う単語すら聞く事無く育った。


 今思い返すと恐らく意図的に危険と離していたのだと思う。包丁とか興味持つと危ないからね、あれと一緒。親は偉大だね。


 そして、4歳の誕生日にケツワレール先生が迎えに来てから俺の世界は色彩を変えた。

 これまでの緑一色の田舎村生活から、煉瓦や石積み等の木の色以外の壁の家、独特の街の臭気、様々な仕事、ハイカラな都会生活。元々鋭敏な感覚の年齢だが、全てが新鮮で得るものの全てが刺激的だった。


 ――――聖別幼育園。ここはグローリアだけでなく俺にとっても、とても居心地の良い場所だ。

 チロリ=ツンパカブリエルちゃん、ゲロゲロ=ソフィエルちゃんをはじめとする可愛い同輩天使憑き達。

 それから、全てが良い人とは言い切れないがクロスアーミー先生やハイパワー・ナグルス先生。それからケツワレール先生だって居る。


 ここの皆は俺を必要としてくれているんだ。必要とされると言う事がこれ程迄に嬉しいと思ったのは初めてかもしれない。

 まぁ比べているのは前世の事だし、忘れているだけかもしれないけどね。


 ……と、その流れを受けて俺の認識は変わった。


 あの『設定集』はあのクソ小説家が書いたものじゃなくて、この世界の誰かが何らかの手段でこの世界の情報を書かせた(・・・・)物なのだと。設定集の世界に迷い込んだのではなくて、この世界のデータが設定集に書かれているだけなのだと。


 それだけ、この世界は現実そのものだった。




 ここから俺の思考は“グローリアの迷惑にならない様に隅っこで遠慮しとこう”から、“この世界でグローリアと共に生きていこう”と言う方向に進む事になった。

 だが、世界は俺の意思を尊重するほど優しくはない。


 帝国の侵略が迫っている事。


 その事で聖別幼育園の母体である聖光教会に「伝統派」「急進派」「属国派」の派閥が生まれ、その派閥争いに俺も巻き込まれている事。


 本気で困っているのはこの2つ。


 グローリアがクロスアーミー・グロースター先生に恋心を抱いているとか、グローリアがチロリ=ツンパカブリエルちゃんとゲロゲロ=ソフィエルちゃんに狙われてるとかは些事に過ぎない。


 ……いや、クロスアーミー先生にケツを掘られるとかは流石に些事では済まされない問題だけどね?


 ともあれ真面目な話、俺に出来る事は限られている。出来ない事は出来ない。

属国派はともかく、伝統派と急進派のどちらの味方をするべきかと言う問いにも、未だに答えは出ていないし、出しても何が出来るかわからない。


 だが、いつか答えは出ると思う。


 ……。


 ……ともかく、俺は今の気持ちを整理する為にも、ウロウロしていた時に大量にパクってきた獣皮紙に日記を書いて残す事に決めた。


 タイトルは『偽天使転生(ギテンシテンセイ)


 俺の中にある『設定集』の知識、“羊皮紙(コーデックス)”と読んでいる物は過去のデータはあっても、その未来の事や、今この瞬間に広がる世界の事は何も書いていない。


 だから俺は、俺のためにこの日記を書く。この本はここから始まる俺の物語だ。


 ふっ……。なんて少し格好つけすぎたかな?


 俺は自身の厨二っぷりに笑う。


「ふふん、こんなのはどうかな?」


 顔を上げると当たり前の事だが誰も聞いていない。


 冷たい石の壁が四方を守っている。採光窓のある天井からは星の光が注いでいる。


 俺は目を瞑って、瞼の裏に居るグローリアへと近付いていく。


 そして、頭の片隅で布団を被って丸まって寝ているグローリアの頭を撫でる。器用にも脳の中でも鼻提灯を出して眠っている。


 ……俺はグローリアの何なんだろうな。


 兄貴? 父親? 双子とか?


 これ迄の思い出が鮮明に蘇ってくる。


「まぁいい。俺とグローリアの関係性がどうであれ、絶対に護ってみせる。……グローリアを、そして他の天使憑き達も」


 俺はクロスアーミー先生の真似をしてギリギリと右手を握り締めた。そして、本日最後の台詞を呟いて自身の意識を閉じた。


「その為には手段は選ばない」





はいさい。作者の林集一です。


取り敢えず30部分目でこの物語の“聖の章・前編”は一旦区切ります。次話からは“聖の章・中編”です。一応、予定では120~150話目にて、“聖の章”を終えて“蛮の章”へ移る予定です。


この物語を長く楽しみたいな! いや、テンポが大事なのじゃ……!等の意見がありましたら是非とも感想欄にお書きいただけたらと思います。


物語のゴール、それからチェックポイント(メイン伏線の回収場所)は予め幾つか決まっていますが、その途中は割りと余裕を持って適当に書いていますので、感想欄の意見は参考にしています。


これ迄に良くしていただいた方に御礼申し上げます。


ありがとうございました。


そして、


これからも偽天使転生を宜しくお願いします。


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