2 それぞれの関係
葵と聖夜が出会った翌日。まだ、学校の授業は本格的には始まっていない。
「茉莉花!」
「アオイ?」
「やっと追い付いたー。ったく、なんで起こしてってくれへんのや。」
「私ハ、声カケマシタ。アオイも返事シタデショウ?」
「んな…イケズ言わんといてや…。」
朝、校門をくぐろうとしていた金髪碧眼の美少女に、葵は後ろから声をかけた。
彼女の美しさに気後れしてか、それとも先日の入学式で、新入生代表の挨拶をしたのが彼女だったからか。
彼女…茉莉花のまわりには、遠巻きに人がいるだけで、簡単に近寄ることができた。
「ま、えぇか。クラスの前まで一緒に行こーか。」
「ハイ。」
新入生代表は、入試をトップの成績で入ってきたものがする。
だから茉莉花は、この成績順でクラス分けをする学校で一組の特進クラス。
葵とはクラスが隣なのだ。
「おはよー!茉莉花ちゃん!」
校内に入ろうとしたところで、また後ろから声がかかり、今度は二人して振り返る。
「エミさん、カンナさんも!」
話し掛けてきたのは、二人の少女。
豊かな黒髪を持った長身の少女と、肩程までの栗色の髪の少女。
「お友達なん?」
「ハイ、同じクラスで。コッチがカンナさんデ、コッチがエミさんデス。」
「竹内神奈です。」
「桜井愛美でーす!」
黒髪が神奈、栗色の髪が愛美だ。
「カンナさん、エミさん。コノ人は、」
「蘇良葵っちゅうもんや。よろしゅうな、お二人さん。」
「こちらこそ。」
互いに挨拶し合い、笑顔を交わす。すると…
「おい!ったく、どうしたんだよ、いきなり走りだしたりして…」
また声が…しかも聞き覚えのある、男子の声がした。
「あれー。聖夜、やっと来たんだ?おっそーい。」
「お前が何か落としたから拾ってやってたんだろーが。」
「愛美、何か落としたの?」
「ほらコレ。カバンに付けてたろ?お前。」
「あー!取れちゃってるー!!ショック~。」
とても親しげな三人。会話からして、登校も一緒だったのだろう。
たが、そんなことより…
「白河?」
「ん?あっれー、葵さんじゃん!何、お前ら知り合い?」
「おはよ、白河。」
「あ。はよー」
「葵さんとは、さっき知り合ったとこよ。隣の茉莉花ちゃんと、クラスが一緒なの。」
「昨日、仲良くなったんだぁ!」
神奈と愛美の言葉に、聖夜は茉莉花を見やる。
「へぇ、この子がさっき言ってた…。成績トップのかわいい子?」
「え…」
「そーそー!ね、かわいいでしょ?」
「そんなコト…ナイ…です。」
「えー。だって、かわいいじゃん、ねぇ?聖夜。」
「愛美、茉莉花ちゃん困ってるでしょう?」
「まぁ、確かに。かわいいってことは否定しねぇけど。」
「でしょぉ!!」
「愛美。」
「はぁい。」
なぜだろう…葵は孤独感を覚えた。
-って、アホか!-
「白河。そろそろ予鈴鳴るで?」
「え、マジ?!やべっ!!行こ、葵さん。じゃな。神奈、愛美。またね、茉莉花ちゃん。」
聖夜に手を引かれ、葵も走りだす。
「え…白河?!…あ。またなー、茉莉花。」
「ハイ!」
二人は…驚いたり呆れたりしてる三人を残し、校舎に向かって駆けていった。
,
本日2話更新
8時掲載予定