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妖精‐その2‐

明日提出の課題が終わっていない...

しかしこっちはサクサク進む。笑


では、続きをどうぞ。



「悪い、遅くなった。」


 嫌な思考を遮るかのように、今度はノックもなくドアが開いた。


 お前もか!と言うツッコミはもちろん言えるわけもなく。私はおはようございます、と朝の挨拶をするだけだった。


 そんな姿を見かねたのか、ここまで口を閉ざしていたミリアが口を挟む。


「お二方とも、女性の部屋を訪れるのはいけないことではありませんが、ノックと返事を聞いてから扉を開けることを忘れないで下さいまし。


 もし着替えの最中だったらどうするおつもりですか。」


 そう言うと、朝食の準備をしてきます、と残して出て行ってしまった。


 ちょっ、ミリア!言い逃げはないよ!この空気をどうしてくれようか…


 紛れもなく気まずい雰囲気が部屋一杯に充満していた。


「…すまなかった。」


 しゅんとして謝罪を述べてきたのはクーンさん。


 どどどっ、どうしよう?!…可愛いんですけど。


 美形は何しても許せる気がするのは私だけだろうか。いや、確か例外(アホ神)もいたっけ。ま、どーでもいいことは置いとこう。


『あの、大丈夫ですから。でも…着替えてるところは見られたくないので、今度からはお願いします。』


 てゆーか、見たくもないもん見せられる方が可哀相だしね。見て減るものじゃないって言うけど、見られて減るものならとっくに悲惨なお腹を晒してる。


 でも、そんなの見た人の方が不愉快でしょ?ってなわけでお願いに至った。


 その後にレークさんも謝ってくれ、三人で朝食をとる。私が違うところから来た事を知らない人に話を聞かせることはできないため、クーンさんは人払いをしていた。


 もちろんミリアも。ちょっと淋しく思ったけど、味気ない食事に日本製の調味料を加えるのにはちょうど良かった。


 最早口を開いたのはクーンさん。


「ネイの立場はレークの再従兄妹<はとこ・またいとこ>と言うことになった。遠い土地からやって来たので、この国のことはよく知らないという設定だ。」


 あいあいさ~。立場をごまかす為の嘘ってことですね。了解いたしました、と肯定するために首を縦に振った。


 カチャカチャと音を立てながらナイフとフォークを扱う。確かフランス料理のマナーだといけないことだった気がするけど、生憎こっちは毎日箸を使って食べるという文化に染まってる。


 今さらだけど、日常でたとえナイフとフォークを使っていたとしても、ファミレスで、とかで、マナーを習ったことはさっぱりない。


 ごめんなさい、と内心思っておきながら、口にすることは言い訳じみてて気が引けた。


「この後のことはレークに頼んである。ネイは心おきなくこいつに迷惑をかけるといい。


 昼と夕刻には顔を出す。それまで、この世界について知りたいことを聞き、自分の状況を把握して、俺たちに話してくれ。」


 いいか、と聞かれ、大きく頷いた。昨日の私のあり得ない戯言を信じてくれているだけで嬉しい。なのに、それに加えて私を支えようとしてくれてる。


 もう、感謝、の一言しか出てこない。


 だから。

『…有難う御座います。』


 深々と頭を下げた。座っている状態だったから、テーブルに頭が付くぎりぎりまでだけど。


 すぐに頭をあげろ、と言う声がかかり顔をあげると、気難しそうな顔をしているクーンさんと、にっこり微笑んでいるレークさんがいた。


「ネイさんは私の再従兄妹なんですから、親類に感謝の言葉など不要です。さあ、朝食を続けましょう。」


 優雅に食事を続ける姿を不躾ながらにじーっと見つめてしまい、クーンさんが私のことを見ているなんて気が付かなかった。


 食事が済み、昨日と同じくお茶を飲みながらのんびりとしているとノックの音が部屋に響く。それは返事を待たないまま開いた。


 …ここの人たちは礼儀を知らないのか?


