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裁判

お待ちいただいていた方も、そうでない方も、お久しぶりです。

というか、二か月ぶりです!

ご感想をいただき、宣言通り、更新いたしました。笑


 今日と言う日を、私は心から待ち望んでいた。


 今私たちは、神殿に居る。私たちと言うのは、私と、守人、宰相さまに陛下、そして、主犯格であるルイス、そして、私を襲った男だ。その他には、審議員が五人。この人たちはこの裁判の証人となるために此処に居る。


「…さて、役者はそろった。はじめようか。」


 王の一言で、神聖な場所の空気がさらに引き締まった。私は緊張して身体を固める。それを見ていたクーンさんが、近づいて来て両手をぎゅっと握ってくれた。


 顔を見上げると、優しく微笑んでくれる。私はそれに力無く笑顔を返した。


「今回の審議は、<最後の乙女>さまの拉致監禁、そして、禁術の使用である。審議長はこの私、トロン・ライルシアが務める。よろしいですか?」


 その言葉に審議員全員が頷き、審議が始まった。


 あの事件から、二週間が経つ。その間に、私たちは情報集めに奔走した。一番大きな収穫は、ライトから貰ったもの。貴族のご婦人や男性に人気があると言っていたように、噂話がたくさん入ったようだ。


 それに感謝しつつ、情報を元に色々と調べれば、出てくる出てくる。いっぱい黒い証拠が手に入った。さらにもう一つ踏み込んだ証拠が欲しかったけど、今回はそこまで間に合わなかったから、審議の結果が出た後にでも明らかにしようと思う。


 んで、審議に入ろうか、ってところで、私はそんな気分にはなれなかった。


 毎度毎度の事だけど、原因はジュノだ。法被着て、右手にはリンゴ飴、左手にはバチ。って、なんでやねん!太鼓も無いのにバチって…きっと使い方分からずに持ってるんだなぁ。


 つっこんでやりたいのは山々だけど、生憎そんな雰囲気じゃない。実行したら確実に白い目で見られるから我慢した。


「今回の一件はルイス殿その一派数名が起こした事、でいいのですね、乙女さま。」


 裁判長は私を真っ直ぐ見て、確認作業に入る。私は問われる事をどんどんと答えて言った。


『私は意思を奪われ、魔法さえ封じられました。何をする気力もなくなり、次第に身体は言う事を聞かず……』


 言葉を詰まらせた私に、温かい手が差し伸べられた。もちろんそれは大好きな人のもので、一瞬で心の温かさを戻してくれた。


 大きな咳払いをされて視線を外したけど、恐らく覚られたであろうことに恥ずかしくなった。きっと、いや、絶対顔真っ赤だ。


 うん、今度からは気をつけるよ。


「乙女さま…何をおっしゃられているのです?貴女は私たちのものでしょう?だって、私を守人にすると言ってくれたではありませんか。」


 縋りついて来ようとするルイスを、クーンさんが阻んでくれた。


 てゆーか、そんな事を言った記憶は微塵もない。何か言わないと私のこともクーンさんやレークさんのことも殺しそうな勢いだったじゃん?だから、嘘の守人のことを告げたまで。


 ジュノには怒られちゃったけど、私はああ言ったことを後悔してない。


「あーあ、まどろっこしいことやってるねぇ。ここまできたら言っちゃいなよ。貴方は一生守人になることはありませーん。だって、もうここに居るんだもーん、てね。」


 あー、ホントに緊張感ないなぁ。

 私はジュノを睨みつけ、小声で黙れと言った。


 神様に対して失礼だって?そんな事はどーでもいい。私は、この国に巻き込まれただけだしね。クーンさんの願ってることじゃなかったら聞いても無いっての。


 若干イライラし始めた私は、この裁判ですら面倒なことに感じてきてる。だって、こんなのオウサマに報告すれば済む話だし、神様の前で裁く必要があるなら、その席にジュノを呼べばいいだけだ。


 この国の人たちがどこまで宗教を信じてるかは分からないけど、私のことを<最後の乙女>だと知ってるなら、そのくらいの考えをしてくれてもいいと思う。


 ってゆーのは、きっと私の怠惰。だけど、それくらい面倒な事だと思っちゃうんだから仕方ないよねー…


 私の背に手を置いてくれているクーンさんがジュノを見ているのは確実なのに、その行動に対して一切反応しないのはすごいと思う。私なんか、ルイスの頭の上にうかんでるジュノが可笑しくて仕方ない。


 奴はきっと私を笑わせに掛かってる。ふん、掛かってたまるか。絶対笑ってなんかやらないんだから!


