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遺稿  作者: 緋色友架
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第惨章 駄作(堕錯)


 3ヶ月かけて、ようやく1編の物語を書き上げることもあった。

 早ければ1ヶ月、最速で2週間。筆が進まなければ構想から2年ほどの年月をかけることさえあった。しかしどれほどの時間をかけたかなど、そこまで重大な問題ではない。重要なのは、肝要なのは、私の、藍色友忌という人間が有する有限の時間の内の何割かが、小説を書くという行為の中に空費させられてしまったということだろう。

 空費。浪費。

 正にその2文字が相応しい。

 私とて人間だ。人間という生物は無駄に知能が発達してしまったが故に、生きる意味なんて益体のないものを考えずにはいられない。私にしてみれば、小説家になることが夢であり、目標であり、生きる意味でさえあった訳だ。つまり小説を書くという行為、執筆という行いは自身の意味を確立する為の手段でありステップであり――――実らなければ、なんの意味もありはしない。

 駄作だという烙印を押される為に書かれた小説などありはしない。

 門前払いをされるような小説を書く為に使った時間など、まったくの無駄でしかない。

 無駄。無駄。無駄。無駄。

 私は今まで、一体何日分もの時間を無駄に消費してきたのだろう。実らぬ夢の為に、叶わぬ目標の為に、人生の何割をドブに捨ててきた?

 …………いや、こう書いてしまってはまるで、私の人生が新人賞の審査を行う方々によって潰されてしまっているように聞こえなくもないが、私は決して、そんなことを言いたい訳ではない。

 例えそれが、事実の一側面を容赦なく抉っているとしても。

 私のことを駄人間だと貶めているお歴々に罪などというものはない。彼らはそれが仕事なのだから。他人の夢を、目標を、努力を、時間を、完膚なきまでに叩き潰すのが彼らの仕事であり職務であり義務であり収入源であるのだから。

 まったくもって、仕方のないことであろう。

 私の人生が無駄に消費されているのは、あくまで私自身の責任である。駄作しか書けない私が、審査員の方々の目を汚すことしか出来ない私が悪いのだ。仮に審査員の方々が『こんなくだらないもの書いてんじゃねーよっ!』と怒鳴り声を上げたとしても、それは致し方ないことだろう。

 全て、私が悪いのだから。


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