第95話 突撃 オマケの戦力分析
出撃前に物資の確認と部隊の点呼を行う。物資は両手に荷物の無い魔法兵に運んで貰う事にした。乳母車みたいな車輪付きの木の箱に全員で食べられる1食分の食事と、傷薬と軟膏と包帯の医療物資等々。毛布や鍋等の道具も一応入っている。
今回は命令権をルルーシュイン五十人隊長に預けて、
キュアスパルタカス十人隊長(剣盾兵10人)
せむしのセム君十人隊長(長槍兵9人)
元1番手の盗賊十人隊長(重装兵9人)
キングコブラ十人隊長(魔法兵9人)
と
傭兵隊長(弓傭兵40人)
と
言う布陣で討伐隊を組織した。剣盾兵は太陽陣の練習。長槍兵は槍衾の練習。重装兵は長槍兵背後の護衛。魔法兵は一斉射撃の練習。それぞれがこれ迄の練習を実践で試す事を楽しみにしている。
傭兵は複合弓の矢を50本、弩のボルトを20本をそれぞれに持って貰い、矢が無くなった時点で契約は解除とした。射撃は此方の合図にて開始。なるべくは複合弓は大土鬼に、弩は黒い土鬼等が出た時に使って貰うが、特に厳しくするつもりはない。話によると黒い土鬼は少ないみたいだしな。40人×50本ならば2,000匹も戦力を削れる。
作戦としては重装兵と長槍兵を前衛に出しつつ、剣盾兵も太陽陣で突っ込む。怪我人や疲れが出たら弓傭兵と魔法兵の援護を受けつつ後退。休憩や手当ての後に再び前線へ行き、敵を殲滅させる。土鬼や大土鬼程度ならこれで十分な筈だ。
ある程度捌けたらルルーシュインとキングコブラの2人が突撃して土鬼女王を仕留める。キュアスパルタカスは万が一に備えて俺達の護衛として残す。
こんなところかなぁ。
――ヒソム峡谷。廃棄鉱山近くにある険しい谷。地形的に魔物の発生しやすい土地となっている為に、度々軍事演習を兼ねてグルグル軍が掃討作戦を行っていた為に“今は魔物が居ない”とされていた。だが、ルルーシュインらの調査では、その奥深くに大量の土鬼を発見している。そして、その峡谷の奥は断崖絶壁の行き止まりとなっており、奥には土鬼女王とみられる異常個体も発見されていた。
「どうだ? いけそうか?」
「此方の戦力は倍増している上に、敵もこないだ南門で戦った数の10分の1程度なので、問題ないとは思うが……戦闘に絶対はない。敵の数が減ったとしても数千を相手にすると言うのは神経を磨り潰すからな……」
「そうかー」
ルルーシュインは真面目な顔をしつつ行軍している。俺は前回と同じく、レンタルの馬に両手の無い男とパットミちゃんとの3ケツで行軍に随行している。一応俺の軍だし、結末を見ない訳にもいかないだろう。待っていても暇だしな。
そうこうしているうちにヒソム峡谷の入口に到着した。峡谷の奥150m程の場所に溜まっている敵もこちらを発見したらしく、「ゲギャゲギャ」と騒ぎ始めた。
「剣盾兵は太陽陣用意。重装兵と長槍兵は槍衾用意。魔法兵は昼食用意。弓傭兵は入口の左右に別れて射撃用意、入口に殺到する敵は排除して構わん」
ルルーシュインは整列する社畜隊に最終の確認をしていた。
「では、作戦開始!」
「「「おおおおお!」」」
ルルーシュインの合図で幅40m程の峡谷に30人前後の兵隊が突撃していく。剣盾兵は敵陣に突っ込むと円陣となり開いたり縮んだりしながら敵を蹴散らす。
「天知る地知る俺の汁! 魔王に代わってこのキュアスパルタカスがお仕置きよ!」
「「「おおおおお!」」」
微妙に台詞が変わっている。
因みに「天知る地知る俺の汁」は昨晩のネタで、安宿の天井に喪中故の溜めた一撃を放って、天井に直撃した汁が落ちてきた時に言い放った最低のネタだ。剣盾兵《神聖隊》は大爆笑していたが、宿屋の娘はドン引きしていた。
尻にネギを挿す以上に不謹慎な事がほぼ毎日安宿の中で繰り広げられていたが、その辺には触れるまい。軍隊なんてこんなもんだろう。ようは勝てば良いのだ。