「乙女さま、今のルイス殿の言い分が事実だとすれば、貴女に非があることになります。弁論は何かありますかな。」


「乙女さまは、私を見捨てたりはしない。そうでしょう?」


 怖いっての!目がイっちゃってる。


 クーンさんが間に入ってくれてるけど、あの目は私の心を震わせた。でも、怖がってる場合じゃない。私はクーンさんの背後から出て、ルイスを睨みつけた。


『私は言いましたよね?意思を奪われた、と。監禁されている時、次第に思考以外の感覚を全て奪われました。思ってもいないことを言ったり、行動に出たりというのは茶飯事のこと。しかも、それは魔法によりもたらされたものです。証拠は…クーンさん、ありますよね?』


 必殺、涙目!ウルウルとした目で見つめると、審議長のおじさんは哀れみの視線を向けてきた。


 うふふ……騙されてる!とか、腹黒さ全開だけど、気にしなーい。


 世の中にはったりは存在するもの。嘘の間に真実をいれると、より真実味を増す。(今回は内容が真実で、私の今の猫っかぶりが嘘。)その原理はおじさんには通用してくれたみたいだ。


 その代わり、横で笑いを堪えてる不謹慎な人には一発制裁をくれてやった。レークさん、私が素じゃないことで何かすると、絶対笑うんだよね。


 おまけに、ジュノってば目の前でお腹抱えて笑いやがって……!指差すな!私は怒りを顔に出さないように何とか堪えた。


 こんな中で、表情を崩さなかったのはクーンさんだけだ。私がお願いした証拠を、審議長に提出してくれた。


「これは?」


「ルイス殿が乙女さまにつけた魔法封じの腕環です。その宝玉にはそれだけでなく禁呪がかかっております。一度こちらで調査し、陛下に報告しましたが、私の言葉で信じられないのならば、再調査していただいて結構です。」


 堂々としてるクーンさん、格好良いです!無表情なのがちょっと気になるけど。


 でも、その態度のおかげか、審議長さんはその証拠を認めた。となると問題はこっちの男。ルイスは可笑しな表情で私を見ていた。


 歪んでるけど、それでいて恍惚としている。ふたつの感情が混じったみたいだ。


「乙女さま……」


 うー…もうこっち見んな。


 そう言いたい。だけど、そうもいかない。この国に巻き込まれるにしても、厄介な事は早めに除去しときたいもん。このまま放置したらとんでもないことになりそうだからね。


「それならば、守人は、守人はどうなったのです?」


「ほーら、ほら。言っちゃえー。ズバッと格好良く決めてよ。」


 茶々入れないでほしいよねぇ。


 ジュノは他の人に見えないことをいいことに、さっきから喋りまくり。そんでもって、神とは思えないほど贔屓した考えに偏ってるけどいいの?って小声で聞いたら。


「構わないよ。こっちの世界に巻き込んだって言うのに、その乙女を苦しめようって言うんだ。」


 ジュノ曰く、お仕置きが必要らしい。よくわかんないけど、ジュノがそれでいいって言うんなら、良いんだと思う。


『審議長さま、発言を許していただいても?』


 許可を取ってから喋り出す。ルイスが聞きたいと言っていた守人のことを。


『私は意識を操られる前に、身の危険を感じました。それは、守人にも及ぶと思われたため、私は時間を稼ぐために嘘をつきました。まずは、その謝罪をさせてください。』


 私は深く頭を下げた。本当なら、この謝罪も不必要だと思うんだけどさー。私の本能が下手に出ろって言うからそうしたまで。


 さて、ここからが本題だ。私は真実を告げなければならない。


『そしてルイスさま、本当のとこを告げさせていただきます。』


 私は真っ直ぐにルイスを見据えた。



これからは亀更新になるとは思います。

それでも完結が近いので、できるだけ頑張ってみようと思います。

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