第15話 外出
「えー、今日は私が見る事になりましたー。皆さんはもう自分の事は自分で出来るので、今日は自由に過ごして下さいね。お遊戯室は開放しますけれど、鍵が掛かっている部屋には入らないで下さいね」
ケツワレール先生が眠そうにそう言った。基本的にヤル気ないよな。コイツ。
「せんせー、ごはんはー?」
「ごはんー」
「食事はシスターが来てくれていますので、適当に作って貰ってください」
おいおい、なんだそりゃ? 適当にも程があるな。今日は好都合中の好都合だが。
「今日はハイパワー・ナグルス先生もクロスアーミー先生も居ないので、なるべく2人以上で行動していて下さいね」
うーん、それは不都合。
「「「はーーーーい!」」」
◇ ◇ ◇ ◇
「ねぇねぇ、グローリアちゃん」
「なあにー? チロリ=ツンパカブリエルちゃんー」
「グローリアちゃん今日街の外にお出掛け行くんでしょ? 私も連れていってよー!」
…………は?
何でバレてるんだ……?
「なんればれてるだー」
「首に通行手形が下がってるよー」
はっっっっっっっっ!
何てこった、いつの間にかに思考が遠足当日の4歳児に引っ張られていた! これは不味い。いや、此処で気付けたのでセーフか! 危ねぇ!
「ふふふー、2人で行こうよー」
「あー、少し危ないと思うが……まぁ近場なら大丈夫かな?」
「手提げ袋とお弁当居るー?」
「あ、要ります」
今回の目的は蒔拾いと、俺が知識として知っているが実際には知らない知識の確認。一応この辺は大きな都市が近いので魔物も殆んど居ない筈だし、居ても水包位なら余裕で逃げられるし、もし犬鬼や土鬼クラスが出ても、いざとなったら魔素避音波で追い払えるだろう。
まぁ俺のMP12しかないから効果も12秒くらいしか効果無いと思うけどまぁ何とかなるだろ!
◇ ◇ ◇ ◇
俺とチロリ=ツンパカブリエルちゃんは結託して「おままごとをする」とか何とか言ってシスターからパンを2つせしめてきた。
チロリ=ツンパカブリエルちゃんは天使憑きだけあって4才にして小学1年生位の知恵がある。まぁ字が書ける位だしね。
そして、「水癒」と「水膜」の魔法を使えるらしい。しかし年齢ゆえにMPが殆んど無いので、根性入れても1回使えるか使えないかの瀬戸際らしい。
俺達2人は4歳児としては破格の性能ではある。だが、肉体は普通の4歳児に毛が生えた程度なので、過信は禁物だ。
持ち物も色々用意した。俺は頭から被る白い布の上に布鎧、そして懐に銀のフォークと言う装備となる。
一方、チロリ=ツンパカブリエルちゃんは頭から被る白い布にパン2つ入りの八百屋支給の手提げ袋、八百屋さんから貰った髪を結ぶリボン、そして銀のスプーンと言う装備となった。
「かわいーねー! チロリ=ツンパカブリエルちゃん!」
「グローリアちゃんも格好いいよー!」
自分の物をお互いに自慢する。
手提げ袋……欲しい。
……。
はっ! また思考が引き込まれていた。早く行かねば。
俺達は手を繋いで東門の方へと向かった。クロスアーミー先生達が調査をするのが西の森だからな、取り敢えずは東に行くに限る。事前に聞いた話だと40km圏内は灌木と雑草が茂る草原みたいな感じになってるらしいからな。多分、薪程度は拾えよう。
数十分後、俺達は東門の前に立っていた。都市ロンドヴルームの東門は正門と同じ形をしており、警備に当たる詰め所の兵隊も同じようなものだった。
「おや? 僕達は聖別幼育園の子かな? 何処に行くのかな?」
「はい、聖別幼育園のグローリアと申します。今日はクロスアーミー先生からの極秘任務で街の外に行く事となっています。これがクロスアーミー先生からいただきました通行手形です」
……ドキドキするな。
「ふむ……確か今日は外出予定があったな……」
「クロスアーミー先生は西の森の行かれました。同じく極秘任務です。誰にも口外されない様にお願いします」
「おお、そうでしたか。ではどうぞ」
拍子抜けなほど楽に街の外に出る事が出来た。
「(ひそひそ……見た感じどう見ても4歳だが……)」
「(この歳で複数の魔法を使えるらしいぞ……)」
社畜なめんな。入社記録と退社記録は月末にまとめて自分でつけるんだぞ?守衛の誤魔化し方くらい100通りはあるわ。
「うまくいったねー、グローリアちゃん」
「そ、そうだなチロリ=ツンパカブリエルちゃん」
チロリ=ツンパカブリエルちゃんと手を繋ぐ。
……なんだこれ、胸が酸っぱい。繋ぐ手が少し汗ばむ。
こ……恋かな?
街の外に出て5分、小高い丘を越えた時、灌木の下に幾らかの枝を見付ける。
「この薪を拾って帰ろう。これはお金になる筈だから」
「これも?」
「……それはまだまだ生木じゃないかな?持って帰るけど」
「この実は食べられるの?」
「桑の実はまだまだ白いから無理じゃないかな? あ、葉っぱは持って帰るか……いや、いらないな。袋貸してー」
「はーい」
あれ? デート?
……完全に俺は4歳の精神に引っ張られていた。




