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ヒトリゴト


 最近さぁ、僕の出番がめっきりないんだよねー。みんな、僕の存在忘れてない?


 僕って存在は尊くて、人から慕われる。なのに、最近僕の乙女までが僕の事を忘れている。ホント、失礼しちゃうよねぇ。


 それにさ、乙女の周りの人間がきな臭くて仕方がない。とか何とか思ってるうちに、とんでもないことになっちゃった。さっさと注意しとけばよかったな。



 乙女は訳の分からない男にさらわれた。残念ながら、物には触れられるけど、ニンゲンには触れられない。助けたくても、どうにもしてやれなかった。


 乙女とは最初のうちは話せた。僕の言葉と偽って喋った事は注意できたし、本当はその判断に対して感心してるからいいけど、その後が問題。


 何故か分からないけど、乙女が僕の事を見れなくなってしまった。



 目の前に現れてみても、話しかけてみても、乙女は一向に反応しない。そのうちにご飯も食べなくなって、どんどん衰弱していった。


 神と言う存在であるのに、何もしてやれないことがとても歯がゆい。そのうち、乙女は感情をなくしたようにボーっとしているだけになった。


 原因は分かっている。おそらくあの男が乙女に付けた腕環が原因だろう。あそこから魔力を感じるし、何か分からないけど、よくないものの源だと理解できる。


 残念ながら何の魔法を掛けたのかまでは見てなかった。それでも、取り除く事はしてやれる。そう思ったのに、僕の手はそれをすり抜けた。つまり、物であるにもかかわらず、触れる事が出来なかった。


 この時、僕は本当に焦ったんだ。せっかく別の世界からこちらに引っ張り込むことで助けられた乙女を、こちらの事に巻き込んで死なせてしまうと思ったから。



 あ、僕、いつもふざけてるようで、本当は真面目なんだ!乙女を和ませようとして馬鹿みたいにしてるだけなんだよーぅ。


 あ、今信じないとか思ったね?ま、いいさ。信じるか信じないかはキミ次第。神を信じれば信じない人もいるしね。神の中には自分の事を信じる人しか見守らない奴もいるけど、僕はみんな平等に扱ってるからね!安心していいよ。あー、ホント僕って神様の鏡だよねー。キミもそう思わない?


 思わず脱線しちゃった☆でも、僕の事もみんなに知ってもらいたいんだよー。


 で、乙女のことだったね。彼女、何だか知らないけど操られるようになっちゃって、あの男に対しては否定的な事を言わなくなった。そうなる少し前からその男が神殿に来て自分を守人にするように祈ってたけど、僕は迷わず無視してやったんだ。


 あ、こんな事言ったらいけないね。神様は平等でなければいけないし、崇拝どうこうは置いておいてすべての人を見守る事が僕の信念だって言ったばっかりだし。


 だけど、乙女のこととなると別。ほら、人には許容範囲ってあるでしょ?って、僕は神だけど。

僕の触れてはいけない怒りの琴線は乙女の事。ほら、あの子って怒りっぽいし、腹黒過ぎるけど、可愛いでしょ?だから、あの子を傷つける事はどうしても許せないって言うか。まあ、そんなとこだよ。


 こんな風に緩く言ってるけど、僕今回そーとー頑張ったんだよねぇ。一応感情がある僕は、その変化が天気に現れる。大荒れになるところだったんだから。乙女が空をいつも眺めてたから、頑張って晴れるようにしたんだ。


 チキュウのおもちゃとかアニメとか、漫画、特に乙女のいたニホンのものに集中して頑張った。そうしたら、見事晴れてくれるでしょ。褒めて欲しいところだよね。



 もうひとつ褒めて欲しい事があるんだよーぅ。僕って、人を選ぶ才能があるみたいなんだよね。本当にいい人を守人に選んだと思う。いつも乙女の事を考えてくれるし、クーンに至っては溺愛でしょ?まあ、あれには目も当てられないけど。


 それでも、あの子はあの子で苦労してるし、二人が出会った事もある意味運命だと思うし。良かったんじゃないかな。


 だけど、あれはやり過ぎだよね。乙女を必死に救い出したのは褒めてあげたい。忘れられてたし、しばらく一緒に居たいのは分かるよ?でも、あれはイチャコラし過ぎだよね。


 僕はすごく、ものすごーく心配したわけ。なのに、どうだい、あの雰囲気。全然出ていけない。てゆーか、今の二人には他の人が視界に入っていないんだよねぇ。


 何時になったら呼んでくれるのか心配しつつ、それでも二人の和やかな雰囲気が長続きてくれる事を望んでしまう僕は、心底いい神様だと思う。


 どうにかこうにか、今回の事は簡単にまとまって欲しいねぇ。ま、僕は口出しすることしかできないけど。あの男にはどうやって制裁を与えてやろうか。それは後々考えるとして、僕はとりあえず、乙女に呼び出される事を祈っているよ。


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