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“偽天使転生”~社畜編集者の異世界成り上がり録~  作者: 林集一
聖の章 前編 聖別幼育園へようこそ!
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第14話 久々の密会

 

「少し宜しいでしょうか?」


「……どうぞ」


 日曜日の夜は懐かしのキャラクター、ハイパワー・ナグルス先生の訪れから始まった。


「お久し振りです。お変わりはありませんか?」


「まぁクロスアーミー先生に付きまとわれてるくらいで後は至って普通ですかね」


 別にハイパワー・ナグルス先生が悪い訳じゃないが、少し毒付いてみる。


「それはすいませんでした。私もクロスアーミー先生に牽制されてなかなか動けなかったのです」


 だよね。知ってます。……ちょっとごめんね。


「さておき、何の用ですか? ハイパワー・ナグルス先生」


「はい、今日は世間話をしに参りました。私の置かれている状況とこの街の状況ですね」


「状況?」


「はい、そうです。状況です。この国と教会の関係はご存知ですか?」


「はい、“コーデックス”の基礎データなら。政治を行う権限は神殿長と上級神官10人と神殿騎士8人の合議制。つまりこの国は教会の支配下にある。俺はその中ではまだ神殿騎士1人にしか会ってないがな」


「はい、その通りです」


 ハイパワー・ナグルス先生は笑顔で答える。


「その中で派閥があるのはご存知ですね?」


「えっと、預言者の降臨を待つ派と、緊急時なので待たずに呼び出す派だったかな?」


「はい、そうです。それから、属国派と言うあと1つの派閥を合わせてこの教会には合計3つの派閥があります。伝統派と急進派、それから属国派の3つです。勢力はまぁ大体3等分です」


「元々預言者を待ち続けるのみの集団だったのが帝国の侵略を受けて、無抵抗の伝統派、帝国に反抗する急進派、帝国に恭順する属国派の3つに割れたって訳だな?」


「その通りです。大神官は1人を除いて皆属国派で、神殿長と大神官1人と普通の神官の殆んどは伝統派です。それから、神殿騎士は皆急進派なのです」


「勢力をほぼ3分してるのか」


「はい、議決権的には神殿騎士(急進派)は8人、大神官(属国派)は9人と議決権としてはこちらは拮抗しておりますが、神殿長と大神官(伝統派)は神殿長の強権とその他の神官の後押しがありますので、パワーバランスとして拮抗しているのです。


 この幼育園に関しましては(わたくし)ハイパワー・ナグルス副園長が伝統派、クロスアーミー副園長先生が急進派、そして園長は属国派……の大神官なのです」


「成る程、まぁ国の未来がかかってるからな。派閥位出来てもおかしくはないな。ってか園長先生はまだ見た事もないが、属国派なんだな」


「はい、神官会議の度に喧々囂々の大騒ぎです。それで幾つか動きが有ったのでその報告と相談です」


「報告?」


「はい、この西の森に怪しい建築物が建っているとの報告があったので、明日私とクロスアーミー先生を含む戦闘可能な数名で調査に向かうのです。報告によると帝国軍が密かに西の森に拠点を築いているかも知れないと言う状況にあるそうです。仮にこれが帝国軍による建築物ならば、私が死ぬ可能性があるのです」


 俺は喉を鳴らした。


「ですので、遺言です。私が死んで聖別幼育園に補充で来る副園長が属国派だったり、帝国が攻めてきたりして、皆さんが危機に晒されるならば……」


「晒されるならば……?」


「子供達を連れて逃げて欲しいのです。彼ら彼女らはこの国の希望ではなく世界の希望なのです」


 世界の……希望。


「その為の魔法をお伝えします」


「魔法?」


「転移魔法接続型乱数転移(ラール・シバ)。数人分の魔導師の数年分の魔力を使って放つ大魔法です。グローリアさんは魔法を覚える領域が10以上あったかと思います。そこにこの発動直前まで御膳立てした接続型乱数転移(ラール・シバ)をそのまま移させて貰えれば、1回ならば使える筈です」


「転移魔法……か」


「何処に飛ぶか分かりませんが、一応人間の居る場所に引かれて飛ぶように出来ているので、海のど真ん中や宇宙空間に転移して即死何てのはないです。飛んだ先が帝国ならば諦めて下さい」


 ……そもそも俺は何のために居るんだ。グローリアのため?


 ここはどう答えるのが正解なんだ?


 ……。


(好きに選んで良いよ)


 寝ている筈のグローリアが頭の中で呟いた気がした。


 ……人のため誰かのためではなく俺の意思は?


 ――――そもそも俺は何のために産まれた?


 それは天使達を護るため?


 可能性は高い。俺の転生には天使が関わっているのは確かだし、考えてみれば他の天使憑き達を護れるのは俺くらいしか居ない……。


 ……。


 ……。


「分かった。グローリアを含めて皆を側で護れるのは俺しか居ないみたいだし、一先ず俺がその魔法を貰い受ける」


「ありがとうございます。コーディ山田さんならきっと出来ます。勿論死ぬつもりはありませんが、いざとなったら宜しくお願いします」


「本名山田でもないがコーディ山田で確定かよwww」


「良いじゃないですか、前世の貴方は死んだのでしょうし、生まれ変わったのだから始めに名乗った山田が本名でも」


「はは、そうだな」


「取り敢えず、合わせて回復魔法や魔除けの魔法をお教えします。何かあったら使って下さい」


 ……俺は小魔法「光癒(ヒールライト)」「魔素避音波(テンパルス)」、それから大魔法「接続型乱数転移(ラール・シバ)」を覚えた。


光癒(ヒールライト)」は掌から出る赤外線的な光に当たっていると自己治癒能力が10倍位になる便利な魔法。


魔素避音波(テンパルス)」は魔物が嫌がる電波を飛ばすらしい。しかし、無神経な魔物は当然居るし、熊くらいの大きさの魔物からはあまり効果が無いとの事。


接続型乱数転移ラール・シバ」は手を繋いでいる程度の接続のある生命体を、同種族のいる所にランダムに一斉転移させる魔法だ。


 俺は魔法使いになった初めての朝を迎える。


 脱魔法使い童貞の朝の太陽は激しく黄色かった。


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