魔界探偵所~魔法との出会い~
魔界へと続く道
俺はこの春、桜川高校に入学した。
「光令、おはよう」
「あぁ、拓真」
こいつは俺の友達、サッカーでは全国トップレベルの腕を持つ、鈴木拓真。
「あぁ、拓真、って俺たち小学から一緒だろ。もっとなんかないのか?」
「はいはい、おはよう」
「はいはいって・・・まぁいいけど」
なぜかこいつは何かと俺にかまってくる。
「光令、メシ行こうぜ」
「悪い、今日は無理」
「じゃあ今度な」
「おう」
学校が終わり拓真と別れたあと俺は家に向かって歩いて行った。
その時、ゴツ 「痛い」
何かが俺の頭に落ちてきた。
「赤い・・・ほん?」
その本は、金色の文字でMAGICと書かれていた。
「マジック・・・何だこれ?」
中を見てみると魔方陣と呪文のような言葉が書かれていた。
説明
・この文を読み上げるとき誰もいない所で読むこと
・まず初めに魔方陣にてをかざし目を閉じて次の呪文を唱える
「我はこの本を支配する者 いでよ名を持たぬ者よ」
・これを唱えた者は魔法の力を手に入れる
・そしたら名前を決めること
「魔法の力・・・とりあえず持って帰るか」
俺はその本を鞄の中にしまい、また家へと向かった。
「ただいま」
手を洗って、2階へ向かった。
そして、帰りに拾ったあの本を出してみた。
「唱えてみるか・・・」
「我はこの本を支配する者 いでよ名を持たぬ者よ」
目を開いても何も起きなかった。
けど・・・
「なんか・・・いる」
「こんにちは。」
そいつは小さく、目が青く、髪が長く金色で、羽がはえて、黄色の帯と、水色の和服でとても可愛らしく正座していた。
しかも・・・こいつ・・・喋る・・・
こういう時は意外と冷静だ。
「あの・・・どちら様でしょうか?」
「私は貴方に呼び出されました。名前を決めてください。」
いきなり、なんなんだこいつ
「えっと・・・俺が決めてよろしいのでしょうか?」
「はい、説明にも私は名前がなく、呼び出した者が名前を決めると書いております。」
一瞬間があったが、昔、飼っていた兎の名前が思い浮かんだ。
「えっと・・・涼音なんてどうでしょう」
「すずね・・・素敵です。貴方様の名前は。」
一瞬、戸惑った。変な奴に名前を教えていいのか?この顔で悪用する奴なんていないか。
「俺は、齋藤光令」
「さいとうみのる・・・光令様」
「・・・様なんて、光令でいいよ」
「分かりました。光令。」
「で、良くわからないんだけど」
この状況で、何が起こっているのかわかる人はそう相違ないと思う。
「何がですか。」
可愛く、首をかしげる。
「何がって、この状況が」
やっと分かったようで、パチンと手を叩く。
「あっ、ご説明します。」
しっかりと、説明を受けた。
簡単に説明すると、この本を持った人だけがここに書いてある呪文を唱えることができ、呪文で戦士やらなんやら呼び出すことができるらしい。涼音はこの本の妖精で癒しの力を持ち、本を持った人のお世話係らしい。ちなみに、涼音や呼び出した戦士やらなんやらは本を持ってる人と触った人にしか見えないということだ。
「じゃあ、涼音はずっと俺と居るってことかな。」
「はい、その通りです。」
♦ ♦ ♦
なんてこった。可愛いからいいが・・・しかし
「まさか、学校にも付いてくるとは」
そう、さっきから俺の後ろにしっかり飛んで付いてきている。
「お世話係ですから。」
「まぁ、そうだけど・・・」
「光令、誰とはなしてるんだ?」
「あぁ、聞いてくれよ拓真」
あっ、待てよ。拓真に涼音は見えないんだっけ。ここで妖精とか言ったら頭おかしいと思われる。拓真には悪いがしばらく黙っていよう。
「ん、なんだ光令」
「いや、なんでもない。」
「なんだよ」
「悪い」
「いいってことよ、なんか相談があったら何でも言えよ」
「おう」
「じゃ、帰り一緒に帰ろうぜ」
「おう」
拓真とわかれた後、涼音が。
「言わなくて良かったんですか。」
「今言ったって信じないだろ」
「本に触らせば私が見えますよ。」
自分を指さして言う。
「あっ、その手があった」
だが、なんとなく黙っていたほうがよさそうだ。
その後も、授業中涼音が訓練などなんなのでまったく集中できなかった。挙句の果てには、先生になに喋ってると怒られた。
なんやかんやで学校も終わり拓真と一緒に帰り家へ着いた。また2階へと上がった。
「さあ、光令訓練しましょう。」
「えっ?」
「えっ、じゃありませんよ。訓練です訓練。言いましたよね、戦士を呼び出すには訓練が必要だと。」
腰に手を当て「聞いてなかったんですか?」と少し怒っているようだ。
「あぁ、そんなこと言ってたな」
「では、訓練を始めましょう。まず一番簡単なのから。」
そういって涼音は魔法の本の一番最初のページを開いてこれを唱えてくださいと言っている。まず俺がどのくらいなのか実力を見るらしい。
「放たれし戦士よ我に従いたまえ」
すると魔方陣の中から10㎝程の戦士が出てきた。
「あ~、こんなもんですか。もっと魔力を高めないといけませんね。」
悩んで言う涼音を前に俺は・・・
「あの~、これはなんでしょうか?」
少し、間抜けな声を出した。
「貴方が呼び出した戦士です。」そうはっきり言う。
こいつが戦士・・・そんなに小さな体で、はたして戦士といえるのか。
「今は、こんなに小さいですが光令が魔力を高めることでもっと大きくなりますよ。では、早速魔力を高めましょう。」
面白いな、これ。俺は、少し興味を持った。
「どうやって高めるんだ?」
「椅子に背をつけずに座ってください。」
「こうか」俺は言われた通りに椅子に座った。
「そうです。そして鼻で息を吸って、口ではくのを同じリズムでやってください。」
すると驚くことに俺の体は光っていた。光っていたというか、光の粒がいくつも放たれていた。
「いいですね。呑み込みが早い、そのまま続けてください。」
「おっ、おう」
なんやかんやで俺は、これが日課になり毎日一時間これを続けた。そして、一週間くらいたった頃。
「光令、魔力が高まったんではないでしょうか。」
「そういえば、最近楽だし、体が軽い気が・・・」
ホントに前より断然元気だ。クラスの女子にも「光令、最近元気だね。彼女でもできた?」と言われたくらいだ。
「おぉ、ではまた呪文唱えてみてください。」
「分かった。」
「放たれし戦士よ我に従いたまえ」
