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[完結しました!] 僕は、お父さんだから(書籍名:遺伝子コンプレックス)  作者: 舛本つたな
[第三部]僕は35歳、ロクはとても頑張っているから
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[3-18]防御陣地戦

「法強さん、ロクは何と言ってましたか?」

「ふむ」と法強は顎に手を当てた。


 不思議なものだな、と法強は思いを巡らせた。

 ロクはこの父親のことを随分と信頼していると思っていた。ここ最近は、ロクに布津野忠人なる人物について質問を重ねてきたのだ。やつは答えるのを嫌がることが多かった。しかし、こちらが父親を侮るような質問をした時には、ムキになって否定していた事をよく覚えている。

 しかし、この事態においてロクは、父親に頼ろうとはしなかった。

 法強は興味深そうに、布津野を見た。

 布津野は不安になって、法強に問いを重ねる。


「あの……、ロクは、その、なんと?」

「ああ、すまぬな」


 法強は首を振って、思索を中断した。


「実は、この孤児院を包囲している輩がいるらしい」

「えっ、それって……」

「どうやら、敵だな」

「敵……大変なんじゃ?」

「ああ、大変だな」


 布津野は顔面を蒼白にして絶句する。

 その様子を眺めていた法強は、ロクがこの父親を頼りにしていない事をすぐに納得した。将の動揺は、兵を乱す。この男は将の器ではない、兵の器でもなかろう。臆病な凡兵だ。では、この男の大器とは如何(いかん)や?

 法強は慎重に声にする。


「ロクは、好きにしろと言った」

「はぁ」

「さて、どうする?」


 布津野はすぐに答えた。


「どうしたらいいですか?」


 それは反射的な素早い質問だったので、法強は思わず笑いそうになった。奥歯を噛み締めて、口の端が引き上げるのに何とか止める。


「それは、貴方が決めることだろう」

「でも、僕にはどうすればいいのか分かりません」


 ああ、この男は将の器ではなかったな。この質問は酷だった、と法強は自分を責める。言葉で試してはならぬ相手だった。言葉に縛られてはいけない、とこの男に教わったばかりだったはずだ。


「さて、」

 と、法強は考えを巡らせる。

「ロクから頼まれたことがある。放送室の場所は分かるか? そこでやらねばならぬ事が出来た」

「ええ、もちろんです。今から行きますか?」

「ああ、急いだほうが良いだろう」


 布津野はそれに頷くと急いで立ち上がると、法強をつれて廊下に出て行った。



 放送室の中に入った瞬間に、法強は布津野に声をかけた。


「照明はつけない方が良いだろう」

「え、」

 壁横のスイッチに伸ばした手を止めて、布津野は法強を振り返る。

「ここに人が入ったことが漏れれば、ロクの計画に支障があるだろうからな。布津野さんはここを使ったことは」

「ええ、何度かありますよ」

「録音機能を使って十分後に流したい。教えてくれるか」

「分かりました」


 布津野はそう言って、放送設備の近くまで歩く。設備といっても、単なる据え置きのパソコンだ。起動して、放送に使うソフトウェアを立ち上げるだけだ。特に使い方の説明は必要ない。


「ほら、この画面です。見れば分かるとは思いますが、質問があれば遠慮なく」

「ありがとう」


 法強は布津野と席を替わって、パソコンのキーボードを操作し出した。布津野がモニタをのぞき込んでいると、淀みなく操作をしている。どうやら、特に助けはいらないようだ。


 ピピッ


 と、腰元から音がして布津野はびくり、とした。が、すぐに冷静になって、それが自分の携帯の着信音であることを思い出す。包囲されている、と聞かされて神経過敏になってしまっている。ちょっとした音にも驚いてします。

