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“偽天使転生”~社畜編集者の異世界成り上がり録~  作者: 林集一
聖の章 EX編 都市国家郡と祈りの道Ⅱ
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第94話 戦後処理その3

 ~於魔法都市グルグル南門付近の宿屋 


「今回の反省?」


「そうだ」


「報告書……と書類……か」


 ルルーシュインから手渡された報告書によると、ルルーシュイン率いる社畜隊に死者は出なかったが……めくらのメッキーとポールダンサー、そして老兵が割りとギリギリな傷を負ったと書いてあった。更に、その病院代と全員分の戦争手当てと壊れた装備の修復代。それらの支払いをすると手持ちの金では赤字になるとも書いてあった。御丁寧に請求書まで添付されている。


「仕方ねぇな」


 俺はその請求先に魔法都市グルグル臨時国王ユータナカと書いた。宿屋の料金もこれで行こう。


「次は……戦争評価か」


 キュアスパルタカスは魔導具の長剣を二刀流で振り回して長槍兵と剣盾兵を合計20人程倒したらしい。その中には十人隊長が2人含まれていた。ルルーシュインも合計20人前後倒していた。ただし、百人隊長が2人、十人隊長が3人も含まれていた。そんで落とし穴と変則槍衾(4人1組隊形)で倒した敵が20人。


 ……とするとルルーシュイン>キュアスパルタカス≧その他社畜隊か。これは恐ろしい。ルルーシュイン曰く、此方が短期集中型の能力付与(エンチャント)を多用していた上に、消耗している兵隊との短期決戦だからこそ連続で20人と戦えたとある。仮に同条件で平野で40対40の同数決戦したら間違いなく全滅するだろうとの御墨付きを貰った。


 だが、訓練を重ねればきっと強くなるとも書いてあった。今後も予算さえあれば行軍の訓練も兼ねて旅に同行させるのも有り……だと。しかし……予算がなー。死の(・・)商人としてテロリスト支援する資金、貰い受けたザコの修繕費、研究費、軍の維持費用、幾らあっても足りねぇ。


 俺は頭を抱えた。



 ◇ ◇ ◇ ◇



「おい、テメー何やってるんだ! いくらなんでも不謹慎だぞ!」


「いやだから風邪気味で……!」


「風邪気味だから何だってんだ! ロンドヴルームから来た連中は喪中も知らんのか!」


「いや、私はマ・ン出身です! と言うか喪に伏してます! ただ風邪気味で……!」


 宿屋の前の喧騒で目が覚めた。射し込む光が朝を告げている。


 俺は裸足のままペタペタと宿屋の玄関口に行き、軒先に首を出す。


「何だ……? うるせーぞお前ら……」


「あっ! 隊長! 助けてください! 少し誤解されてまして……」


「……誤解?」


 話を聞くに社畜隊の長槍部隊の青年がケツの穴に長ネギを刺していたのを魔法都市グルグルの軍人が発見して「喪中にけしからん」となったらしい。付け足して言えば発見した時は「全身からの発汗と疑惑を深める全裸と言う格好。更に顔は程よく赤らんでおり、まさに事後」と言った状態だったらしい。誤解されても仕方ないと言うか本当に誤解だったか非常に怪しい。だが、当人が言うには「マ・ン出身の人なら分かるただの風邪を治すための民間療法」だと言っているそうだ。


 うーん。非常に馬鹿馬鹿しい。確かに昨日兵士が熱が出ただの何だのとは耳に挟んでいたが……。


「ルルーシュインに聞いてみる、待ってろ」


 ルルーシュインを呼びつけて事の次第を話したら「ネギを首に巻くと言うのは聞いた事がある」とは言ったが「ケツの穴に刺すと言うのはマ・ンの名誉にかけて聞いた事がない」との事だった。


 俺もそう思う。


 そいつはキュアスパルタカスの剣盾部隊(神聖隊)にブチ込んでおいた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 そんなしょうもない事ばかり起きた1週間はあっという間に過ぎ去った。やれ、「国王陛下の亡霊が出た」「首無鎧武装(デュラハン)が街をさ迷っている」だのしょうもない噂が飛び交っている。亡霊がさ迷うのは理解出来るが、首無鎧武装(デュラハン)が彷徨いていたら社畜隊の討伐案件だ。街中に居る訳がない。


 ……そして、土鬼(ゴブリン)女王クイーン討伐作戦の日がやって来た。


 ――――於グルグル宮殿。


「まるで生きているようだな」


 首に繋ぎ目の無い人形のような遺体を目にして、率直な感想はそれだった。高貴な人の遺体は葬式に合わせて遺体保護(エンバーミング)されると言うが、これはこれで人形のようにも見える。


「グルグルの技術は素晴らしい。だが、王が居なくてはそれも全て虚しい」


 一言、心からの弔辞を呟いて王様の遺体に触れた。


 ……冷たくて固い。銅像に白粉を塗ったかのように冷たくて固くなった魔法都市グルグルの王様は、1週間後に燃やされると言う最後の仕事を待つのみの状態となっていた。


「悪い奴じゃなかった」


 言い訳のような言葉も漏れる。しかし、王様は俺が殺したようなものだ。俺の、自分の罪を棚にあげた呟きは隣に跪くユータナカに伝わった。


「そうですね。そう正直に言ってくれる友人はコーディ山田さんだけだと思います」


 そう俺に返したユータナカの表情は何故か晴れ晴れとしている。


「悲しくないのか……?」


「国王陛下は死にました。ですが、彼の研究者としての魂はこれからも生き続けるでしょう。私にはこれで十分です。むしろ、御本人が苦痛に思っていた国王としての職務を終わらせてくれた事に感謝しますよ。コーディ山田さん」


 随分とイカれた反応だ。多分、戦争の急激な変化と激務でハイになっているのだろう。俺も1ヶ月の連続出勤デスマーチで経験した事がある。720時間出勤ともなると資料棚の前でしゃがんで資料を広げつつ、床に膝を突いて3分だけ寝るとか器用な事が出来るようになるぞ。


 まぁ、俺の事を気遣ってくれているのだろうな。


「じゃあ、行ってくる」


「行ってらっしゃいませ」


 後の事はユータナカが仕切っているらしい。


 俺はせめてもの償いとして土鬼(ゴブリン)女王クイーン達の殲滅を申し出た。


 ……と言う建前で土鬼(ゴブリン)女王クイーン退治を名乗り出た。


 何てったって費用は全て魔法都市グルグル持ち。まぁ土鬼(ゴブリン)女王クイーン自体は大土鬼(ホブゴブリン)より多少強い程度なので体のいい軍事演習だ。土鬼(ゴブリン)大土鬼(ホブゴブリン)は1日100体前後増えるらしいので、前回の様に万単位で出てくる可能性は低い。後は金色や黒い土鬼(ゴブリン)が残ってなければ此方の軍に人的被害が及ぶ可能性は低い。


 蝉時雨他国の金で軍事演習 コーディ山田


 夏の虫死人の口に綿詰まる コーディ山田


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