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第三話 『異世界物って…』


---------------------------------------------


「うーん…」

リクは教室と思われる場所で小説を読んでいる。

周りはお昼の時間なのか、弁当を食べたり駄弁ってたりと

ガヤガヤとした感じであった。


「おーい、リク。飯食おうぜー」

教室に男子生徒が二人入ってきてリクに声をかける。

「ああ、ちょっと待って」

リクは入ってきた二人を見ずに黙々と小説を読む。


「何だよ…またライトノベルだっけか?読んでるのかよ」

先程声をかけた男子が問い掛ける。彼は「五十嵐いがらし リュウ」。

短髪で髪が逆立っていて顔だちも良く、クールな感じの奴だった。


「まぁいいじゃん。リク君、机繋げるよ?」

「ん?ああ、ありがとう」


もう一人が優しく声をかけてくる。

彼女…じゃなくて彼は「本田 ミツル」。

肩までさらさらな髪を伸ばしていて、顔だちもまだあどけなく、

少し女の子らしさを醸し出していた子だった。


二人とも近くにある机を繋げて、弁当を広げる。

「おー!ミツル。今日もうまそうだな。やっぱ手作りか?」

リュウがミツルの出した弁当を見る。

綺麗な色遣いで、食欲を誘うような弁当だった。


「うん。そうだよ。リク君は食べないの?」

「あー…よし。読み終わった!食べるか」

「リクは好きだよなぁ。それ。毎日読んでるんじゃないのか?」

リクは弁当をバックから取り出して答える。


「そうだなー。基本的に読んでるかもしんない。

 面白いし。お前らも読むか?」

「いや、やめとくわ。普通の小説ならいいけど、

 なんかお前の読んでるやつ、主人公が絶対に「異世界」に行くんだもの」


「いやいや。異世界に行くから面白いんじゃないか。

 異世界だから何が起こっても「まあ異世界だし」で

 済むしから何でもできるし、もし異世界に俺が行っちゃったとき、

 この本たちで得た知識が使えるかもしれないだろ?」

リクは弁当を食べながら熱弁する。


「えー、役立つと思うならまだ推理物とかのほうが役立つと思うけど…」

「いやいや、あんな事件に出くわす確率なんてほとんどないぞ」

「いや、お前…異世界に行くほうの確立のほうがないだろ…」

「確かにー」

「なにおう!?」


-------------------------------------------


リクは目を開ける。気が付くとソファーに横になっていた。

「知らない天上だ。あれ?俺どうしてたんだっけ…あ!そうだ!殺されかけたんだ!」

そういってソファから起き上がる。


「いてぇ!」

左腕に痛みが走る。力を入れると痛むようだ。


「ほらほら。そんな不細工な顔をしないで。

 まだ構築されて時間が経ってないんだから。はいお水。」

マリーは水をリクに渡す。


キンキンに冷えてやがる…

リクはそれを一気に飲み干す。

「かぁー!うまい、うますぎる!!体に染み渡るぞ!」

歓喜の声を上げる。


「そりゃ、あんだけ色々出したんだから、体が水を欲しがるのは

 当たり前だわ」

マリーは腕を組んで答える。


「ふー。そんなに何を出してたんですか?」

水を飲み終えて、リクは質問する。

「色々よ。い・ろ・い・ろ、ね」

「あ、はい…」

どうやら真相を知っても悲しくなるだけだと察し、

リクは別の質問に切り替える。


「そういえば、さっきの治療って本当に治療なんですか?