 深呼吸して携帯を取り出すと、おや、と思った。


「百合華さんからだ」

「ロクから、ではないのか?」

「ええ、どうしたんだろ。こんな時間に」


 何気なく携帯の応答ボタンを押して耳にあてる。


「はい、布津野です」

「兄様、お久しぶりです。お声が聞けて大変嬉しいのですが、緊急ゆえに手短にお伝えしますわね」

「どうしました?」

「今、兄様は孤児院にいますか?」

「はい」

「法強さん、という方もそちらに?」

「ええ、隣にいますよ」

「そうですか、助かりました。では、その方にこうお伝えください。包囲しているのは四罪(スーズイ)の山猫(シャンマオ)。と」

「スーズイ? シャンマオ?」


 ガタッ、と音を立てて法強が布津野の方に振り返った。


「兄様、後ほどご説明申し上げます。今はこれで、失礼いたします」


 ぷつり、と電話は切れた。いつもは無駄話ばかりの百合華さんにしては珍しいな、と布津野は携帯に視線を落として首を傾げる。


「……今の電話は?」

 法強が堅い声で布津野に問い詰める。

「ああ、知り合いからの電話です。法強さんに伝えて欲しいそうです。なんでも、僕らはスーズイのシャンマオというのに囲まれているそうです」

「馬鹿な、あの山猫がここにいる、だと。その電話の主は一体、誰だ。どうしてそれを知っている」

「さあ、何かと人脈の広い人だから、僕にも分かりません。シャンマオってなんです?」

「……」


 法強は黙り込んでいたが、やがて息を深く吐いた。


「四罪とは中国軍の隠密部隊のことだ。遺伝子強化を受けた兵士で構成された諜報部隊」

「遺伝子強化って、日本以外ではそういうの禁止されているんじゃ」

「表向きは、そうだ。しかし、遺伝子研究は日本の合法化以前から各国で行われてきた。特に人道的に問題視されるような研究は機密研究としてな。日本はそれを国民に開放しただけだ」


 そして、その判断が日本をここまでの超大国に育て上げたのだ、と法強は口のなかで呟いた。


「そんな、」

「四罪は中国神話の四つの悪魔に由来する。遺伝子研究の軍事的成果の総称だ。その兵士たちは戦闘だけに特化された遺伝子操作を受けている。寿命や社会適合性など度外視して変質させられた兵だ。しかも、あの山猫がここに来ている」

「シャンマオ?」

「四罪の中でも腕利きの暗殺者だ。狙いは俺だろう」

「そんな、だったらみんなが……」


 法強は拳を握りしめた。自分の存在が、あの子どもたちの身を危険にさらしている事実に歯を食いしばる。ロクは中央棟で防御陣を敷いていると言っていた。いくら、あの鬼子の子どもたちでも、四罪相手ではただでは済まない。


「法強さん、僕に出来ることはありませんか?」

 布津野がそう言ったのを、法強は面をあげてみた。

「あの子たちを守るために、僕に出来ることは?」


 自分に出来ること……。


 法強の喉が鳴った。そうだ、この男のように、俺が出来ることはなんだ。悔いて、ここでじっとしているような歳ではないだろう。若者が戦っているのだ、老人が死線から退いてどうする。


「……ひとつ、ある」

「本当ですか」

「貴方ではない。それは俺が出来ることだ。やるべき事でもある」

「え」

「ここで戦わねば意味などない。俺もようやく、」


 法強は、布津野を見た。


 ——貴方のように、なれる。



 ◇

 榊は中央棟の二階の教室に陣取っていた。


 この孤児院は収容人数に対して敷地が広い。それは、ここが単なる生活の場を提供する施設ではなく、教育施設も兼ねているからだろう。元鬼子実験部隊の四十八人の存在は、未だに非公開であり、一般の学校施設に編入するわけにはいかないらしい。

 この施設は、東棟と西棟と中央棟の三つに区画されている。東棟は男子用の宿舎で、西棟は女子用となる。そして、中央棟は、教室や食堂、稽古場などがある広大な区画だ。

 榊は小さなイヤホンを片耳に詰め込んで、予備の携帯端末を取り出した。ロクに渡したのが普段から使っているメインの端末だ。予備の方を渡せば良かった。あいつ、私の個人情報を見てないだろうな。