すると前よりも断然大きくなった剣を持った戦士が立っていた。俺は、180㎝あるが俺とほぼ変わらないくらいになっていた。
「ずいぶん成長しましたね。」
「驚いた。あの訓練でこんな風になるのか」
俺は、価値のある壺を見るような目でそいつを見た。それにしても・・・動かないなこいつ。少し突っついてみる。
「こいつ、どうやったら動くんだ?」
「貴方が、危険にさらされたときに助けてくれます。」
「危険って、そんなことめったにないだろ」
「貴方は何を言ってるんですか。この本を持った時点で、貴方は今まで見えないものが見えるようになったのです。つまり、悪魔も見えるようになったし魔界へも行ける。貴方にとって危険がコロコロ転がっているようなものです。」
・・・?何を言っているのか、まったくわからない。
「ちょっと待て、悪魔、魔界・・・何のことを言ってるんだお前は!?」
「説明してませんでしたね。」
また、本を説明するときのように長々と・・・
涼音によると、この本を持ったら、今まで見えなかったのが見えるようになりすると人間なので襲われるらしい。襲ったやつは大体、悩みがありそれを解決してほしんだとか。魔界というのは、悪魔やらが住んでいてこの本を持っているやつは出入りがいつも可能で、魔界に行くには呪文を唱えれば行けるらしい。
「では、その戦士を連れて魔界に行きましょう。そのくらいの戦士がそばにいれば襲われることもないでしょう。この呪文を唱えてください。」
そう言って涼音は本の一番最後のページを開いて、「これですこれ」と言って俺に渡してきた。
「ほんとに大丈夫なんだろうなぁ」
俺は呪文を唱えた。
「開け我の通る道 悪の者たち道を開けよ」
すると、目の前が真白くなり、目が開けられないほど光った。一瞬静かになったと思ったら、少しずつ騒がしくなっていった。ゆっくり目を開けると、そこは・・・
「なっ・・・なんだここ」
そこには、人間ではない者、つまり角が生えていたり、羽が生えていたり、人には付いていないようなのがついている。まさに、悪魔。建物も煉瓦でできていて、俺が住んでいたところとは別世界だった。
「無事、着きましたね。」
「ここは・・・どこだ・・・?」
驚きを隠せないまま涼音に尋ねた。
「光令、ここは魔界です。」
「まかい・・・」
「はい、魔界です。」
そうやって、笑顔で言う涼音。少し怖い。
ここが魔界・・・信じれないがこんな光景を見たら誰だって信じるだろう。
「早速、ぶらぶらしましょう。」
「あぁ」
言われるがまま俺は、涼音について行った。
隣にはちゃんと戦士もついてきている。動くんだな。
「しかし、ほんとにこんな世界があるとはなぁ」
涼音はどんどん進んでいく。
「涼音待てよ、どこ行くんだよ」
「もう少しです。」
そう言ってまたどんどん進んでいく。そして、五分ほど歩いたところで涼音は止まった。
「ここです。」
そこは、煉瓦造りでとてもお洒落な二階建ての建物だった。
「ここは、なんだ」
「ここは貴方の仕事場です。」
「仕事場ってなんだよ」
「貴方はその本を使って悪魔などの相談を受けてもらいます。」
「相談って、なんでだ?」
「貴方が本を拾ったからです。」
「それだけで」
「はい。」
「でも俺は高校生で、俺が長くいなかったらいろいろ問題になるぞ」
「大丈夫です。」
「なんでだよ」
「魔界の一日は、貴方の住んでいる世界の一分にすぎません。」
「いっ・・・ぷん・・・」
「はぁ。拾わなければよかった。嫌だって言ってもダメだろ」
「はい。それに、本を拾ってしまったら逃げられません。」
どうせやるのなら、断るだけ無駄だ。
「分かったよ」
素直に、受け入れることにした。
「では、中に入りましょう。」
中に入るとちょうどいい温度が全身を包みこんだ。木でできた床に煉瓦造りの暖炉があり、壁一面に背の高い本棚がぎっしり詰まってとてもお洒落で落ち着く。
が・・・
「なんで、本棚以外家具も何もないんだ」
そう、そこは本棚と暖炉以外何もなく、テーブルや椅子もなく、殺風景だった。
「なので、準備をするのです。」
「準備くらいしろよ」
「すみません。」
「まぁ、いいが。どこで家具を揃えるんだ?」
「私にあてがあります。」
「じゃあ、早速行こう」
「はい。」
涼音は外へ飛び出していった。そして、涼音についていくこと三分、さっきの家と似ているが、デカい家についた。
「ここは、家具を沢山売っているお店です。」
「へぇ、魔界にもそんなのがあるんだ」
「はい。他にも日用品や食料を売っているお店もあります。」
「いろんなのがあるんだな」
中に入るとそこには、沢山の家具が置いてあった。木でできた落ち着いた家具がきれいに並べられていた。その中でも俺が気に入ったのが、部屋の端にあったチョコレート色みたいな丸テーブルだった。
「あれが気に入りましたか。」
「なんか、いいなって思って」
「じゃあ、あれにしますか。」
涼音はここの髑髏の店員に「これください。」といって机に合う椅子も四脚と同じ色の食器棚を買った。
「こんなに買って運べないよ」
「だから、本を使うんですよ。」
涼音は真ん中ぐらいを開いて、「これを呼んでください。」と言った。
「我に使いし車輪よ来い」
すると、荷車みたいなのが出てきて低い声で喋る。
「お荷物をこちらに」
「あっ、はい」
そして、その荷車は俺の仕事場につくと煙を出して消えていった。
「ありがとう」
その荷物を部屋に置いた。
「いい感じ、だな」
「はい、だいぶ良くなりましたね。」
涼音は「そうだ。」と言いながら何やら看板みたいなのを出してきた。
「なんだそれ」
「見ての通り、看板です。これを早速お店前に飾るんです。」
「今日から始めるのか」
なんか、いきなりだな。まあいいが。
「はい。沢山相談に乗りましょうね。」
「うん」
「光令は、珈琲入れられますか。」
「うん、入れられるよ」
父が珈琲を好んで飲むので、いつも入れている。
「では、お客様が来たら入れてください。道具は食器棚にありますので。」
「分かった」
「では、オープンですね。相談料は五百ルーツにしましょう。」
「ルーツってなんだ?」
「ルーツは魔界のお金です。」
「これです。」
涼音が取り出したのは、ドクロマークの丸い鉄の何かだった。
「へぇ~、面白い」
「解決したらプラス五百ルーツにしましょう。」
「結構とるんだな」