 なんか俺の左腕、分解されてたように見えたんですけど…」

あんなことが治療のはずがないと更に質問する。


「それになんか魔法みたいなの演唱してましたし、

 魔法ならもっと簡単に治るものだと思ってました。

 てか、魔法が使えるなんてやっぱりここは

 異世界なんですね」

正直、異世界だとは8割ほどしか信じてなかったが

先程の魔法を、左腕に起きた出来事を見て、確信を得た。


マリーは近くの椅子を持ってきて、リクと対面して座る。

因みにおっさんはマリーの後ろのほうでいびきをかいて、寝ていた。

床には先程のひょうたん型のお酒以外にもいくつか瓶が転がっていた。


マリーは先程の質問に対して、答えてくれた。

「そうね。まず、ここあなたの世界とは別の世界。

 正確に言うと、「ありえた世界」。まぁ、パラレルワールドの

 一つね」

「パラレルワールド…」

聞いたことがある。確か、決して交わることのない

存在しえた平行世界のことだった気が…


マリーは続けて答える。

「そう。パラレルワールド。私から見たらあなたは存在しない者。

 あなたから見たら私は存在しない者。そういう世界よ」

「ん?待って」

リクは質問する。


「パラレルワールドってことはわかりました。でも確か、

 パラレルワールドは存在しえたもう一つの世界。

 つまり、この世界にもこの世界の俺はいるってことなんですか?」


パラレルワールドはある分岐で二つに分かれてしまった一つの別世界。

つまり、今この小説を読まないで違う小説を読んでいる自分がいれば、

それはれっきとした別世界、パラレルワールドの世界の自分である。


因みにパラレルワールドの世界の自分と元の世界の自分は

運命共同体。どちらかが死ねば、その片方も死ぬ。といったものである。

つまり、パラレルワールドに自分がいなければ…

マリーは答える。


「そう。この世界にもあなたはいるわ。ただ、外見もちがければ、

出生も違う。ましてや、性別だって名前だって違うはず。

見つけることは不可能よ」


なるほど…リクは納得する。

続けてマリーは話す。

「うん。じゃあここが異世界なのはわかった?それじゃあ次は

 さっきの治療の事。あれは魔法であって、回復魔法ではないわ」

ほう…


「この世界の魔法は大まかに二つの魔法で構成されてるわ。

 『創造魔法』と『破壊魔法』。詳しくは説明しないけど

 この二つをうまく合わせて、私たちは様々な魔法を生み出しているわ。

 さっきの治療の時の魔法もそう。ただ、左腕を創造するだけでは

 ケガは治らないし、治すための要らない部分はそのまま残ってしまう。

 でも、一度左腕すべてを破壊してしまえば、あとは一から想像するだけ。

 完璧に元通りとはいかないけどのほとんど元の左腕には戻せるわ」


リクは自分の左腕を裏表と動かし、確認する。

確かに、少し感覚がいつもと違うような…


「違いは分かった?まぁ素材はあなたの左腕だから物としては本物よ。

 それとこれは治療とはあまり関係ない話だけど…」

「なんでしょう?」

リクは左腕から目線をマリーに戻す。


「この世界では魔法を直接的に人に使用することは禁忌とされているわ。

 つまり、さっきみたいに治療に魔法を使ってはいけないの」

「どういうことですか?」


治療に使ってはいけない?確かにかなりの痛みではあったが

あの使い物にならなかった左腕をこんなほぼ完ぺきに治せる

ほどのものだ。むしろ、もっと大いに使って

痛みがない治療を研究して、もっと完璧なものに…

下を向き少し考えているとマリーは言う。


「そう。あなたが考えているようにもっと大いに

 活用されるべきことだと私は考えるわ。

 でもそれは許されないの。そう今はね(・・・・)

 だからあなたの治療のことは内緒にしといてね」

意味深なことを言うマリーに、

疑問を抱きすぐに問いただす。


「でもなんで…」

「なんでも、よ。

 とにかくこの話は一応説明しただけだから深く考えないで。

 頭に残しておいてほしいのは、「この世界に回復魔法は無い」

 ということだけ。わかった?」


マリーは静かに、でも確かに威圧をリクにかけていた、

多少ではあるが、他人の言動や行動には他人よりも

敏感な部分もあり、リクは静かにうなずく。

そんなリクにマリーも笑顔で答える。


「よろしい!あと何か質問は残ってたっけ?」

「あ、はい。えーと、確か「漂流者」がどうたらとか」

なんとか気絶する前の記憶を呼び戻す。


「ああ!漂流者ね。漂流者とはあなたたち異世界から来た

 人たちの事よ。なんか知らず知らずにここに流れ着くから漂流者」

「なるほど。そういえば、俺みたいな…漂流者は他にも沢山

 いるんですか?」

漂流者という代名詞がつくほどだ。それなりの数はいるのだろうと

踏んで質問する。


「ええ。沢山、ってわけでもないけど確かに存在するわ。

 まぁ私は初めてこうやって漂流者さんとお話するけど」

「へぇ…じゃあ漂流者は珍しいんですね」

するとマリーは少し真剣な表情となる。


「うん…そうね…」

「どうしたんですか?」

「ううん。…まぁ、私から話すよりはアフォーからのほうが…」

「?」

マリーは何か独り言を言う。


「あ、ごめんね。このことはアフォーが教えてくれると思うから

 彼から聞いてね。ていうか、そろそろアフォー!起きなさい!!」

「あがっ!」

マリーはいびきをかいて寝ているアフォーを乱暴揺さ振って起こそうとしていた。

リクはマリーのその姿に苦笑いをしつつ、少し考える。


うーん、漂流者って…俺以外にもいるならそいつらにあってみるのも

いいかもしれないな…それでこの世界から脱出を…あ!


「マリーさん!因みに漂流者が元の世界に帰れる方法って

 ご存じないですか?おっさんは知らないらしくて」


アフォーをおうふくビンタしていたマリーは答える。

「あー、ごめんね。私もそれはわからないの。

 そもそもあなたたちの世界自体本当に存在するのかどうかも

 正直。私たち側からしては疑わしくて…」

「ちょ、やめ、やめろって!起きてるから、起きてるから!」

おっさんはおうふくビンタにより両頬を赤く染めて目覚めた。


なるほど…確かに、マリーさんの言うことは一理ある。

俺たち漂流者が元々住んでいた世界はこちらからは認識できない。

なら、一番妥当な漂流者に対する結論は

俺たちは漂流者だ!という奴らの「妄想」となる。

いや、でもあったはずだ。俺の世界は確かに…


「おい、リク。戻るぞ。もうここに用はねぇ。」

おっさんは頬を赤く染めつつ、リクの前を通り、外に出た。

「ちょっと、アフォー!!もう…

 あ、リク君!アフォーに…その…「連絡くらいは寄こせ」って

 伝えといてくれる?あいつったら全然連絡してこなくてね…

 それとドンタコスにもよろしく言っといてね」

マリーは少し頬を染めながらリクに頼みをした。


ん?なんだ?おっさんをビンタしすぎて代謝があがっているのか…

頬を赤く染めるマリーに対して疑問を抱くが、まあいいだろう。


「わかりました!おっさんにもドンタコスにも伝えときますね。

 ちなみにドンタコスもマリーさんによろしくと言ってましたよ」

そう言ってリクも出口に向かう。


「あら、ありがとうね。リク君。

 あ、一つ言っておくわ。アフォーはあんなだけど

 誰よりも人思いな奴よ。多分、この先いろいろあると思うけど

 彼のことは信じてあげてね?」

少し悲しげな顔でマリーは言う。


「?あ、はい!マリーさんがそう言うなら、おっさんのこと

 とりあえず信じておきます。じゃあまた今度!」

「うん。じゃあまた今度ね!…アフォー…任せたわよ…」


マリーの小言を聞かずに、リクはおっさんを追って外に出た。




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