 榊はそこら辺の机にノート置いてペンを握りながら、端末を口に当てる。


「監視、目視できた敵の数を報告しろ」

 そう命令を飛ばすと、四方に配置した監視役から通信が入る。

「東側、数2」

「西側、数3」

「北側、数5」

「正面、数16」


 ペンを走らせて、報告の内容を図面に落としていく。目視の合計数は26人。ロクの分析では、敵は30人以上。数はこれから増えていくと見た方が良いだろう。

 正面に16。数が偏っているが、これは正面の視界が開けているせいだろう。監視役は二階の窓に4名配置している。東と西はそれぞれ東棟と西棟の建物によって視界が遮られている。それに対し、正面玄関は野外の運動スペースに面していることもあり、視界を確保しやすい。

 ざっと見積もって小隊規模の60名が相手戦力だと仮定すべきだ。主装備がハンドガンの軽装相手とはいえ、こちらは銃火器すら装備していない上に、数でも負けている。


 ゆえに、防御陣地戦に持ち込んだのは合理的だ。


 仲間が施設内に分散していては、各個撃破されて終わりだった。ロクの判断は正しかった。あいつは、あの一瞬の状況で最も妥当な判断を下した。

 榊はペンを置いて、端末を手に取る。


「一階の迎撃準備はどうだ」

「東側、問題ありません」

「西側、完了です」

「北側、同じく」

「正面、完了しています」

「よし、各方面の一階と二階監視はホットラインを維持しろ。監視は敵情と突入のタイミングを一階に共有。各自、事前の指示を念頭に、判断自由」

「「了解」」

「私は一階正面に移動する」

「「了解」」


 そう言って榊は立ち上がって、一階に向かって移動を始めた。

 榊は副長ではあるが、前線に身を置くことを好んだ。前線での様子を体感することが、正確な判断を下すには重要だ。それに、仮に自分に戦死しても、引き継がれる指揮系統はすでに決まっている。

 そして何よりも、ニィは常に最前線で指揮をとり、奇跡的な勝利を勝ち取ってきたのだ。その鮮烈な記憶が自然と彼女を前線に向かわせた。

 榊は移動しながら、ふと思う。ニィ隊長とロクは似ているが、やはり違うな、と。

 ニィ隊長は常に危険な最前線に身をさらし、不可能を突破してきた。それに対して、ロクはまず始めに状況を把握できる場所に陣取った。よく似ている二人は、自分の居場所を正反対にしている。どちらも合理的だ。前線の一点突破に活路を見出すニィ隊長と、全体を運用して状況を改善するロク。


 ——私は、やっぱりニィ隊長だな。


 榊は口元を緩めながら、中央棟一階の正面に合流した。そこは玄関になっていて大きなガラス扉や窓が並んでいる。相手の突入口になりそうな窓や扉には、ワイヤーがピンと張り巡らしてある。ヤスリで細く削りこんだ鋭利なワイヤーだ。それに気がつかず、不用意に飛び込めば、体を斬り裂かれるであろう。

 こういったブービートラップの仕込みは普段から怠っていない。軍隊での習慣は自分たち体に叩き込まれていて、この孤児院の貧弱な防御設備は私たちを不安にさせた。暇を持て余した時に用意をしていたものが、こうして役に立っている。

 榊はあたりを見渡した。

 正面一階に配置した人員は10名。玄関でもある正面は、他の方面に比べて遮蔽が少なく、迎撃が困難になる。よって、ここには精鋭を中心に配置している。

 イヤホンから声がする。

「こちら正面監視。敵16、横隊で静止」

「了解」

 相手もこちらがすでに、準備していることに気がついているだろう。窓にはわざと見えるようにワイヤーを仕掛けてある。

 ロクが判断した作戦目標は、現状の二十分間の維持だった。二十分後にはGOAの救援が到着する。そうなれば、夜間戦闘に不可欠なセンサー機器を満載した戦闘ヘリに、小銃や散弾などの重火器を装備したGOAどもがここに展開する。

