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理学部、農学部、工学部、そして水族館

ここは帝都大学総合キャンパスの中庭。生徒達がベンチ等で談笑、読書、スマートフォンをいじったりと、思い思いの時間を楽しんでいる。その中に久保と影山が紛れていた。怪しまれない程度に、依頼人の夫、つまり齋藤教授について生徒に聞いてまわったが、有力な情報は掴めないていなかった。

「齋藤教授んところ行ってみる?っていうか、この人、理学部情報科学科の教授なんだ。久保、理学部だったよね?なんで知らないのよ」

影山が生協限定のペットボトル飲料を飲みながら言った。

「俺、化学専攻だし。学部の先生全員覚えてるわけないだろ。俺は、齋藤教授っていうより、獣毛の正体が気になるんだよね。だから理学部研究棟か農学部キャンパスで獣毛の正体を探したいかな」

「はぁ。じゃぁとりあえず、理学部研究棟に行ってみるか」


久保達は理学部研究棟へ向い研究室を見てまわった。が、あの正体不明の獣毛の正体と思われる動物は見つけられなかった。バイオ関連の研究棟はセキュリティが厳しく入ることができなかったが、動物は飼育していないことを確認した。

「やっぱ理学部はにいるのは、ほとんどラットやウサギだわ。研究内容調べてみたけど、その研究対象の動物の毛は珍しくもないし、あの獣毛とは違うって見なくても分かる。やっぱ農学部キャンパスにいるのか?それか大学関係ないのかもな」

久保が悔しそうに言う。

「久保がいた研究室に行って聞いてみる?学生時代、研究室に残れって言われて、先生に好かれてたじゃん」

「めんどくさいからやだ」

「なんだよそれ」

歩いているうちに齋藤教授の研究室前までやってきてしまったが、扉にかかったネームプレートは不在と記されていた。と、扉が開き女生徒が出てきた。

「あっ、すみません」

女生徒と久保がぶつかりそうになる。

「いや。あの、齋藤教授は?」

「今はいないんです。工学部キャンパスにいます」

「工学部?」

「はい。齋藤教授は新しく来た先生と共同研究していて、最近は頻繁にそちらに行っています」

「ふーん」

「ちなにみその先生の名前はなんて言うのかな?」

影山が割り込む。

「菊池忠博助教授です」

ちっ男か、、、。

「その助教授って何してる人なの?」

「確か、建築系で住宅制御システムとかにお詳しいらいですけど、よくわ 分からないです、、」

「あれ?久保っちじゃん!!!」

突如、大きなしゃがれた声が聞こえた。廊下の数メートル離れた所から歩いてくる、薄汚れた白衣を身にまとった熊のように大きな男が声の正体のようだ。久保が若干不機嫌な顔をした。

「久しぶりだなぁ。研究員として戻るのか?」

男が久保の肩に腕をまわす。

「そんなわけないだろ。俺は個人経営が合ってんの」

久保が男を睨む。

「個人経営って珈琲屋だろ?ブランクがあっても、先生は久保なら雇ってくれるって」

「珈琲は化学なしには語れない、複雑で素晴らしい飲み物なんだよ!それに、誰かの下で働くのは俺には向いてないんだよ。まぁ、お前は有機合成の才能あるんだから、がんばれよ」

「久保っちに言われると自信沸くわぁ。俺らの研究室室に寄ってけよ。先生も喜ぶからさぁ!!」

目立たずに行う予定の調査であったが、この男の声のデカさにより、通りかかる人の目につき始めていた。

「こんにちは。実はここの教授の奥さんが久保の珈琲豆屋のお客さんでさ。その人が珈琲豆を研究室にサプライズプレゼントしたいらしいんだけど、豆のままがいいか挽いた豆がいいのか分からないって言うから、俺らそれを聞き来たんだ。だから、用が済んだら静かに退散したいんだよね」

影山がナイスな言い訳をかました。

「お前は確か、久保っちとよくつるんでた、、、」

「影山です。影っちでもいいよ」

「そうそう、影っち!そうだったかぁ、お前ん所の珈琲豆、中々評判らしいな。雑誌にも取り上げられてるんだろ?今度俺らも注文するから、配達してくれよ」

「あぁ。最近は忙しいから宅配便が多いけどな。この話は今度な」

久保が配達はしないとアピールしつつ、話を合わせる。

「そういうことだから、齋藤教授にはこの話は内密にね」

影山が人差し指指を口に当てながら、女生徒に言った。ミル機付のコーヒーメーカーがあるから豆のままで大丈夫だとか、珈琲豆を届ける日時等の話を女生徒と交わし、理学部研究棟を後にした。


「ったく、おまえのなんだよ。さっきの言い訳、、、」

久保はスマートフォンをいじりながら、影山に文句を言った。

「いやいや、俺が上手くごまかさなかったら、確実に怪しまれてたっしょ。あれは俺、褒められる所でしょ」

「あの場はうまく治まったのはいいけど、俺が後日行かなきゃになっただろ」

「いいじゃん。店の収入も増えて一石二鳥でしょ。で、どうする?工学部の方に行ってみる?俺はさすがに仕事に戻らなきゃ、やばいかも」

影山が腕時計をチャックした。

「これ以上歩き回ると、齋藤教授に怪しまれかねないしな。ちょっと行きたい所できたし、今日は帰るか」

「行きたい所ってどこ?」

「水族館」

一人水族館、、、。影山は久保が一人で水族館を楽しむ様子を想像し、笑いを堪えた。

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