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“偽天使転生”~社畜編集者の異世界成り上がり録~  作者: 林集一
聖の章 前編 聖別幼育園へようこそ!
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第25話 鍛冶屋

「これが鉄です」


「はい、わかります」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 俺は前日からの身体の疲れを圧して、ベッドから起き上がると、取り敢えず足の指の間に光癒(ヒールライト)を発動させる。おお、暖かくて気持ちがいい。心なしか少し痛みが収まった気がする。


 そして、朝食を食べて、チロリ=ツンパカブリエルちゃんに引っ張られて西の職人街へと向かい、YOROZU修理店の中に入る。


 中では師匠が炉に火を入れて待っていてくれていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「では好きなだけ熱して好きなだけ叩いて下さい」


 うん、また適当だなおい。


「何かコツとかは?」


「先ずは鉄に慣れるのです。熱して、叩いて、冷して。そして木炭の量も自分で調節してみて下さい」


「はぁ」


 俺はノーヒントのまま鍛冶作業を開始し、適当な感じで鉄を熱して叩きまくった。


 トンテンカン!


 2つの塊を1つにしたり、延ばしたり、畳んでくっつけたりと、ともかく楽しく鉄を弄くって遊んだ。気持ちは粘土遊びである。


「鉄は眼と皮膚感覚で温度を覚えて下さい。鉄の不純物は熱して叩くと飛びます。そして、鉄に数%の炭が混ざると鋼になります。この加減は身で覚えねばなりません。それから、鉄は生きていて、呼吸もするし向きもあります。そして、感情もあります。決して流れに逆らわず、心穏やかにして関わって下さい。あっ、その色が打ち所です」


 うーん。何だかよく分からない説明だが、身体は師匠の言う流れに乗っている気がする。


「そうです、そう……。ではこの鉄塊を使ってあなたの武器を作りましょう。初めは私も手伝います。刃物はいけませんよ?聖職者ですから……」


 師匠が手伝ってくれるなら間違いはないだろう。


 ……この時、俺はそう思っていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 トンテンカン! トンテンカン!


 出来上がったのは太い“十手”の様なモノだった。先端は打撃能力を高める為に丸く膨らんでおり、くびれている所にはパチンコ玉の様なイボイボがくっついている。そしてその身は何故か僅かに反っている。持ち手の所にアームガードを逆向きにしたようなフリップが付いていた。師匠曰く打撃系ソードブレイカーらしい。


 しかし……。


 いや、


 いや、しかし……。


 コレ、


 これ電○こけ○じゃん!


「でんろうこけしゃん!」


「師匠、これは流石に駄目でしょう?」


「果たしてそうでしょうか?」


 何が、果たしてそうでしょうか?……だよ。ここはそうまでして食い下がるところか?


 結局、これを持ち歩くのも保管するのも御免被ると言う俺の強い意見で、形の変形が決まった。トンテンカンと打ち延ばすと、持ち手から上を長く伸ばした刃の無い刀の様なモノになった。


 ……鉄の木刀とでも言おうか、尖端が膨れているために重心が武器の先端にあるのだ。見た目は刀だが使い方はメイスの様になるだろう。


「ふむ、面白い作りです。見た目は片刃の剣なのですが重心はメイスのモノですね。これで叩かれたら人は死にますね」


 そりゃ鉄の塊で叩かれたら誰だって死ぬよ。


「では、これを俺の武器に……するのはもう暫く後になりそうですね」


「ちょっと重たいかもしれませんね」


 そう、重たいのだ。


「ですが、私も武器屋の端くれ、代用品は用意しておりますよ」


 恐らく元々これが本命といった笑顔で代用品を俺に手渡す。


 師匠が懐から取り出したのは木製の“○動こ○し”、さっきの鉄製の物と寸分の狂いもない程精巧に彫られていた。しかも、根元にはグローリアの名前入りと来たもんだ。


 ……もしかして師匠って技術はあるけどセンスが壊滅的で鍛冶屋になれなかったとかそんな経緯が有るんじゃないか? いや、セクハラの可能性もあるな。器用貧乏の裏に闇を抱え過ぎだろ……。


 思案は尽きない。


「しゅごーい! これグローリアのー!」


 !!!


「でしょう? グローリアさんもやっと私のセンスが分かるようになりましたね」


 しまったぁぁぁああああ! グローリアは4歳児だから名前が書いてあれば条件反射で飛び付くッ! くそっ! 身体操作の集中が緩んでいたかっ!


 ◇ ◇ ◇ ◇


 グローリア、マジでそれ持って歩くの?


(うん! かっこいー!)


 ……。


 結局グローリアの強い要望で持ち歩く事となった。そして俺は師匠の満面な笑みでの「今日はもう帰って良いですよ♥」の台詞を受けて店の前でチロリ=ツンパカブリエルちゃんを待っている。


 天下の往来でこの仕打ちである。まさに児童虐待。


 世の方々は2度見という恐ろしい方法で悲しくも的確に俺の心を抉ってくる。2度目の目線はこれでもかというくらいひんむいているのはもはやギャグである。


「グローリアちゃん待ったー?」


「チロリ=ツンパカブリエルちゃん帰ろー! あとこれ見てー!」


 おいやめろ。


 ……はぁ。まぁいいか。


 俺は突っ込みを一言開き直って思考の片隅でうずくまってアニソンを呟く作業に移る事にした。以外とこの作業は馬鹿に出来ない。魔法領域の拡大に使うからな。でも結構古い歌の3番とかは忘れてるんだよな。


 ……大丈夫かな?


 まぁチロリ=ツンパカブリエルちゃんとの盟約により基本的にチロリ=ツンパカブリエルとグローリアのラブラブ時間を邪魔出来ないのだ。許せ。


 幸いにもチロリ=ツンパカブリエルちゃんは真珠のような物が埋め込まれた様な造形の凶悪な棍棒をグローリアの説明通りにソードブレイカーだと信じているようだ。無知は偉大なり。


 言うて木製のクリフリッパーでは絶対にソードブレイカーにはならないからな?


 無害かと思ったら飛んだ食わせ者だぜ。師匠。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 その晩。グローリアが寝静まった後、枕元に置かれていたソレを預言者の絵の裏側に隠した。


 ……そう言えばそもそもの預言者の像は何処に行ったんだろう?


 明日月曜日は休みだから探してみるかな。


 俺はそう思いながら眠りについた。

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