第19話 同性愛のエトセトラその2
コンコン……。
ん?
俺はノックの音で目が覚めた。今日は図書館で脳を酷使し過ぎたのか、寝てしまっていたようだ。
そして今日はクロスアーミー先生もハイパワー・ナグルス先生も居ない筈だが……?
「どうぞ」
開いたドアの前に居たのは
チロリ=ツンパカブリエルちゃんだった。
「ちょっといいかなー?」
「……どうぞ」
俺はチロリ=ツンパカブリエルちゃんを屋内に招き入れる。
「で、何のようだい?」
「あなたはコーディさん?」
……ん?
「は?」
「コーディさん? それともグローリアちゃん? どっち?」
「こ……コーディかな」
思わず答えてしまった。俺がコーディ山田ってのは出回ってるのか?
「だよね。わかるわ、グローリアちゃんは眠ってる?」
「お……おう。あいつは大体19:00以降はずっと寝てる」
「そう、じゃあ単刀直入に言うわ。私とグローリアちゃんの恋のキューピッドをしてくれない?」
……は?
「えーっと、それは俺じゃダメかな?」
「駄目。あの可愛いグローリアちゃんじゃなきゃダメなの。あんたが出てる時はすぐわかる。少し悪そうな間抜けな顔してるもの」
こいつ、調子に乗りおって……4歳児の癖に……。
「今考えてる事を教えてあげよっか?どうせ4歳児の癖にって思ってるんでしょ!?」
なっ!エスパーかコイツ!
「バレたって顔してるわよ。本当愚図なのねあなた」
「な……そ……と言うか普段と全然性格違う……! はっ! もしかしてツンパカブリエルの方の人格か? 天使の方だろ! お前!」
「はん……違うわよ。女は女優なの。愛されるように振る舞うに決まってるじゃない。まぁ、あんたも騙されてたって訳」
「な……何おう! お、おろ、おろろ、そうか。4歳だが知能は10歳並みって言ってたもんな。そりゃ字が書けて恋が出来ない年齢ってのも変だしな……騙された」
何て女だ。保育園児の癖に……!
「……じゃ……じゃあ、まぁ多少なら協力してやる。丁度それで少し困ってた所だ」
「困ってた事?」
「どうもグローリアが……恋をしているみたいなんだ」
「恋ぃ!! 誰に!?」
「し、シーッ!グローリアが起きる!相手は……クロスアーミー先生。グローリアったらホモじゃないかと疑っている」
「あ……あの髭もじゃに!?……! ふ、ふふふふふ……そぅ、ふふふふふ……くっくっく……」
チロリ=ツンパカブリエルちゃんは狂ったような笑顔でこっちを凝視している。怖い。女の子怖い。
そして、一瞬真顔になってから微笑みつつ問い掛ける。
芸が細かいな。
「あんた、グローリアはどっちだと思う?」
何がどっちだ。
「ホモかな?」
「はぁ、不正解。まず問題からして勘違いしてる。私の問いは、グローリアの性別。そして、正解は……グローリアは女の子よ」
「は? ちんこ生えてるよ?」
「それはあんたのでしょ? 中身のグローリアちゃんは女の子よ。あんなに可愛い男の子居るわけないでしょ? あんた馬鹿なの? 何年一緒にいてそんな答えが出てくるの?」
そんな……ばかな……いや、確かに……と言うかグローリアって女の名前だし……でもちんこ……は俺?
「もしかしてグローリアの方が天使なのか?」
「正解。少なくとも私は貴方の中にいるグローリアが天使で貴方が本体だと思ってるわ。だって、あんなに可愛いんだもの」
……確かに。考えた事もなかったが、可能性は有り得る。グローリアが天使で、俺が“コーデックス”の可能性もあるんだよな。
可愛いから女の子認定ってのはどうかしているが、言っている事は間違いだとは言い切れない。
と言うか惚れた相手……つまりグローリアの身体が男ってのは女性好きな同性愛者的にはどうなの?
確かに俺はグローリアの育つ過程を頭の中で見てきてはいるが、他の天使憑きの子供達が“目覚めた”とか言ってるからには突然グローリアが“目覚める”可能性もあるんだよな。もしかしたら“目覚めている”可能性だってある。
「まぁ、私がお願いするのは3点。私とグローリアちゃんの会話を邪魔したら殺す。私がグローリアちゃんと過ごせる時間をなるべく多く用意する事。そして、グローリアが私以外を好きになる事を出来るだけ阻止する事。良いかしら?」
「お……おう。3番目は俺の利益にも合致するからまぁ良しとしよう。あと、聖別幼育園での味方は必要だからな。貸しにしておく」
何と言うか、チロリ=ツンパカブリエルちゃんとくんずほぐれつの関係になったら俺にも恩恵あるしな。
「確かに聖別幼育園での結束は必要かもね。……あと、下衆な考えが顔に出てるわよ。もう少しポーカーフェイスの勉強をなさい」
4歳児に真顔で説教されてしまった。何だろう、俺。ちょっといけない道に目覚めそうだ。
◇ ◇ ◇ ◇
ともあれ、その後は少し話し込んで別れた。そして、翌朝のチロリ=ツンパカブリエルちゃんは普通の4歳児に戻っていた。
女優怖い。




