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3人で異世界を旅する  作者: 黒猫の宵風
プロローグ
1/3

現状把握

 いつもの見慣れた教室で夜神忍は目を覚ます。


「あれ?なんで僕寝てたんだろう・・・」


 確か今日は友人の朝野輝と日向花音と一緒に地元の近くに出来たショピングモールに行っていたはずだ。


「なんで学校?輝と花音は?」


 そこで初めて周りを見渡してみる。いつも通りの通い慣れた教室、違うところは片付けたのか机が3つしかない。自分の机以外では輝と花音が机に突っ伏して寝ていた。

 今の状況を自分だけで考えていても解決しないので椅子から立ち上がり二人の肩を揺すって起こす事にする。


「輝、花音起きて」

「ん・・・ふぁ〜、あれ?忍おはよう」

「ん〜・・・何で私達寝てたの?」


 二人とも起きるが、自分と同じくなんでここで寝ているかは知らないようだった。


「わかんない。輝と花音は今日の事覚えてる?」

「確か昼前に忍と花音と駅前で待ち合わせをして、その後ショピングモールに向かったんだよな?」

「それで3人でご飯を食べて私の服を見たり輝のフィギュア巡りをして・・・あれ?その後は?」

「僕もそこから先が思い出せない」


 そこまで話したところで教室の前の扉が開いて誰かが中に入ってくる。

 中に入ってきたのは10歳くらいの男の子だ。どういう原理かわからないが、うっすら光っている。


「こんにちは、僕の名前はアル。神様やってるからよろしくね」


 今の発言に3人とも固まってしまう。アルが不思議そうな顔をしていると、輝がなんとか口を開いた。


「君が神様?なんか証明できるものはあるの?僕たちには小学生にしか見えないんだけど」

「別に信じなくてもいいよ、エルにもよく神様らしくないって言われてるし慣れてるから。そんな事よりとりあえず僕は君たちの現状について説明に来たんだよ」

「現状って?」

「まず一つ目は君たちは3人ともすでに死んでいる事、二つ目は僕とエルの暇つぶしで3人とも転生させようとしてること」


 3人が目を見開き花音が思わずといった様子で口を開く。


「死んでるって嘘でしょ⁉︎」

「嘘じゃないよ。なんなら死ぬ寸前の映像でも見せようか」


 そういうとどういう仕組みかはわからないが黒板に映像が映し出される。映し出されたのはついさっきまでいたショピングモール近くの交差点だ。時刻は夕方なのか西日があたりの建物を茜色に染め上げている。3人の男女が仲良さそうに話しながら信号待ちをしている。忍、輝、花音の3人だ。あたりが騒がしくなり輝が必死な形相で2人に何かを言っていた次の瞬間3人がいる場所にトラックが突っ込んだところで映像が終わる。


「どう?これで自分達が死んでいることは理解できたでしょ」

「・・・・・・」


 3人は言葉を失ってしまった。よくできた映像だと言うことはできるし、その考えを信じたいと心から思っている。しかし、この映像が本当にあったことだという事をなぜか理解してしまった。


「信じられないって言う君たちの気持ちは理解はできないけどわかるよ。ただこのままこうしていてもどうしようもないから、僕としては話を進めたいんだけどいいかな」

「ちょっと待ってくれないか。3人で話をさせてくれ」

「別にいいけど早めに終わらせてね。僕は隣の部屋にいるから話が終わったらそこに来てね」


 そういうと先程入ってきた扉から外に出ていった。

 それを確認して輝が話し始める。


「なんかいろいろわけわかんないんだけど」

「私ももういっぱいいっぱいだよ」

「という事で忍まとめて」


 こんなとき話をまとめるのは忍の担当になっている。忍は少し考えてからまとめた事を話していく。


「まず前提としてさっきの子が言っていた通り僕たちは死んでいると思う」

「その理由は?」


 輝の返してきた言葉に忍は指を3本立てて答える。


「理由は3つ。一つ目はさっきの映像が本当にあったことだと理解してしまったこと。二つ目は胸に手を当てればわかるけど心臓が動いていないこと。3つ目は指を噛んで血が出るか確認しようとしたけど傷もできないし感覚もなかったこと」

「でもそれだけなら夢だっていう可能性もあるんじゃない?」


 花音は信じたくないといった感じで別の可能性を指摘してくる。


「3人とも全員が同じ夢を見るなんてありえないと思うし、たしか夢の中でも痛いと思ったら痛いんだよ。明晰夢って可能性もあるけどあれは変えようと強く意識すると目が覚めるしね」

「じゃあやっぱり・・・」

「うん、僕たちは死んでいるんだと思うよ」

「マジかよ」


 2人は表情を暗くさせる。2人ともこれが夢ではないとうすうす感じていたが忍の話を聞いてその思いが強くなってしまった。


「忍は妙に落ち着いているんだね?」

「うん。やっぱり死んじゃったことはショックだし父さんや母さんともう会えないのも悲しいけど、もうどうしようもないかなって」

「そう・・・だな。あぁ〜じいちゃんから一本取りたかったなぁ」

「2人ともおかしいよ‼︎なんでそんなすぐに自分が死んじゃったことを受け入れられるの⁉︎私はまだ死にたくなかった!やりたいこともいっぱいあった!お父さんとお母さんともまだ別れたくなかった!私は、私は・・・」


 それから花音は泣き始めてしまった。2人ともかける言葉が見つからずオロオロしてしまう。


 それから5分くらいたっただろうか。花音の涙は止まっていたがその場は重い雰囲気が漂っていた。


「・・・ごめん」

「いや、僕たちが花音の気持ちを考えないでいたからだよ。ごめんね」

「ううん、辛いのは輝も忍も同じなのに私だけ・・・」


 この場の空気を変えようと輝が話を切り出す。


「とりあえず起こったことは変わらないんだから、これからのことを考えないか?たしかさっきのアルだっけ?あいつが俺たちのことを転生させるって言っていたけどどういうことだろうな?」

「それはまだよくわからない。アルから話を聞かないと」

「じゃあ早くアルのところに行こうぜ」


 そういうと輝は椅子から立ち上がり前の扉から教室をでていってしまった。


「あ、待ってよ!花音、僕達もいこう」

「うん、わかった」


 2人も立ち上がり教室から出て行く。教室の外は学校の廊下ではなく天井も床も壁も真っ白な通路だった。輝は隣の部屋の前で待っている。

 3人揃ってから部屋に入ると中にはアルともう一人、アルとそっくりな男の子が待っていた。

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