しっかりしてるのか、せこいのか・・・
「じゃないと生きてけません。」
そう言って部屋の掃除を始めた。
「あぁ、光令がいないときは、その戦士に店番を頼みましょう。なので名前が入りますね。」
最近、名前を何回もつけてる気がする。何回もと言っても一回だが。
「じゃあ、ロビン」
瞬時に思いついた言葉を口に出す。
「・・・ロビン・・・なぜですか。」
「なんとなく」
「まあいいですけど。」
「涼音、その顔やめろ」
涼音は、俺の方を見て「センス悪い」とでも言うような目で見ている。
「じゃあ、ロビン留守のときは頼みました。」
ロビンはカチャと音を立てうなずいた。やっぱり喋らないんだ・・・
「でも、客なんて来るのか」
カラン、それを聞いていたかのように、タイミングよく扉が開いた。俺は、反射的に。
「いらしゃいませ」
なんといっても店だから・・・一応・・・
そこには、一人の女性・・・が立っていたが・・・透けていた。まるで幽霊のようだ。
「幽霊ですよ。」
「えっ」
俺の心を見抜いたようにそういった。
「忘れたんですか。ここは魔界です。幽霊がいてもおかしくありません。
ちなみに幽霊とは、古くは、何かを告知したり要求するために出現するとされていました。しかし、その後次第に怨恨にもとづく復讐や執着のために出現しているとされ、凄惨なものとなりました。
「いくさ死には化けて出ない」との言い伝えもありますが、平家の落ち武者や戦争での戦死者のように、死んだときの姿のまま現れると言われる幽霊も多く、幽霊の多くは、非業の死を遂げたり、この世のことがらに思いを残したまま死んだ者の霊です。その望みや思いを聞い・・・。」
説明が異常に長いのでスルー・・・
しかしそうだった、すっかり忘れていたがここは魔界だった。
「あの・・・」
その幽霊は、弱々しく喋った。
「あの、相談で・・・」
そうだ、相談を聞かなければ。俺は慌てて。
「はい、どのようなご相談で」
「その前に、五百ルーツ頂きます。」
今かよ・・・
「あっ、はい」
うちの涼音がすいません・・・
幽霊はがまぐちの財布から五百ルーツを取り出した。
「はい、どうぞ」
「ちょうど、頂きました。」
しっかりしてるな。気を取り直して。
「どのようなご用件で」
「はい、えっと・・・会いたいんです」
会いたい?いったい誰にだろう。
「誰にですか」そう聞いてみたが。
「分かりません」
「えっ・・・?」
「名前を知らないんです」
「えっと・・・そしたら会えませんが・・・」
「人間なんです。男性で三十代で・・・」
「はぁ・・・なぜ会いたいんですか?」
「えと・・・私が生きているときにそのお方にぶつかりまして・・・一目ぼれでした。それで・・・成仏できなくて・・・その人に会えば成仏できると思うんです」
「・・・わかりました」
「あっ、ありがとうございます」
「少々お待ちください」
俺は、席を立ち涼音のところに向かった。
「涼音、人探しできるやつこの本の中にいないか?」
「いますよ。」
「ほんとか」
「はい」
そう言うとここと、ここを読んでくださいと渡してきた。
「者の記憶を辿る者いでよ」
すると、帽子と魔女のような恰好をした女性が出てきた。
「この者は、記憶を辿り映像や写真にできます。」
「我の使い人を探す者よ出てこい」
こんどは、いきなりの突風が起き白い紙がとんだ。
「この者は、指示したものを探し出すプロです。この二人をうまく使って、そのひとを探し出しましょう。」
「おう」
また、俺は席に戻ると
「では、貴方の記憶を辿りどんな人か見ます。目を閉じてください」
「はい」
「あとはたのんだ」
「了解した」
すると、魔女は杖を幽霊の頭にかざし「この人だな」と言ってプリントして消えていった。
「この人ですか」
「はい。そうです」
「この人だそうだ。探してくれ」
紙たちは、okと文字を作り外へ飛んで行った。
「明日には、みつかると思います」
「ありがとうございます。また、明日来ます」
「えぇ、お願いします」
幽霊は丁寧にお礼をして出て行った。
「涼音、この本すごいな」
「はい、ほかにもたくさんいますよ。これからたくさん出会いますよ。」
「そうか、早く会いたいな」
他にどんな奴がいるんだろう。
しばらくして、バサバサ音を立てて、紙が戻ってきた。
「あっ、紙たちもう見つかったんだ」
「その様ですね。明日、情報を渡しましょう。」
二階へあがり寝床へついてぐっすり眠った。俺は、この時あんなことが起きるなんて思ってもみなかった。あんなことが・・・。
♦ ♦ ♦
「おはよう」
「おはようございます。よく眠ってましたね。」
俺は、起きた。昨日は疲れてすぐにねっむたようだ。
カラン
「あの・・・」
そこに、昨日の幽霊が立っていた。
「あぁ、昨日の・・・あの、お名前は・・・」
「あっ、えっと・・・百合と申します」
「百合さん。あれ・・・なんか若干黒くなってませんか」
昨日の透明さはあまりなく、少し黒ずんでいるような・・・
「そうですか」
「いや、気のせいです。失礼しました」
「いえ、そうですか。それで・・・」
「あぁ、はい。早速見つかりました」
「本当ですか?」
目を輝かせながら、俺を丸い瞳で見つめてきた。
「はい。名前は、佐藤幸地。弁護士をやっている四十代です」
「ゆきちさん・・・」
「会いに行かれますか」
「はい。もちろん」
百合さんは、首を縦に振った。
「では、行きましょう」
勢い良き立ち上がる。
「はっ、はい」
百合さんが少しふらついたので俺が支える。
「どうされました?」
今なんか、黒い影が見えた気が・・・気のせいか
「だっ、大丈夫です。疲れちゃって」
「無理なさらずに」
「はい」
「では、行きましょう」
「光令。」
涼音が俺を呼んだ。俺は、百合さんに待ってもらって涼音に近づく。
「なんだ」
思わず小声になってしまう。
「百合さん、やばいかもしれません。」
「なんでだ」
「少し黒くなっているの、分かりましたか。」
「あぁ、昨日よりもな」
「怨霊化してるんではないでしょうか。」
「おっおんりょうか・・・なに言ってんだ」
「怨霊化とは・・・」
涼音が説明する前に百合さんが・・・
「うっ、うわー」
「百合さん、どうした・・んで・・すか」
百合さんが黒い靄に包まれたかと思ったら目が赤く光った。すると、俺の方に向かって闇の手が・・・寸前で除けたがこいつを抑えるには・・・
