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“偽天使転生”~社畜編集者の異世界成り上がり録~  作者: 林集一
聖の章 前編 聖別幼育園へようこそ!
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第13話 キルテッドアーマー

 

 ここの弟子になって正解だった。


 その暇さゆえにか店主の性格故か、広く浅く丁寧に実践的に作業を教えてくれた。


 蚕からの糸の取り方は、前日の復習をした後に実際に1人で作業をさせて貰った。2~3個は糸を切らせてしまったが、特に問題なく糸を紡ぐ事が出来た。


 そして、その一纏まりの糸は記念に貰う事が出来た。これを使って布鎧(キルテッドアーマー)製品を作らせてくれるらしい。


 その糸はその日のうちにギッタンバッタンの機械、機織り機と俺の労働によって布になった。案外織物は単純な構造になっているので、こ慣れてくるなれば4~5時間である程度の布を織る事が出来た。


 それと、聞いたところによると職場体験は受け入れると銀貨1枚が支給され、それで職人見習いとして暫く受け入れて欲しいと言われるらしい。師匠は信仰心で受けているらしく、その銀貨を貰うに忍びないと言うので、その銀貨分の素材で自身の装備を作らせて貰う事となった。


 目から鱗が出た。後で鱗盾(ラメラーシールド)の材料にしよう。


 冗談ではなく何とかお礼がしたいところだ。


 実際に作るのはオーダーメイドの革と布の合成鎧(コンポジットアーマー)らしい。胸部を守る軟革(ソフトレザー)の胸当てを作り、その空いている胴体部分に、絹の繊維を織り込んだ薄布の上に麻布を重ねた二重の布を縫い付けて完成した。


 職場体験2日目にして出来上がったのは、半袖のセーターと言った防御力ながらも歴とした布鎧(キルテッドアーマー)だった。胸部と肩に掛けるベルトのみ軟革(ソフトレザー)を使って、胴回りと袖は二重にした絹と麻布から出来ている。


「俺の防具……!」


 つい素が出て“俺”なんて言うほど嬉しかった。


「簡単なものではありますが、まさか2日で完成させるとは思いませんでした。さすが聖別幼育園の方は違いますね。その辺の20歳前後の見習い職人ですら此処まで早くは出来ません」


「おおおおおお……!」


 ――――厨二心。誰もが子供の頃に患かる麻疹(はしか)の様な病気なのだが、稀に大人になっても罹患している奴が居る。


 ――――俺だ。


 結果、それを拗らせて編集者となり死んだのは笑い話にもならないのだが……。


 ともあれ、実際に防具を着けると言うのは厨二病云々を抜かしてもかなりの高揚感がある。リアル防具だぞ?


 4歳児何てのは道端の石をコレクションする位自分の物に飢えてる。だってそうだろう? 産まれて自我をもって初めての事だらけの世界で、目の前にキラキラした硬いものが落ちているんだ。そりゃあ拾うさ、蟷螂の卵だって引き出しに詰め込むさ。


 そんな4歳児に自分で作った布鎧(キルテッドアーマー)をプレゼントしたらどうなると思う? 嬉ション大爆発の嬉しい踊りに嬉しい歌を無限ループだよ。


 俺はそれを強靭な精神力で抑えに抑えて平静を装う。


 鍛えられた社畜だからこの程度造作もない。


 余談だが、絹の防御力はバカに出来ない所がある。貫通に対して耐性があり、鎧下に重ね着すれば矢を止める効果も有るとか無いとか。


「師匠! ありがとうございました!」


「はい、グローリアさん。来週はその布鎧(キルテッドアーマー)を着けて来て下さいね。少し外に行きますので」


「外!?」


 やばい! 嬉しい!


「はい、外です。クロスアーミー様も良いと仰有ってましたよ」


「クロスアーミー先生が……?」


「はい、昨日直々に此方の工房までいらしておりました。グローリアさんを頼みますと。教え子思いの良い先生ですね」


 やばい! 危険だ!


 確か「ヤバイ嬉しい」は誤用で「ヤバイ危険だ」が当たってるんだったか。――いや、クソ喰らえ。語用如きが俺に指図するんじゃない!


「因みに外に出るには何か許可がいるのですか?」


「はい。既に昨日の段階でグローリアさんの通行手形を預かっております」


 師匠は木の割り府に俺の名前と街外への外出を許可する旨が書かれた通行手形を差し出した。


 ……外に出た瞬間神殿騎士の群れやモンスターに教われたりしないだろうな。


 ……ん?まてよ。


「そうですか、これを今預かっても宜しいですか?」


「構いませんよ。来週の土曜日に忘れなければ良いのです。はい、どうぞ」


 俺は師匠に通行手形を首に掛けて貰った。


「身体は4歳の大きさですが、布鎧(キルテッドアーマー)に通行手形を下げていたら何だか冒険者の様ですよ」


「そ……そう? ぐふっ。格好いい?」


「はい、あとは腰に短剣でも差せばより冒険者らしくなるでしょう。刃物は扱わせられませんが」


「何故ですか?師匠」


「だって、グローリアさんは神に使えるご身分でしょう?」


「あ!そっか」


 神官は刃物の使用が制限されてるんだったか。


 って事はひのきのぼうスタート?


「クロスアーミー様は“グローリアさんは立派な神殿騎士になる”と仰有ってましたよ」


 うーん。何と言う余計な事を……。ストーカーに外堀を埋められている気分だ。


「クロスアーミー様も日々この国の為に寝食を惜しんで働いてくれております。我々も頑張らねばいけませんね。では、そろそろお帰り下さい。これ以上は暗くなってしまう故」


「あ、そうですね。ではこれで失礼します。師匠」


 そう言えばクロスアーミー先生も決して“悪い事”をしようとしてる訳じゃないんだよな。突き詰めればみんな街を守りたいだけなんだよなー。


 空は薄く青を帯びてきている。


 チロリ=ツンパカブリエルちゃんは先に帰ったみたいだ。


 街は薄い赤の輪郭を纏って夜を迎えていく。


 明日はハイパワー・ナグルス先生とクロスアーミー先生が留守かつ休みの日だったなー。この割り府があればちょっくら外出出来るかもしれない……。


 俺はそう思って通行手形を握り締めた。



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