……やはり剣盾兵は乱戦に強い。敵が小学生相当の身体能力の土鬼に、高校生程度の身体能力の大土鬼が混ざる程度なので、一応1ヵ月以上の訓練を積んで実践経験もある剣盾兵とキュアスパルタカスの敵ではなかった。時々敵の投石に直撃したり、大土鬼にぶん殴られてよろける様な奴も居るが、端から見る分には圧倒的でみるみるうちに敵が溶けていく。
そして、槍衾。長槍兵は剣盾兵の手前で土鬼達に向かって静かに槍を向けており、近付く土鬼を串刺しにしている。これは残念ながら剣盾兵程敵を倒せては居ない。普通に槍に向かってくる土鬼が殆んど居ないと言うのが事の理由だった。
だが、近付く土鬼に対して、せむしのセム君の号令に的確に従って対処している。十人隊長の言う事を聞くと言う点ではかなりの経験になっているだろう。重装兵は長槍兵の側面と背後の警備だけなので暇そうだ。誰も突破出来ていないのだから……。
――――30分後。
「食事の前には(手を)消毒だ~」
魔法兵達が羊肉のシチューを作り終えた頃には、剣盾兵と長槍兵と重装兵はかなり奥まで進撃していた。一旦休憩と言う事で戦線を後退させて来る……と、逃げ場の無い土鬼達はここぞとばかりに死力を尽くして押し返してくる。もはや後退してるのかさせられているのかも分からない。流石に兵士達も満身創痍な様子だ。慣れない後退攻撃にちょくちょく派手に流血している怪我人が出ている様子も見てとれる。
――――5分後。
後退は長槍兵と重装兵が交互に並んで壁を作りはじめてからはスムーズに行き始めた。剣盾兵は時々飛んで来る投石攻撃に向かって盾を突き出しながらひいひいと入口まで戻ってきた。
ここで弓傭兵の弾幕とチェンジ。40人の弩からなる一斉射撃。前列の土鬼は数匹まとめて吹き飛んだ。
それからは複合弓に切り替えての連射。入口には死体垣が出来た。その死体垣に近付く土鬼に片っ端から矢を射かけて行く。
その隙に社畜隊は食事をとりつつ怪我人の手当てを行う。矢が尽きるまで10分程だろうか、パットミちゃんと魔法兵は配膳に治療にあっちこっちに駆け回っている。
「ルルーシュイン、いけそうか?」
「ああ、今のヒト当てで1000匹強は倒しただろう。弓傭兵も2000匹以上は倒せるだろう。このペースなら次の突撃で最深部まで行ける筈だ。谷の絶壁の上から見た事前の調査では黒い土鬼は僅かしか居なかった。情報通りならこれでどうにかなる筈だが……」
弓傭兵は初めの弩斉射で作った死体垣の上に乗って、土鬼に向かって矢をヒュンヒュン放っている。
矢が尽きる頃に魔法兵の火玉弾とチェンジして、前衛部隊が再突撃で終わりか……。
俺も羊肉のシチューを食べる。んまい、だが少し臭い。肉はキュアスパルタカスの器に入れて馬鈴薯と人参玉葱のみを食べる。……おお。肉無い方が良いんじゃねぇかコレ?
峡谷の奥から「そろそろ矢が尽きる」と声が上がり、魔法兵が飛び出していった。その後をゆっくりとした足取りで前衛部隊が付いていく。
さて、最終決戦と行くか。
俺は3ケツで馬にまたがってその後を追った。
◇ ◇ ◇ ◇
おまけ
『偽天使転生』より抜粋。コーディ山田の自軍の能力分析
ルルーシュイン
統率A+ 耐久A 武力A+ 速度A 魔法A 知識A+
得意武器(薙刀等の長柄武器)
キュアスパルタカス
統率C 耐久A 武力B+ 速度A+ 魔法D 知識E
得意武器(短剣二刀流か長剣二刀流)
黒鋼の幅広中型剣×2・銅の脛当×2
キングコブラ
統率B 耐久A 武力A 速度A 魔法A 知識C
得意武器(何でも)
氷結の長剣・天蓋の盾・腕時計
せむしのセム君
統率B+ 耐久D 武力C 速度E 魔法D 知識D
得意武器(長槍)
元一番手の盗賊
統率C 耐久B 武力C- 速度C 魔法E 知識E
めくらのメッキー(休)
統率E 耐久F 武力F 速度E 魔法A 知識C