「うっ、涼音どうすればいい」
俺は必死に叫んだ。
「本です。本を使うんです。」
涼音は本を俺に投げた。
「ロビンを呼んでください。」
「放たれし戦士よ我に従いたまえ」
光とともにロビンが現れた。そして、腰についている銀色の剣を手にし、黒い闇を打ち切った。
シュ~っと音を立て黒い闇が百合さんのもとへ戻っていった。百合さんは、床に倒れこみ、そのまま気を失った。
「なんだったんだいまの・・・」
呆然と立ちすくむ俺に、涼音は
「怨霊・・・」
「おんりょう?」
「怨霊は、憎しみや怨みをもった人の生霊や、非業の死を遂げた人の霊で、これが生きている人に災いを与えるとして恐れられています。
霊魂信仰の考え方では、霊魂が肉体の中に安定しているときその人は生きていられる、と考えていて、怨みや憎しみなどの感情があまりに激しいと、霊魂が肉体から遊離して生霊となり災いを与えるらしいです。
怨霊化とは、幽霊になれる時間は決まっていて、それを過ぎてしまうと怨霊になってしまうんです。いきなりなるのではなく、あのように徐々に闇が覆っていくのです。」
「じゃあ、百合さんはどうなるんだ」
「このままいけば、怨霊として人間界にいき人を襲うでしょう。」
「なに、どうやれば成仏できるんだ」
「百合さんの願いをかなえるしかないですね。」
「願いって・・・あの幸地って人に会わせるのか・・・」
「はい。あの様子だと三日持つかぐらいでしょうか。」
「すぐに会わせなきゃ」
急いで百合さんを起こしに行った。
「百合さん、百合さん」
百合さんはうっすら目を開けた。
「・・・わっ私・・・」
百合さんは、飛び起きた。
「よかった」
「あの、すいません」
百合さんは正座し必死に誤っている。さっきのことだろう。
「大丈夫ですよ」
俺は、にっこり笑った。
「私・・・どうなっちゃうんでしょう?」
心配そうにつぶやく百合さん。
「大丈夫です。会いに行きましょう、幸地さんに」
「はい」
そう言って俺たちは人間界へ向かった。
「あの人がそうです」
眼鏡をかけた爽やかなスーツ姿の男性だった。
「幸地さん」
百合さんは幸地さんのもとえかけより抱き着こうとしたが・・・すり抜けた。
いま百合さんは、幽霊になっているので物にも触れない、ましてや人に触るなんて・・・できない・・・
「百合さん・・・」
俺はなんて言えばいいのか迷い、何も言えなかった。百合さんは振り返り微笑んだ。
「分かってました。あっても見えないと・・・いいんです。そういう運命なんです」
百合さんは心から残念そうだった。俺は何もできない俺が憎らしかった。何ができるか俺は、精一杯考えた。
「百合さん、待っててください」
いい考えが思いついた。
「えっ?」
俺は、百合さんにそこで待つように言って、幸地さんのもとに急いで駆け寄った。
「貴方に会いたい人がいるんです。この本に触れてきてください」
「私に、会いたい・・・人?」
「そうです」
俺は、幸地さんを正面から見つめていると・・・
「分かった」
幸地さんは戸惑っていたが素直に触れ付いてきてくれた。
「幸地さん・・・私が見えますか・・・」
「どうして私の名前を・・・」
幸地さんが不思議そうに俺の方を見る。が、また百合さんをみた。
「私のこと覚えてますか?」
「・・・すみません」
少し戸惑いつつ答えた。
「いいんです。私の一目惚れですから」
少し悲しそうに、そう言って百合さんは立ち去ろうとした。
「あの待ってください、もしかして・・・ぶつかったときの」
「はい。覚えててくれたんですね」
本当にうれしそうだった。
「俺もダメだなこんなきれいな人忘れるなんて」
幸地さんは、微笑んだ。
「いえいえ、綺麗なんて」
そうして、二人は少しの会話を交わし。
「今日は、ありがとうございました」
「こちらこそ、また会えますか」
「・・・遠くに引っ越すことになって」
「そうですか・・・」
「今日は、楽しかったです」
百合さんは幸地さんのもとを離れた。
「百合さん・・・」
「あれで、良かったんです」
百合さんの目からゆっくり水が垂れる。きれいに光っていた。
「あっ、百合さん体が・・・」
百合さんの体が綺麗な光の粒となってだんだん薄れていく。
「ありがとうございました」
百合さんは、優しく微笑んだ。
綺麗な人だ、そう思った。
「こちらこそ」
そう言って、百合さんは天に消えていった。もう会うことはないんだと、少し残念に思った。
俺は魔界に戻って涼音と一息ついた。
「きれいだったな、百合さん」
独り言だったが、涼音にも聞こえていたようだ。
「えぇ、とっても。あっ」
何か忘れていたようで、涼音は大きな声を出した。
「いきなりどうした」
「解決料五百ルーツもらうの忘れました。」
おいおい、せっかくいいとこだったのに・・・台無しだ。
「何だそんなことか」
「そんなことって。じゃあ、もっと働いてもらいますよ。」
仕方ない。
「分かったよ」
そして、俺は魔界相談所を作った。
人間界に戻り、涼音を肩にのけて一息ついたところに、一人の女の子が通った。
この子一組の・・・
「あの、肩に乗っているのは・・・」
俺は目を見開いた。もちろん涼音も。
「こいつが見えるのか・・・」
「はっ、はい」
「なんでだ・・・?」
こいつは、俺にしか見えないはず。なんでこの子が見えてるんだ・・・
「私、みんなに見えない者が見えるんです。」
目に見えないって、涼音のことか。
「貴方は、二組の齋藤光令君ですよね。」
「あの、貴方は?」
「私は、須加真理です」
「すがまり・・・」
「はい」
「なんでこいつが見えるんだ?」
「そういう家系で、昔から見えるんです」
「そういう家系?」
「聞いたことがあります。でも確か・・・かなり前に途絶えたはずですが・・・」
「私は、その祖先です。まだ完全には途絶えてないので・・・」
「不思議ですね。じゃあ魔界にも行ったことがあるんですか?」
「えぇ、父に連れられて一度」
「へぇ、お父さんも見える人なんだ。俺、魔界で相談所をやってるんだ」
「面白そうですね」
「そうだ、光令。」
「ん、なんだ」
「真理さんに相談所を手伝ってもらうのはどうですか。」
「なにいてるんだ」
突然、迷惑だろ。
「いいですよ」
簡単に引き受けてくれた。
「え・・・いいのか」
「よかったですね、光令。」
「本当にいいのか!?」
いまだに信じられない。ちょうど仕事仲間がほしいと思ってたんだ。
