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“偽天使転生”~社畜編集者の異世界成り上がり録~  作者: 林集一
聖の章 前編 聖別幼育園へようこそ!
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第24話 恋のゆりかご

「ねぇ、もっと魚食べない?グローリアちゃん」

「ほらほらグローリアちゃん、野菜食べなきゃ野菜……」


 “おい! コーディ! タイミングずれてんぞクソが!”


「もがもが、うぐぇー」


 どうしてこうなった。


 俺は今、グローリアと一口毎に身体の制御を入れ替えて、ゲロゲロ=ソフィエルちゃんとチロリ=ツンパカブリエルちゃんの差し出すフォークにつつかれている食べ物を交互に食べるお仕事をしている。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ……事の発端はYOROZU修理店と八百屋からの帰りに、チロリ=ツンパカブリエルちゃんとグローリアが手を繋いで帰っている所をゲロゲロ=ソフィエルちゃんに見付かった事による。


 先ず、刺さる様な目線を感じた。いや、実際に目線が刺さっていたかもしれない。狩人の五感を使って魔素を探知すると言う技術の練習中ではあったのが幸いしたのか、魔素がこもって居る訳ではないのだが、視線と言うある種の第六感に強烈に気付く事となった。


 チラリ、とガラス窓を経由して背後を見るとその視線の主が居た。黒縁の委員長眼鏡、デコッパチ&ポニーテールの若白髪、白い貫頭衣(聖別幼育園の制服)、それは天使にあるまじきドス黒いオーラを纏ったゲロゲロ=ソフィエルちゃんだった。


 ゲロゲロ=ソフィエルちゃんは適度な距離をもってストーカー的な移動方法で付いてきている。これはヤバい。


 “おい、コーディ! 聞こえてるか?”


(は? 何? 幻聴?)


 “幻聴じゃねー! これはグローリアにも聞こえてるか?”


(聞こえてる様子はないな)


 “そうか、じゃあ成功だな。言うまでもないが私だ! チロリ=ツンパカブリエルだ! MPがあんまり無いから手短に話すが、私は今「精神感応会話(テレパ・シース)」と言う魔法でお前だけに話し掛けてる”


(それは分かる。で、何? 手汗マン)


 “てめぇー! っと、まあいい、お前も手汗マンだからな! やーいやーい! 手汗マン!”


(ああ、手汗マンは俺からだったな。で、何用?)


 “ああ! MP切れるッ!”


(おーい)


 “……んーっ! んー……(プツン)”


(結局何だったんだ?)


 チラリ、とチロリ=ツンパカブリエルちゃんの顔を見ると、必死の笑顔に脂汗が貼り付いていた。マジでMP切れだったか。何やってんだアイツは……。


 仕方ない。こっちも社畜行進デスマーチで疲れてはいるが、サービスしてやるか。


(おーい、グローリア。チロリ=ツンパカブリエルちゃんが辛そうだから単粒強化(シングルエンチャント)しておんぶしてやれ)


「はーい。チロリ=ツンパカブリエルちゃんー!」


「な……なに?」


「おんぶしてあげるー!」


「……!!!? わわわわありがととととと」


 ふふん。取り乱すほど嬉しいかチロリ=ツンパカブリエルよ。


 この時、俺は見てしまった。チロリ=ツンパカブリエルちゃんを背負おうとしている俺達の背後で、純白のハンカチを乳歯でガリガリに噛んで眼と口を三角にしているゲロゲロ=ソフィエルちゃんを。その背後で今まさに首を落とした乙女椿を。


 あの顔は嫉妬。まさか……!? アイツもグローリアちゃんを狙ってるのか!?


 ……。


 俺は気付かない振りをして頭の片隅でアニソンを呟く作業に戻った。絶対に面倒臭い。社畜俺氏は働くのが仕事なのだ。アレはお局様(つぼねさま)だかOL(女の子)がやるお仕事だ。


 グローリアは単粒強化(シングルエンチャント)を駆使して足腰を強化して、チロリ=ツンパカブリエルを聖別幼育園の寮自室へと送った。彼女をベッドの上に乗せて、布団を被せて、お祈りまでした。


「いちにちはたらいてつかれてしまったチロリ=ツンパカブリエルちゃんがはやくよくなりますように、かみさまにお祈りいたします」


 そして、俺とグローリアは部屋を出たのだった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 そして、その日の夕食時の事だった。


「ねぇ、もっと魚食べない?グローリアちゃん」

「ほらほらグローリアちゃん、野菜食べなきゃ野菜……」


 “おい!コーディ!タイミングずれてんぞクソが!”


 無理やり魚を食べさせようとするゲロゲロ=ソフィエルちゃんと、野菜を食べさせようとするチロリ=ツンパカブリエルちゃんに挟まれた俺は、チロリ=ツンパカブリエルちゃんとの盟約を果たすべく、ゲロゲロ=ソフィエルちゃんの魚は俺が食べ、チロリ=ツンパカブリエルちゃんの野菜はグローリアちゃんに食べさせ……と言う高度なテクニックを使っているのだが、その上でタイミングを盗んでゲロゲロ=ソフィエルちゃんが口に魚を捩じ込んでくる。


「ぐぶえー」


 グローリアも何だか眼を回してる。


 ちょくちょく合う視線はどちらも鋭く、明らかに敵と獲物を見る目だった。女の子怖い。そして、さっき使い果たした筈の枯渇したMPを絞り出す様にチロリ=ツンパカブリエルちゃんがちょくちょく暴言を飛ばしてくる。


「ぐぶえー、もぐもぐ」


「ほらほら私が八百屋さんで売ってるズッキーニ美味しいでしょ!?」


「私の職場体験先の魚屋で仕入れた最高級のアングロサクソンアンコウは身がホロホロして美味しいでしょ!?」


「ぐぶえー、もぐむぐうまい。ぐぶえー」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ……。


 その夜。


 “おい、コーディ山田”


「はい、コーディ山田です」


 案の定来やがった。チロリ=ツンパカブリエルちゃん。


 彼女は普段の笑顔とは違う顔で俺の前に立つ。俺悪い事してないんだけどな。


「あの女、ゲロゲロ=ソフィエル。私の恋のライバルだから。彼女と一緒にいる時はグローリアちゃんは出さないでよねッ!」


「言われなくても何となく分かるから、と言うかもう既にやっとりますがな」


「あの女は危険よ」


 どの口がそれを言うか。


「入園から暫く図書館で一緒に勉強してたから分かる。あの女の恋愛は少し病的な匂いがするわ」


 いや、だからどの口がそれを言うか。


「ともかく、よろしく頼んだわよ」


 ……。


 また1つ厄介な種を拾ってしまった。この種はポケットの中から芽吹いてくるのだろうか? 俺は社畜生活したいだけなのに……。

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