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bloodAseed  作者: 伊織
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06話し合いを試みる



ふわりと鼻孔をくすぐったのは土の匂い、あぁとうとう異世界デビューですか俺。

と、虚しくなる気持ちを抑えて目を開くと


そこは瓦礫の山でした。見渡す先は瓦礫、そして所々残る石造りっぽい建物の痕跡。周囲は鬱蒼と生い茂る木々。そして瓦礫の背後には、無数の石柱、何か文字らしきものが刻んでるのが遠目でも確認できた。まさかこれって…


「………、おい猫」


「 ニャァ? 」


ここは何処だ?







◇◇◇






元魔王猫が言うには、此処は勇者一行…つまりユリウス達が乗り込んだ魔王の住処、そして魔王の神を信仰した奴らの行き着く果て。『墓標の海グラープマール』と呼ばれていた所らしい。

不吉な名前つけんなよ…と突っ込めば墓標の海になったのは他の神々が送り込んできた奴らにほぼ殺された…から、なんて胸糞悪い話を聞いた。

殺されては魔王が墓標を刻み続けて、とうとう独りになった時に俺が操作する勇者が来て全て諦めていました…なんて言うな。その後俺のとった行動をキラキラと嬉しそうに語るな猫、止めろ止めてくれ出来心だったんだ。切々とあの時の心境を俺に訴えないでくれ!



「で、その話は置いといて」


結局この場所に転移されても俺達に何をしろって言うんだ。魔王の神は。そう猫に問えば僅かな間空を見上げて一言



「 神 力取り戻したい 」



だいぶ猫の姿に慣れたのかカタコト喋りじゃなくなった猫が少し怪しげな発音で俺とユリウスを交互に見つつ言う。



「 他の神の使徒、皆殺し 」

「ちょっとまてっ」



不穏な発言が飛び出して俺は慌てて猫の言葉を遮った。今聞いてはいけないワードが出ましたよね?

俺は普通の一般人!殺し殺されなんてお断りなんです!



「簡単なことですね、早速殲滅してきましょうか」



ユリウスゥウウウウウウウウウ!お前も待てよ!

にこやかな笑顔で何言っちゃってるかな、この元勇者は!そんっなに仲間だった奴らと一緒だった頃の記憶が不愉快ですか!猫の説明だとゲーム中の記憶もちゃんと残ってるって話だったけど、不快ですと表情に出す程嫌でしたか!

味方陣営下種ばっかりだったけど、殲滅しようとか笑顔で答えるんじゃない!



「駄目ですか?シロ様もアイツラには相当ご立腹だと思ったのですが…」

「ご立腹でしたが!別の手段も考えよう、な?なっ?」


「 いずれ皆死ぬ 」

「その口、閉じようか猫」



ふっ、とシニカルな笑みっぽいものを浮かべて哲学発言しなくてよろしい。ガッカリ感も出さなくて良い。こいつら結構脳筋なのかもしれない。所謂、戦闘馬鹿。

駄目だ…その内ヒャッハーして敵のド真ん中に突撃する姿しか思い浮かばない…。


どうしよう俺にこいつらの手綱取れるのかな…胃が痛くなってきたぞ…



「平和的にいきたいが駄目なんだろうか…」



ぽつりと零した言葉に返ってきた反応は、ユリウスはにっこりと笑顔で無理でしょうねーと否定。猫は相手は殺す気なのに?と不思議そうな表情。


で…ですよねぇ…。



「もう…山奥に篭りたい…」



ヘタレ現代人にはハードルが高すぎるんだって…世界最高峰へ登山チャレンジ!ただし普通の服装で並みに高すぎて心砕けて粉々になった後、風に吹かれて修復不可能レベルまで散っていく…。



「……その問題は後に丸投げしといて、さ」



そうだ話題をそらせばいいんだ、と俺が気付いたのは周囲に夕闇の気配が漂いだしてからだった。現状、瓦礫の山の一角を片付けて(主にユリウスが)申し訳程度に雨風しのげるかも、な場所で長時間二人と一匹で固まってた訳だが、今後を考えるとこの状態はやばい。



「とりあえず住処とか…食料とか服とか…後は風呂とか風呂とか風呂だとか!まず目先の問題を片付けなくちゃいけない!」



風呂。それは人生の楽園、譲れない一線だ。風呂のない人生なんて耐えられない!百歩譲って入浴剤は諦めよう、だが…風呂は諦められないっ…!



「そうですね…せめてシロ様の服だけでも何とかしないといけませんね」



ちらりと俺を見てユリウスが同意を示す。…ぶっかぶかローブに包まってる状態の俺を横目で見て、だ。そうだな…俺は今裸にローブなんて変態くさい格好だ…だが!



「俺の格好とかどうでもいいから食料と寝場所と風呂は最低限必要だろ!」



服とか二の次、三の次!

温かいご飯とお風呂と寝床は欲しい、贅沢は言わないから!ご飯も木の実とかで良いから、お風呂も今日は我慢するから!寝場所確保しよう!


そう必死さを滲ませた笑顔で猫とユリウスに語れば、猫が忘れてたわーと地面を軽く蹴ってユリウスの腰あたりにぶら下がった。一体何をしてるのかと注視していればゴソゴソと何かを探る音。

ユリウスの腰から下がるベルトに付けられた黒い革製のポーチから取り出したのは光を反射して煌めく銀色の指輪。真ん中に一つだけ嵌めこまれた石は黒。徹底してるなオイ。

猫は器用に前足へ指輪を引っ掛けて俺の方へと持ってきた。何だコレ俺に嵌めろと?

首を傾げつつ右の中指にそっと嵌めれば


ポーンと軽やかな電子音が響いてアイテムボックスを使用しますか?と俺の目の前に見慣れたブラッドアシードのウィンドウが現れた。

……な…んですか…これは…えっ?まさか…



「 神から貰ってきてた 」

「あぁそうでしたね、では直ぐに用意しましょうか」



ほのぼのとした口調で同じようにポーチから指輪と首輪を取り出して装着する猫とユリウス。首輪は単独でつけれなかったのかユリウスが猫につけてた。



「えーと、ありましたよシロ様。」



何もない空間に指を滑らせてスクロールする様に動かしていた指先を言葉と共にタップさせた瞬間、彼の空いていた左手の上に軽い何かが落ち、とさりと音が響いた。どうぞ!と渡されたものは子供用の衣服。彼の真似をして俺の目の前にあるウィンドウを操作しボックス確認をすれば中身は充実のラインナップでした。

神よ……何故こんなにも用意周到なのか。俺のボックス内にあるのは子供服ばかりで思わず溜息が洩れる。

イベント用子供服フリル付き、お出かけ用子供服クラシックバージョン、キュートバージョン、シックバージョン…神よ…神よ…



「何…コレ…」



灰化しそうな俺を横目に楽しそうにボックス内から色んな食材や、テントっぽいものや寝袋を取り出す猫と彼。


……

………

こいつら…しめていいかな?



「は…早く言えよぉおおおおおおおおお!」



お願いだから後出しは止めてくれ…必死になって言った俺が可哀想なヤツになるだろ













今日はまだ更新予定

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