「はい、なんか楽しそうです」
「でも、魔界に行けるのか?」
「はい、魔方陣を書けば行けます」
「そうなんだ」
「では、今日は一緒に行きましょう。」
「一緒に行けるのか?」
「行けますよ。魔方陣を書いてそこに乗り呪文を唱えれば。」
「そうなんだ」
初耳だ・・・拓真も一緒にいつか行けるかな・・・ふとそう思った。
「早速行きましょう。広いとこがいいですね。」
「じゃあ、公園にしようぜ」
俺たちは、学校の近くの公園に行き魔方陣を書いた。
「じゃあ行くぞ」
「はい」
「開け我の通る道 悪の者たち道を開けよ」
すると魔方陣が緑色の粒を放ち、幻想的な世界を作り出した。あたりが暗くなったかと思うと、騒がしくなり、あの魔界に着いた。
「久しぶりに来ました」
「お父さんとはもう来ないのか」
「お父さんは、もうずいぶん前に天国へ・・・」
「なんか、ごめん」
「いいんです。そういえば、相談所の名前ってなんていうんですか」
「・・・決めてないな。決めていいよ」
「私がですか・・・」
「うん」
しばらくして真理さんは。
「魔界探偵所なんてどうでしょう」
真理さんは可笑しいですよねっと言っていた。
「いいとおもう。なぁ涼音」
「はい。」
「いんですか」
「いいだろ」
「看板に書いておきますね。」
「たのんだ」
そうして歩いているうちに魔界探偵所についた。
「ここだ」
「素敵なところですね」
「うん、俺も意外と気にってる」
「学校の制服ってあいませんね。」
「確かに」
「お店の制服を作りたいですね。」
「あの、私作りましょうか?」
「作れんのか!?」
「はい」
「すげぇ」
「デザインをいま、書いてもいいですか?」
「うん」
二人で椅子に座り真理さんはデザインを描き始めた。俺はそれをみてるだけ。その間にも真理さんは、どんどん書いていき十分ほどで完成した。
「できました」
「見せて見せて」
「どうぞ」
「おぉ、すげぇ」
それは、中国の「海南航空」のような制服で、真理さんの方は、ひざ丈のチャイナドレス風ワンピースのベースカラーは白。配色は上品な青で、ところどころに赤い模様も見える。袖部分は肘までの長さでエレガント。薄いグレー、ジャケット、コートのデザインが非常にシックだ。
俺の着る方は、色が真理さんが着るのと一緒で、薄いグレー、詰襟のジャケットとパンツという東洋エッセンス多めな仕上がりだがコートは洋風になっていて、とてもかっこいい。
ついつい見入ってしまう。
「すごい才能だな。これ、ほんとに作れるのか?」
「いえいえすごいなんて、涼音ちゃんに合わせて和風のような感じにしてみました。作れますよ、明日くらいなら」
「あした・・・」
どんな腕の持ち主なんだよ・・・
「はい、今からつっくれば」
「まじか、すごいな」
「作ってきます。また明日ここで」
「おっ、おう」
すごい張り切ってたな。
「よかったですね。」
「そうだな」
♦ ♦ ♦
そうしてまた、魔界探偵所に行くとそこには、マネキンと昨日見た服のデザインがそっくりそのまま立体になっていた。
「すごい、もうできたんだ」
「はい。どうでしょう」
「すごくいいよ」
「ありがとうございます」
涼音が早速着てみろというので、二人は早速着替えた。
「二人とも似合ってますよ。」
確かに真理さんは、顔も整っているのでとても似合っている。
「真理さん、似合っていますよ」
「真理でいいですよ。光令さんも似合ってますよ」
「俺も、光令でいいよ」
「分かりました」
二人とも微笑んだ。
「さあ、開きますよ。」
涼音は看板を出した。
これから、新しい仲間と仕事ができるうれしさを感じた。
「沢山相談に乗ろりましょう。光令」
「うん」
だいぶ打ち解けてきた。これから、どんなことが待ち受けているのだろう。どんなことがおこっても大丈夫な気がする。
カラン。
「光令、真理、お客さんが来ました。仕事です仕事。」
「いらしゃいませ。魔界探偵所です」
そこには、角をはやした骸骨がいた。
「あの、頼みたいことが・・・」
多少驚いたが、気を取り直して。
「どうぞ、お座りください。今、珈琲を入れてくるので」
カウンターに向かい、珈琲を入れた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「で、相談とはなんですか?」
「万引きです。私は書店を営んでいるんですが、最近万引きが多くて困っているんです」
「それで、その万引きを捕まえてほしいと」
「はい・・・」
見張りとかするのかな・・・何か、探偵っぽい。面白くなってきた。
「分かりました」
「ありがとうございます」
「早速、案内してもらえますか」
「はい。こちらです」
魔界相談所はロビンに任せて、俺たちはその書店に向かった。
「素敵なところですね」
そこは、つたが家に巻き付いていてとてもお洒落なとこだった。
「ありがとうございます」
「中に入ってもいいですか」
「どうぞ、お入りください」
「失礼します」
当たり前だが、本がたくさんあった。小説、魔法書、漫画、雑誌、いろんな種類の本だった。魔界にもいろんな本があるのが意外だった。
「おもに、魔法書が盗まれていましてね」
「魔法書・・・」
「魔法書とは、グリモワール、フランス語で魔術の書物を意味し、特にヨーロッパで流布した魔術書を指します。グリモワ、グリモアとも表記されます。奥義書、魔導書、ともいい、類義語に黒本、黒書があります。」
涼音が、丁寧に説明してくれた。
「いつ頃、盗まれるんですか?」
「なぜか、いつも土曜や日曜でして」
「けんとうはついているんですか?」
「いいえ、まったく」
「土日、見張らせてもらってもいいですか」
「もちろん」
そうして、俺たち三人は交代で見張ることにした。
「じゃあ、今日は俺で。涼音、真理、店番頼んだ。」
「了解」
「了解。」
魔法書の分類を見るようにして、こっそりあたりを見回す。周りには、眼鏡を掛けたスーツ姿の・・・骸骨・・・さすが魔界。それと親子ずれ・・・の・・鹿。さすがしか言えない。
「でも、変わった様子はないなぁ」
骸骨も、鹿も本を静かに読んでいる。
そこへ、フードをかぶった、小さな人魚みたいな子供が来た。その子は、あたりを見回した。あやしい。観察をしてみたが、その子は何も取らずに出て行った。
「さすがに、子供はとらないよな」