 なんて思っていると、クーンさんに向かって似たような紺色の制服らしきものを着ている男の人が近づいてくる。片膝を立てて傍らに膝間づくと、用件を述べようと口を開いた。


「宰相殿がお呼びです。」


「用件は?」


「大臣たちが疑問の声を上げているようです。昨日のドラゴンの使用についてと、城を抜け出した件について。


 早急に、とのことで、失礼ながらも朝食の時間に参りました。」


「そうか。」


 二人のやり取りを顔を見ながら交互に見てしまった。映画のワンシーンみたいでちょっと格好良い。


 ボーっとカップを持ちながら見ていると、足元に何かがトンッと当たった。


『……?』


 ああ、そうか。あんまり見ていちゃいけないってことね。


 私の座っている椅子を軽く小突いたのは、紛れもなく今も優雅にお茶を飲んでいるレークさんだった。


「わかった。すぐに行くと伝えてくれ。」


 “はっ”と返事をすると、男の人は私を一瞥してから大股で出て行った。


 誰だお前って目は痛かったけど、私の方こそ誰だお前って感じ。招かれざる客かもしれない。私だって不本意に訳も分からず、右も左も何も分からない状態でここにいる。


 それでも、客人の部屋だと言うことを忘れて欲しくなかった。


 …なんて、お世話になっといて私、勝手だなぁ。


「昼にここへ来るのは難しくなりそうだ。」


 ため息と共にカップを置く音。その眉間には皺が寄っていた。難しそうな顔はそれでも画になっている。


 けど、そのうち心労で倒れたりしそう。さっきの人の態度とかだと、偉い人みたいだから、板挟みとかにならなきゃいいけど。


 立ちあがったクーンさんを見上げると、一瞬だけ表情を緩め、おでこを軽く撫でた。



「その服も髪型もよく似合っている。まるで妖精のようだ。では、また。時間が開いたら様子を見にくる。」


 そう言うだけ言うとさっさと行ってしまった。途端に顔が熱くなる。


 何その顔、何その台詞!それこそ言い逃げだって。


『~~…・・っ!』


 声にもならず悶える。カップのお茶はもう温くなっていた。


「クーン殿があれほどまでに気を許しているのは珍しいですねぇ…ところで、その反応は何なのですか。」


 別段気にすることなどないでしょう、と尋ねてくるレークさんの反応こそどうした、って思う!


 イケメンは目に入れ過ぎると痛いことがよく分かった。学習して、次からは直視し過ぎないようにしないと!私の心臓が持ちません!


 スー、ハー、と深く深呼吸。心を落ちるかせるためにはこれが一番効く。


 ようやくそれを止めて目を開くと、レークさんはずっとこっちを見ていたみたいで、不思議そうな顔をしていた。


『すみません。落ち着きました。』


 謝罪の言葉を述べると、もう一杯飲むために女中さんに頼んで淹れてもらうと、二人きりになった部屋で面白そうな顔をしながら質問してきた。


「随分と混乱していたようですが、どうかなさったんですか?」


 どうもこうもないよ。ってのは説明にならないよね。てゆーか、そこ聞くんですか。


『いやー、男の人に触れられたことなんてなかったものですから、少々混乱してしまいました。』


「ご家族に男性はいらっしゃるでしょう?」


 はい、いますとも。


 お父さんがいますけど、そんなに関わりないし。


『年齢が近い男性、しかもイケメンなんて、私の周りには未だかつて存在したことなんてありません。


 だからどうも緊張してしまって。』


 そう言うと、また首を傾げている。どうやらここの人たちとは価値観が違うみたいだ。


「いけめん、とは何ですか?」


 …あ、そこですか。イケてるメンズ、なんだけど、めちゃくちゃな日本語は伝わらないってことか。


 ってゆうか、今さらだけど何で言葉が伝わってるの?


『クーンさんもレークさんも格好良い、と言えば伝わるでしょうか。


 うーん、顔が随分と整ってらっしゃるから、じーっと見られると、平凡過ぎる私にしたら心臓に悪いんです。


 きっと二人はおモテになるでしょうから、そんなことを思って勝手に緊張している私がいけないんです。慣れてきたらきっと大丈夫ですから、気にしないでください。』


 そう一気に言い終わると、一息ついて、お茶を口に含もうとする。けど、猫舌な私はふーふーと息を吹きかけて冷ます破目になっていた。


「“おモテになる”?」


 あー、伝わんないんだ。今度からきちんとした言葉に直さなくちゃ。


 まだ不思議そうにしているレークさんに“女性に人気で、たくさん言い寄られていそう”な事の意だと伝えると、納得したように頷いていた。


 やっぱりモテるんですか。


 ところで。


『私、日本語を話しているつもりなんですが、どうして言葉が伝わってるんでしょうか。』


 大き過ぎる疑問。さっき、レークさんの口元を見ていたら、明らかに日本語じゃない動き方をしていた。


 と、言うことは。


 レークさんたちが喋っているのは日本語じゃない。じゃあ、どんな言語を喋っているの?それがどうして私に伝わっているの?疑問は膨らむばかり。


 きっとそれはレークさんも一緒。


今夜は徹夜だ!

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