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“偽天使転生”~社畜編集者の異世界成り上がり録~  作者: 林集一
聖の章 前編 俺転生のエトセトラ
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第2話 天使様じゃないっ!

 

 夢の中で俺はひたすらに手を伸ばし続けて来た。


 何に?


 前世の俺はそもそも死んでいる。


 この世界に俺の求めているモノがあるのか?


 “逃がさねぇよ”


 手を伸ばしていたのは……俺か、お前(・・)か?


 ◇ ◇ ◇ ◇


 目が覚めると、俺は赤ん坊(グローリア)の身体に戻って来ていた。感覚でわかる。


 だが、目を開けても赤ん坊の視力ではモノが見えない。


 ただ、枕元に立っていた男達の気配は感じなかったので安心した。ストーカーはNG。可愛娘(カワイコ)ちゃんならまだしも男は御免である。


 そして、この後。どれだけ頑張って身体を抜けようとしても、身体から抜けられず、以降はグローリアとして育てられる事となった。


◇ ◇ ◇ ◇


 ――――俺がグローリアとしてグローリアと共に育てられる事にどんな意味があるのだろうか?


 傍らで育ちつつあるグローリアとしての思考回路は俺を拒絶する事なく、俺としての記憶や思考する領域を残しつつ形成されていった。


 そして母親や父親の言葉や感情を理解して学んでいく。

 身体を動かすためのコントロールを学んでいく。


 グローリアはどんどんと育っていった。


 俺であって俺じゃないグローリアの思考回路と初めてコンタクトを取ったのは1歳の頃だった。


 グローリアは明確に俺を認識して意識として話しかけてきた。その感情は――――愛情だった。


 母親や父親から受けてきた見返りを求めない愛情の気持ちを俺に向けてきたのだ。


 そこで1つの確信を得た。


 間違いない。グローリアと俺は同一の存在ではなく、別個の存在だった。


 そしてまた、思い悩む。


 これ迄の俺は、この人間の世界を知る者としてグローリアの補助輪としてサポートをしてきた。


 目でモノを見るためのピント調節や、母親の都合に合わせて排泄のコントロールをしたり、身体を効果的に動かしたり、多くの手本を見せてきた。


 しかし、この急激な成長はグローリアの人生において良い影響を与えるのだろうか?


 言うなれば父や母以外のそれ以上に身近な存在がいると言う事だ。


 果たしてそれは良い事なのだろうか? 今後何かがあって俺が消滅した後のグローリアに与える影響を考えると、今後グローリアの意識や身体の操作を俺が行うのは問題じゃないだろうか?


 ……。


 ……。


 俺はその日からグローリアの意識や身体に干渉を行う事を極力封印して、頭の片隅でひたすらアニソンを呟くBotと化した。


 90年代のアニメならかなりのレパートリーがある。


 頭の中なら隣の部屋から連続壁ドンしてくるプレイボーイも居ないので歌い放題だ。やっほい。




 ……。


 …………。


 ……しかし、俺の干渉が無くなろうともグローリアの意識は補助輪による初期ブーストを利用して、常に年相応の10歩程先を行っていた。


 3歳。グローリアは完全に自我を目覚めさせており、活達な幼児時代を謳歌していた。


 こうなると俺は完全にグローリアに知覚され、包み隠さず記憶を覗かれる年上のお兄さんになっていた。


 しかしグローリアがまだ育っていないせいか、子供特有の馬鹿みたいな好奇心がある割には、俺の性癖やら大人の事情までは覗かれる事はなかった。


 それに少し安心した俺は、時々グローリアの思考を覗いたり、グローリアの生活する世界を覗き見たりする事もあった。


 そこで得た情報。

 グローリアの生まれ育っている村は、現代で言う中世に成り立てホヤホヤの田舎村と言った所で、家族の生活は決して楽なものではないと言う事だった。


 しかし、楽ではないだけで特段厳しいと言った所もない。日の入り1時間後から日没3時間前位まで畑をこねくりまわして、家に帰れば適当に団欒して暗くなったら寝る生活。


 これを繰り返すだけの日常。



 村の娯楽は広場で楽器を奏でる若い衆の踊り。

 伝承師の老婆がする古い話。

 時々やってくる吟遊詩人。

 それから年に1度の収穫祭程度のものだった。


 だが、俺やグローリアにとっては毎日が娯楽で、全ての瞬間がキラキラの世界だった。


 見た事もない満天の星や、庭に居る謎の虫、食卓に並ぶ変な肉、家族間で交わされる新しい言葉。それが十分に娯楽だった。


 25戸程の村だったが、たまたま0~10歳までの子供は俺しか居らず、大分ちやほやされた。隣家の10歳君は7歳も下の俺と比べられるから少し可哀想ではあったが、何とか仲良く暮らしていた。


 そして、俺とグローリアにとっての“運命の日”はグローリア4歳の誕生日の夕暮れにやって来た。



 ◇ ◇ ◇ ◇


 4年間住み続けた家の玄関前。されど自力で歩けるようになったのが2歳半ばからなので、まだ見慣れた玄関とは言えない。


 庭先には桜の花が薄いピンク色に咲いており、ハラハラと箒のエサを産み続けて居た。


「ぼくがグローリアちゃんかい?」


 うすら笑いを顔面に張り付けた白いローブの男が俺にそう話し掛けた。村の男ではない。


「ええ、私がグローリアです」


「おお、4歳と聞いてますが大分ハッキリとしているんですね」


「お父様とお母様のお陰です。それで、ウチに何の用でしょうか?……神官様(・・・)


「お、“教会”の事も知っているのですね? お利口ですね。今日は君のお父様とお母様に話があって来たんですが、お父様とお母様は何処かな?」


 教会と言うのは、この辺一帯俺の知る限りの世界に根付いている宗教の教会で、そこに属している神職の人を神官と呼んでいた。この村にも何度か来た事があり、祈りを捧げた事がある。


「お父様とお母様は部屋で仕事をしています」


 そう言い終わる頃に後ろから父親が出て来て対応した。


 俺は母親に寝室に行くように告げられたので、一旦寝室の寝台の中に入り、ドアが閉めた。

 直後Uターンして、寝室の壁に耳をつけて待機する。


 世の大人よ、震え上がれ。子供は聞いていない様で色々聞いているのだよ。



 ……。


「と言う訳でグローリアちゃんは……」


「確かに……4歳にしては……」


「まさかグローリアが……」


 耳垢の詰まっていない4歳児の耳には大人達の会話はハッキリと聞こえていた。所々の語彙が不明瞭な為に正確な意味は測りかねるが、恐らく要旨はこうだ。


 “お宅のグローリアには我が聖天教会の天使が宿っている。故に教会の保護の元でこの国の首都で暮らすべきだ。天使の子を育ててくれた礼として金貨100枚を両親に手渡す”……と。


 んんん??? 俺が天使?


 何となく昔グローリアの枕元に立っていた7枚羽の天使が頭に思い浮かぶ。……あれこれ人違いならぬ天使違いじゃね? ってかもしかして俺は天使の身代わりになってこの身体に縛られてるの?


 答えは出なかったが俺は家を出る事になった。


 ファッキン! NO! 人身売買!




◇ ◇ ◇ ◇


・ワンポイントメモ


【天使】……天使とは羽の生えた天の使いだぞ! その反対に悪魔なんてのもいるぞ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告フォームが閉じられているのでよけいなお世話かも知れませんが一応報告してみます >寝台の中に入り、ドアが閉めた。 ドアを閉めた。
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