日曜日またその子が来た。が、何も取らなかった。
「来週は真理な」
「はい」
見張りの終わった真理は、俺に報告をした。
「人魚の子が少しおかしかったですが、他は何も異常なしです」
「人魚また来てたのか」
「人魚は、人間の上半身と魚の下半身を持ち合わせる生物でして。 人間と同じく男女の別があり、男の人魚をマーマン女の人魚をマーメイドと呼びます。
諸説ありますが、西洋ではギリシャ神話に登場するセイレーンやトリトン、海のニンフであるネレイドなどの精霊や妖精などがその源流と言えます。」
「へぇ。今度来たら話しかけてみるか」
「そうですね」
次の日曜日、また俺たちは見張った。
「人魚来たぞ」
そこには、いつもの子供人魚だった。
「話しかけるか」
その時、人魚はあたりを見渡し手に取っていた本を鞄の中にこっそりしまった。
「あっ」
とても速い技で、慣れているようだった。
「見つけましたね」
「早速、声を掛けましょう。」
俺たちは、人魚にちかづいた。
「その鞄の中、見せてもらえるかな?」
俺は、怖がらせないように、その子のフードをとった。とても美しく人魚だった。が・・・
顔には切り傷があった。
「ごめん」
少し気まずくなった。
「いいの。本は返す」
悪いと思ってるようで、今にも泣きだしそうだった
「なんでこんなことしたの?」
少し間があって。
「わたし、こんな顔でしょ。だから、学校にいけないの。」
学校に行ったら怖がられるのか。
「この傷ね、人間につけられたの。人魚の血は永遠に生きられるんだって。でもね、わたし、お勉強したいの。」
「じゃあ、お金を払わなきゃ」
「わたしのお家、お金がないの。だから・・だから・・・ごめんなさい」
ついに、泣き出してしまった。
「つらかったな。じゃあ、俺んとこ来るか」
「えっ」
「俺も、今学んでるから、一緒にお勉強しよう。魔法のこと」
「いいの?」
「うん、その本は俺が買う」
「それはいいですね。」
「だろ」
店長に事情を説明すると快く許してくれた。
「お兄ちゃん、ありがとう」
「いいんだ。名前は・・・」
「わたし、メロウ」
メロウ・・・涼音がまた説明をしている。
「メロウは、アイルランドに伝わる人魚で、姿はマーメイドに似ており、女性は美しいが、男性は醜いという。この人魚が出現すると嵐が起こるとされ・・・」
説明が長そうなので・・・聞かないでおこう・・・
「素敵だね」
俺は、微笑んだ
「うん、お母さんが付けてくれたの」
「お母さんはどうしたんだ」
「人間にその・・・」
「分かった。言わなくていい」
血を取られたんだろう。可愛そうだ。
「バイバイ」
メロウは元気よく手をふり、別れた。
♦ ♦ ♦
「光令。今日飯行こうぜ」
「悪い」
「いつもそうじゃん」
「悪い、また今度」
俺は、鈴木拓真。友達の光令は最近付き合いが悪い。
仕方ないので、俺は一人で帰った。すると目の前に黒い猫が現れた。
「野良猫か?」
猫は座り、こっちに来いと言っているようだった。近づいてみると。
いきなり猫は、黒い煙へと姿を変えた。
「うわ~」
その煙は、口の中へ入っていた。
それからの記憶はない。
「ここは・・・母さん!?」
いつの間にか、病院で寝ていた。
「あっ、起きたのね」
「俺、どうしたんだ?」
「道で倒れてたんですって」
「野良猫は!?」
「野良猫?」
「いやなんでもない」
あの黒いのは・・・夢だったのかな?
「異常は無いから、もう退院していいって」
「うん」
♦ ♦ ♦
拓真が倒れた。俺は、病院へ走って行った。
「拓真っ。大丈夫か」
勢いよくドアを開けた。
「光令。明日退院だよ」
「よかった」
本当に安心した。
「俺の為に・・・ありがとう」
拓真が抱き着こうとしたので、ひらりと交わした。
「相変わらずひでぇ」
二ッコリ笑って見せた。
「大丈夫そうでよかった」
「お前が、齋藤光令か」
いきなり拓真が低い声で言った。
「どうした?拓真?」
拓真がおかしい。
「光令。こいつ拓真さんじゃないです。」
「はぁ?」
「悪魔です。拓真さんに取り付いてます。」
「なに!?」
「悪魔!お前の名前はなんだ。」
「我の名はサタナキア」
「サタナキア・・・」
「誰なんだ!?」
「サタナキアは、プート・サタナキアとも呼ばれます。18世紀頃に民間にるふしたグリモワールの1つで『真正奥義書』によれば、サタナキアはルシファーの配下の悪魔であり、ルシファー、アガリアレプトとともにヨーロッパ・アジアに住まい54の悪魔を従えているという伝説です。」
「どうすれば、拓真から離れるんだ」
「しばらく、この体を借りる」
「困る!返せ!」
「どうした?光令」
どうやら元に戻ったらしい。
「ずっと体を操る力はまだないようですね。」
「よかった」
「さっきっから何言ってるんだ」
「いや、なんでもない」
「光令。話してくれよ。俺、光令の友達だろ」
真剣な目で問いかけられ、言葉に詰まった。
「友達って思ってたの俺だけか」
「いや、拓真は友達だ」
「じゃあ信じてくれよ」
「分かった。全部話すよ」
そして、あの赤い本に触れさせた。
「こいつが見えるか?」
「み・え・・る」
拓真は、目をこすり、目を見開いた。
「こんにちは。涼音です。」
「こっ、こんにちは」
「驚かずに聞いてくれ」
俺は、拓真に今までのことをすべて話した。
「つまり、俺は今取りつかれてる?」
とても驚いているようだ。
「信じてくれるか」
「信じるも何も涼音が見える時点で信じる」
「だよな」
「で、俺はどうすればいい」
「分からん」
「なに」
「まだ様子見だ」
「分かった」
「なとっくしたか?」
「いや」
「だよな・・・」
二人とも吹き出してしまった。
「涼音が、サタナキアについて調べてくれるから」
「分かった」
「これが、解決したら魔界探偵所で働かね?」
「いいのか」
「どうぞ。人数が多いほどいいです。」
「後で、真理も紹介するよ」
「分かった」
「じゃあ、明日公園でな」
「おう」
次の日、授業が終わった後すぐに例の公園へと向かった。真理には、事前に伝えてある。もう二人とも着ていた。かなり打ち解けたようで安心した。
俺に気が付いた二人は手を振る。
「ごめん、お待たせ」
「大丈夫」
「じゃあ行くか」
「うん」
魔方陣を書き、呪文を唱える。
「開け我の通る道 悪の者たち道を開けよ」
視界が開き見慣れた風景が広がる。
「すっげ~」