 ゆえに、相手の戦力を削ることは重要ではない。膠着状況を作りだし遅滞させることが最善だ。相手を誘い込んで罠に嵌めるよりも、明確に罠を張り巡らせて相手に突入を躊躇させる方が得策だ。

 そして、思惑通りに張り巡らせたワイヤーに気がついた敵戦力は静止した。

 榊は周囲を見渡した。一階は全て照明を落としている。暗闇の屋内には仲間たちが物陰に隠れて正面玄関に注目している。用意は整っている。後は、相手がどう出るか。

 イヤホンが鼓膜を刺した。


「こちら正面監視。敵の四名、正面玄関に向かって警戒前進を開始」


 斥候に四名、残りは後方から支援狙撃、か。教科書通りだな。

 榊は、端末を口元に引き上げて声を潜める。


「了解。正面一階、総員、息を殺せ。敵、先遣四名を奥まで引き込め」

「「了解」」


 榊自身は近くの下駄箱に体を隠した。

 玄関のガラスを蹴破る音が数度、引き抜かれるナイフの音、数本張り巡らせていたワイヤーを、ぷつり、ぷつり、と切り裂いている。土足のまま玄関に上がる足並み。四人のはずなのに、二人ずつしか足音がしない。交互に前進と警戒を入れ替える二人二組の警戒前進。

 敵の判断が教科書通りなら、この先鋒隊の四人が安全を確認した後に、全隊で屋内に侵入、展開する手はずのはずだ。逆に、四人が攻撃を受ければ、外から援護の狙撃が始まる。

 榊は端末を口元に引き寄せた。


「やれ」


 榊の後方から白い閃光が広がった。

 後方で待機していたメンバーが指向性LED発光器を、侵入者に向けて浴びせかけたのだ。これは、去年の夏に布津野さんがBBQがしたいと言って、勝手に買ってきたものだ。

 次の瞬間、玄関の左右の隅から2名のメンバーが飛び出した。彼らは薄めた墨汁で黒塗りにした毛布を被り、その場に潜伏していた。

 ほぼ同時に、榊も前に飛び出す。背中にLEDの強烈な閃光を浴びる。相手からは逆光でこちらの視認が不可能だ。外の支援班も屋内の閃光で狙撃は出来まい。

 しかし、その閃光を背中に受けているこちらからは、くっきりと相手の様子が見える。

 相手の二人一組は、三メートル間隔で前後に展開されている。

 後方の二人には隠れていたメンバーが左右から飛びかかっている。

 そして前方の二人はくらんだ目を片手で押さえながら、ハンドガンを前に構えた。

 榊は走りながら体を低く保つ。

 一発目はギャンブルだ。

 パシュ、とサイレンサー付きの射撃音。体はなんともない。外れた。盲目撃ちに当たるほど、日頃の行いが悪いわけではない。

 二発目を撃たせるつもりはない。

 榊はハンドガンを無視して、助走の勢いを拳に乗せて、そのまま相手の鳩尾(みぞおち)に拳を叩き込んだ。右拳にゴム板のような弾力が跳ね返ってくる。こいつは防弾を着ていない。私の拳が筋肉をくぐり抜けて、内臓まで到達した。