そう声を漏らしたのは、拓真だった。
「ここが魔界?」
「そうだよ、面白いだろ。俺も最初は、驚いた」
「あぁ」
あまりに驚いているようで口が空いてる。
「行こうぜ」
「あぁ」
拓真は、あたりをキョロキョロ見ながら歩いている。
「前を向け、前を」
「光令と拓真は仲がいいんだね」
「そうか?」
「うん」
「まあ、小学生からの付き合いだからな」
「なぁ、光令いつ着くんだ?」
「もう着いたぞ」
「ここか?入っていいのか?」
「どうぞ」
「お邪魔しま~す」
入った瞬間、拓真は「すげぇ」と声を漏らしていた。
「光令、これ制服か?」
手に取ってまじまじと見つめる。
「そうだよ」
「あの、拓真の分も作ってきた」
「マジで!?」
「うん、これ」
「うれしい。もうきていいのか?」
「いいよ」
「二階借りるぞ」
「いいよ」
そう言うと拓真は、ダッシュで二階に上がり着替えに行った。五分ほどたって拓真が降りてきた。
「どうだ」
似合ってる。拓真は顔も整っているし、俺より低いが身長も178㎝とあってとても似合っている。
「似合ってるよ」
「あぁ、ホントに似合ってる」
「マジ。ありがとう」
「では、本題に入りましょう。」
落ち着いだ感じで言う涼音。
「了解」
「拓真、取りつかれた時のことを話してください。」
「分かった」
拓真は、黒い猫のことなどを話した。
「それで、意識が無くなっていたと。分かりました。」
俺は、少し心配になってきた。
「拓真は、大丈夫なのか?」
「分かりませんが、このままだと危ないかもしれません。」
「俺、どうなるんだ?」
「何とかします。」
「なんとかって、どうやって」
「調べてきます。」
「どこで?」
「魔界図書館があります。」
「そんなのも魔界にあるのか」
「はい。皆さんも行きますか?」
「もちろん」
「電車で行きましょう。」
「電車もあるとは・・・」
駅に着いた。ほんとにあった。
「ここ駅か?」
「はい。」
当たり前だが、電車が走っているが・・・走ってるのは線路じゃなく・・空!
「なんで空を走ってっるんだ?」
「魔界なので、なんでもありです。」
「そうだが・・・理由になってない。」
「いいじゃないですか。行きましょう。」
俺たちは電車に乗って・・・空を飛んだ。
「魔界図書館前~魔界図書館前~」
電車のアナウンスを聞くと、すぐ俺たちは降りた。
「ここです。」
そこは、まるでフランスにある「フランス国立図書館 リシュリュー館」のようだ。
説明
「フランス国立図書館 リシュリュー館」とは、シャルル5世の王立図書館を起源とする、フランス・パリにある公共図書館。1854~75年に建て替えが行われたリシュリュー館は現代的な建材である鉄を使いながらも、教会をモデルに作られたらしい。
円窓が十六あり、それを支えているのはイオニア式柱頭のある鋳鉄製の十六本の柱。もともとリシュリュー館にあった所蔵品は、1996年に作られた新館「フランソワ・ミッテラン図書館」に移されており、いまこの図書館に収蔵されているのは印刷技術発明前の写本から現代作家の原稿、フランス王室由来のコレクションなどが中心となっている。
また30~50年の周期で時代のニーズに合うように改築されるのがこの図書館の伝統だという。
誰に説明してるんだ・・・俺は。
「すごいな、ここ」
「はい。魔界一ですから。」
「そうなんだ」
「ここで、悪魔サタナキアのことを調べましょう。」
ここから、サタナキアのことについて調べる作業が始まった。
「あったか~?」
「ない」
「そちは?」
「ない」
涼音の方を聞こうとする前に涼音が・・・
「ありました。」
「なに!」
「ここです。」
開いたページには、こう書かれていた。
サタナキア
魔術や悪魔学に関して記したグリモワールと呼ばれる一連の文献においてその名前が見られる。プート・サタナキア(Put Satanachia)とも呼ばれる。
『真正奥義書』によれば、サタナキアはルシファーの配下の悪魔であり、ルシファー、アガリアレプトとともにヨーロッパ・アジアに住まう。
また、『大奥義書』におけるサタナキアは、地獄の3人の支配者ルシファー、ベルゼビュート、アスタロトに仕える6人の上級精霊の一人とされる。アガリアレプトとともに将軍を勤めた大将(総司令官)であったという。
プルスラス、アモン、バルバトスら3人の精霊を配下に持ち、あらゆる女性を意のままに従わせる力を持つという。
「かなり強力な、悪魔らしいですね。悪魔祓いのやりかたは・・・ありました。」
悪魔祓い
聖書を読み、呪文を唱え、悪魔にとりつかれた人の中の悪魔を呼び出す。
「名前を聞き出して」その悪魔を取り除きます。
名前が正確に分からないと、祓うことが出来ない。
エクソシスムとは、ギリシャ語で「厳命によって追い出す」という意味。
カトリック教会が正式に認めている悪魔ばらいの儀式。悪魔に取り憑かれた人から悪魔を追い出して正常な状態に戻すことを表している。
このエクソシスムを行う職能を持つカトリック教会の聖職者のことを「エクソシスト」と呼び、悪魔がついているか、ついていないかを判定する役割も持っている。
魔力を持っている者にもできるが、二人必要だ。
「二人って・・・」
「私と、光令できますかね?」
「真理と俺でできるのか?涼音」
「できますよ。」
「真理、光令、頼んだ」
「人任せかよ・・・お前も頑張るんだよ」
「・・・はい」
そういうことで、魔界探偵所に戻った俺たちは早速準備を始めた。
「聖書とか十字架とかいるのか?」
「はい。なので、あらかじめ買っておきました。」
相変わらず、準備がいい。
「ありがとう」
「やり方は、わかりますので。」
「そうか。どうするんだ?」
「まず、一人が聖書、もう一人が十字架を持ってください。」
俺が聖書、真理が十字架を手に取った。
「そしたら、あらかじめ書いていた魔方陣に拓真が立ちます。」
いつの間に魔方陣を書いていたのか、もうすでに円形の魔方陣がある。
「ここか?」
拓真は真ん中あたりに立つ。
「はい。目をつぶってください。」
「了解」
「光令、聖書を拓真の頭にかざしてください。」
そう言われたので、俺は、正面に行き拓真の頭に聖書をかざす。すると魔方陣が光り始めた。
「真理は後ろからかざしてください。」
「こっ、こう?」
俺と向かい合う形で真理は、拓真の後ろに行った。魔方陣の光は強くなった。
「そして、呪文を唱えます。繰り返してください。悪魔よ姿を現したまえ。」
「悪魔よ姿を現したまえ」
二人で唱えると、いきなり拓真が呻きだした。
「拓真、大丈夫か?」
俺が、聖書を話そうとすると・・・
「光令!離さないでください。」
涼音が珍しく、いきなり叫んだ。
「なんでだよ!」
「拓真は、今サタナキアになっています。聖書を離すと、拓真は完全に乗っ取られます。」
「なに!分かった」
いまは拓真じゃない俺は、そう言い聞かせた
「離せ、離せ」
拓真・・・いや、サタナキアが低い声で言った。
「十字架も離さないでください。十字架は暴れないように力を押さえつけるためのものです。」
「わかった」
「光令。名前、正式な名前を聞き出してください。」
「サタナキア、お前の本当の名前はなんだ!」
「言うもんか」
「言わないなら、呪文を唱えるのです。聖書に書いてあります。」
「エックソーシザマズ ティー オミニイムンドゥスム スピリトゥス
オム・・・・」
俺はひたすら唱え続けた。
「やめろ」
「サタニカポテンティスオムニインクルゥシィオインフェルナーリィスア・・・・」
「グリム・サタナキア」
「えっ・・・」
「グリム・サタナキアだ」
「正式の名前です。」
「そしたら、どうするんだ」
「拓真の幸福を強く願い、名前を呼び、立ち去れというのです。」
俺は、精一杯、拓真の幸福を祈った。
「立ち去れ・・・グリム・サタナキア」
「真理、十字架を離してください。」
真理が、十字架を離すと拓真は力なく俺に倒れこんだ。
「拓真!?」
「疲れただけです。上で寝かせましょう。」
「よかった」
拓真を、二階で寝かせた後、真理と俺も疲れたのか椅子で寝てしまった。
「光令~、真理~起きろ~」
目の前に、拓真がいたので驚いた。
「拓真!もういいのか?」
「元気、元気」
「そうか、良かった」
「光令が心配してくれるなんて嬉しいな」
「心配かけるな」
「三人ともよく寝てましたね。」
「涼音・・・」
「可愛かったですよ。」
「・・・」
寝顔を見られたことが、少し恥ずかしい。
「これで、一件落着ですね。」
「そうだな。拓真はこれからどうする」
「・・・もちろん一緒にやる」
「そうか」
「そうかって・・・もうす」
「よし、頼んだぞ」
「ちゃんとセリフ言わせろ~」
「いいじゃないか」
「まったく」
「まっ、これからよろしく」
そして、手を出した。
「おう」
しっかりと手を握った。
これから新しい生活になるな。
「写真撮りましょう。」
外に出て、一枚写真を撮った。その写真を、探偵所に飾るとなかなかいい感じだった。
「これから、楽しみだな」
♦ ♦ ♦
俺は今、椅子に座っている。拓真も同様だ。真理は涼音と店の掃除をしている。
カラン 四人同時に
「いらっしゃいませ」
そこには、メロウが立っていた。
「メロウ、勉強しに来たのか」
「うん」
元気よくうなずく。
「じゃあ勉強するか」
「うん」
「そこに座って」
「ここでいい?」
「いいぞ」
「光令、光令。誰だ」
「初めてだったよな。こいつはメロウ。いろいろあって勉強を教えているんだ」
「そのいろいろが気になる」
「あぁ」
なので俺は、簡単に説明した。
「なるほど」
「さあ、メロウ勉強始めるぞ」
「はい」
「いいぞ」
「うん」
「この前、買った本出して」
「うん」
「ここは、こうじゃないかで・・・・」
俺も涼音に教えてもらいながら勉強をした。その間、真理も拓真もこっちを聞いたり、自分の勉強をしたりしていた。
それから、何日か勉強が続いた。
「はい、今日はこれでおしまい」
「ありがとう」
「またこいよ」
「・・・」
いきなりメロウが黙った。
「どうした」
「うん・・・あのね・・・」
「なんだ」
「お父さんが、この傷を治してくれるお医者さんを見つけてくれたの」
「よかったじゃん」
「でもね、時間もかかるしそこは遠いの」
「じゃあもう・・・」
「うん。そこに住むかもしれないし・・・」
「そうか・・・でも、その傷が治れば学校に行けるな」
「うん。今まで・・・あっ、ありがとう」
メロウは泣き出しそうだった。
「泣くな。泣いたらだめだ」
「でも・・・」
「じゃあ、お別れの仕方を変えよう」
「えっ?」
「さよならじゃなくて、また今度、だ」
「えっ?」
「さよならは、一生会えないかもしれないけど、また今度はいつか会えると思うだろ。だからまた今度」
「わかった」
「よし、向こうでも元気にやれよ」
「うん、また今度」
「また今度」
そう言ってメロウは駆け出した。
「お兄ちゃん・・・」
メロウが叫んだ。
「メロウ・・・俺も・・・」
それを聞いていたのか拓真が
「光令、小さなガールフレンドができたな」
「そうだな」
「悲しいか?」
「少し・・な。でも、また会えるから」
「そうだな」
「さてと、仕事仕事」
メロウが叫んだ言葉・・・「大好き・・・」とてもうれしかった。
また今度と言ったが、もう会うことはないだろう・・・
「光令にガールフレンド!?」
涼音と真理が同時に叫んだ。
拓真のやつ・・・
「なんでそんなに驚くんだよ」
「だってねぇ~」
「光令は、かっこいいですが・・・あまりそう言うのに興味なさそうですもん。」
「そうかもな・・・」
こんな時間がずっと続けばいい・・・そうもいかないだろうがな・・・
「光令?聞いてる?」
「あ?あぁ、聞いてるよ」
「ほんと?」
「嘘」
「も~う」
「ごめん、ごめん」
カラン
「いらしゃいませ」
今日も、依頼は続く。みんなで仲良く依頼を解決する。そんな毎日が続いた。
「光令、こんな日が続くといいね」
「そうだな」
みんなも同じ気持ちなんだ。ならこれからも続いていくだろう。
END
人物紹介
齋藤 光令誕生日8月14日高校1年 180cm 二組
鈴木 拓真(すずき たくま)誕生日5月23日高校1年 178cm 二組
須加 真理(すが まり)誕生日7月24日高校1年 159cm 一組
涼音 (すずね) 何かと説明が長い妖精 15cm
百合さん(ゆりさん)幽霊 成仏済み
メロウ 人魚 魔界探偵所で勉強中 遠くに引っ越した
人探しの紙 その名の通り、人を探すのが早い
魔女 人の記憶を映像化することが得意
長く文を書くのは得意ではないので、これからも温かい目で見で頂けたら幸いせす。
最後まで読んでいただきありがとうございました。