 相手が崩れ落ちるのを確認もせずに、すぐに隣のもう一人に踏み込む。相手はLEDに背を向けて玄関から撤退しようとしていた。

 榊は、そいつの後ろ襟を掴むと、相手の膝を後ろから蹴り押す。

 がくり、と体勢を崩した相手と一緒になって、真下に重心を滑り込ませる。

 そのまま、相手の体を巻き込むようにして、投げる。空中で後頭部を押さえて、顔面から床に叩きつける際、全体重を乗せる。

 四方投げと腰投げの複合技。

 脆い鼻骨と硬い床が、衝突する感触が、右腕を通して伝わって来る。

 そのまま片腕の関節を締め上げて、相手の動きを拘束する。

 榊は、そのまま周囲の様子を確認する。

 後列の敵二人は……、すでにメンバーに拘束されていた。不意打ちとはいえ、悲鳴一つ上げさせない早業だ。日頃の稽古が十分に出た結果だろう。


「総員、敵の拘束し装備を奪え」


 榊は、小さいが鋭い声で、指示を飛ばす。辺りから、数名のメンバーが集まってきて、プラスチック製の拘束バンドで4名の侵入者の手足を縛る。

「榊副隊長、これを」と、拘束作業をしていたメンバーから鹵獲したハンドガンが渡された。銃口にはサイレンサーが取り付けられている。

 榊はそれを受け取ると、サイレンサーを取り外してポケットに入れた。私は隻腕だ。ハンドガンでの精密射撃は難しい。少しでも軽量化して近接状況での取り回しを重視した方が良い。それに、銃声がして周囲の住民に騒がれた場合、困るのは敵の方だ。


「手榴弾の類はあるか?」

「スモークがありました」


 榊は煙幕手榴弾(スモーク)を受け取ると、玄関から外の様子を窺う。ガラスの扉は蹴り破られてズタボロだった。ガラスの破片と切られたワイヤーが、床に落ちている。

 敵の増援が来る気配はない。十分に室内に引き込んでからの無音制圧(サイレントコントロール)。屋外の敵支援班は、今、四人からの通信が途絶えて混乱しているはずだ。


 さて、どう出る?


 その時、窓ガラスが割れる音が左右から聞こえた。どうやら敵は迂回する方針に切り替えたようだ。

 榊は周りに鋭く言い放った。


「総員、二階に後退。拘束した4名は手足を撃ち抜いて放置。殺すなよ。応急手当が必要なくらいに負傷させろ。相手に救護させて戦力を削る」

「「了解」」


 パシュ、パシュ、とサイレンサー付きの銃撃が周囲からして、うめき声が混じる。

 榊は煙幕手榴弾のピンを抜いて、足元に転がす。そのまま周囲に「後退開始」と言って二階の階段に向かって移動する。背中からは、シュー、という排煙音が転がる男のうめき声をかき消していく。


 榊は移動しながら、端末で時刻を確認した。五分が経過している。残りは十五分だ。作戦の進行は順調だ。数丁とはいえ、ハンドガンを奪うことも出来た。

 榊は端末を取り出した。


「全方面の監視に告ぐ。こちら榊、相手の状況を報告せよ」

「こちら北側。敵は集結して静止。数は16」

「こちら西側。数は12。同じく待機しています」

「こちら東側。数は14。敵は窓に張り付いてバリケードを突破中です」


 順調だ。

 正面とは違い、各方面には開けた玄関がなく侵入経路は窓だけになる。特に稽古場がある北側は窓すらほとんどない。それらの方面には、特に入念にワイヤーを張り巡らせてある。加えて、窓の下には、警戒音センサーなども設置した。突入前にアラームが鳴り、窓にはピンと張りつめられたワイヤーが何本も覗いていたら、突入を躊躇するのが優秀な指揮官というものだ。


「各方面の一階の部隊は、二階への後退を開始せよ。二階に後退した部隊は登り階段で最終防衛陣を構築せよ」

「「了解」」


 榊は端末から口を離して、気を引き締める。

 順調ではあるが、以前、状況は不利なままだ。こちらは戦力を二階に移動させたが、これ以上の逃げ先はない。冷静になった相手が、丁寧に攻めてくれば死者が出るだろう。やはり装備の差は大きい。これ以上は、凄惨な殺し合いなる。

 榊は二階の窓に近づいて、そこから東棟の屋上を見上げた。屋上のフェンスごしに、周囲の様子を伺っている白髪の少年がいる。


 さぁ、どうするんだロク。

 お前があのニィ隊長と同じ存在だというのなら、何とかして見せろ。


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舛本つたなの別作品リンク
公爵令嬢になったお腐(ふ)くろさん、(以下略)

本作を大幅に書き直した書籍版(kindleなどの電子書籍もあり)です。 下の画像で出版社さんのサイトに飛びます。 下読みもできますよ。

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