第19話 一仕事終えた後は……。美女の膝枕っ!! なんつってっ!!
「むっ」
なんか起きた。ふぁわあああ。ああ、眠ってたのか。今何時……。まぁ良いか何時でも。
ともかく何があったんだっけ? えっと――。ああ、そうだ。ゲームで経験値稼ぎしてたんだ。
それを遅くまでやっていて。それからぁ――。
それから、寝たんだよな。
んで――――。
「あ、起きました? ニートさん」
うん?
「おはようございます。ニートさん」
近くで声が。あとなんか頭が柔らかいものに包まれているような。
なんだべなんだべ。
「随分眠ってたんですね。もう10時ですよ。ふふふ」
あら智代さんどうも――。訓練はどうしたんだい?
それと、なんか頭がフニフニしてるね。これは。
ああ。
膝枕か。
あら――――。
16歳に膝枕されちゃってる。あらら。
「膝枕だね――」
「床、固そうだったので」
あら、そうなのか。優しい子だね。
でも独身の中年おじさんにそんな事したら勘違いされちゃうよ。あはは。
「訓練は良いのかい?」
「ちょっと休むのも良いかと思って」
「そっか」
空を見る。プカプカと浮かぶ雲。青い空。
うん、良い天気だ。青空って良いよなぁ。
「綺麗な空ですね」
「そうだねぇ」
あれ、どういう事になってるんだっけ? ああ、そうか。
昨日は思わぬ成長イベントに遭遇して、テンション上げて経験値取得してたんだっけ。
それで、沢山ゲームして朝になって。
ああ、それで彼女が来て。
こうやって膝枕されてる訳だ。
あはは、16歳の膝枕なんて色々とご褒美じゃないか。
良い思い出だなぁ。でも彼女が大人になった時なんでこんな親父に膝枕したのかって思うだろうな。
あはは。でもまぁ、今はやってくれるし、いっか。
「あともうちょっとでお昼だね」
「今日は何ですか?」
「冷やし中華かな」
「あ、やった。好きです冷やし中華」
「あはは、そうかい。良かったなぁ」
「ニートさんは」
「うん?」
「ニートさんは、穏やかな方ですね」
「そうかな?」
「はい。私の周りはハキハキした男性達ばかりだから新鮮です」
「まぁ無職の人間なんてこんなもんだよ。のんびり出来るからね」
「なら無職も良いかもしれませんね」
「あらら、俺なんか目指しちゃいけないよ。若者はもっと未来を目指して――」
「未来、ですか」
うんうん、明るい未来に。若者には必要だよー。明日を見る瞳って言うの?
そんな感じの希望というか。
「学校」
「学校、行きたかったな」
あら。
「学校行けなかったの?」
「まぁ、職業柄」
「そうか、軍人さんだもんね」
「でも後悔はしてません。こうしてのんびりと空を見られるのも平和の賜物ですよ」
「そうだね。学校言っていたらこんなおじさんを膝に乗せる事もなかっただろうし」
「ふふふ。そうですね」
「復学する予定は?」
「実は」
「実は、そういう話があるんです」
「あら、そうなのかい?」
「はい。もう私に有用性はないって話になって」
「だから、お役御免にって。そんな話が出ていて」
「そうなのか」
「学徒を利用するのは止めるべきだって。私学校なんて行った事ないんですが」
「時代が変わっちゃったのか」
「でもあくまで話があるだけで、私はまだ兵士です。だから」
「訓練、頑張ってるもんね」
「それが役に立たない世界になる。寂しいけど、それが平和っていうものなんでしょうね」
「全部終わった後はなんか保障とか貰えるの?」
「年金が出るって言ってました。あとは学習の為の施設も出来るって」
「そっか。流石公務員。福利厚生しっかりしてるね」
「そうですね。そうして世界は少しずつ普通になる」
「それで、良いのかもしれません」
「そうしたら友達といっぱい遊んで、勉強も沢山して、頑張ってね」
「こんなおじさんと戯れた日常なんて忘れて」
「いっぱい世界を楽しもうね」
「そうなってもたまに来ちゃ駄目ですか?」
「駄目。おじさんなんかとつるんじゃ駄目だよ」
「ニートさんは自分を卑下しすぎです。今はどこも人手不足ですし、どこか雇ってくれる所も」
「俺は好きでこの生活続けてる。色々言われる事もあるけど、でもこの生活以外出来そうにないし」
「色々ご苦労なされたんですか?」
「いや別に。ずっとゲームしてただけだよ。そんな大層なバックボーンなんて無いんだ」
「そうですか……。大人って難しいなぁ」
「そうだねぇ。大人って難しいよ」
「大人は難しい……。だからお一人で?」
「そうかもしれないねぇ」
そういえば魔王軍幹部だって言ってたあの女の子。名前なんだったっけ?
うわぁ。忘れてる。ふっと現れてふっと消えたから。
記憶力無くなってきてるのかなぁ。俺も年を取ったんだなぁ。
年、か。もう俺も36か。本当、早いなぁ。
なんでもない日々を過ごしてきて、いつのまにかこんな年になっちゃったよ。
姉さんが結婚して、たかしくんが生まれて。
たかしくんも小さい頃は懐いてくれてたけど、いつまにかニートニートって。
あはは、子供が大きくなるって早いなぁ。
皆色んな物を手に入れて大きくなっていく。でも。俺は何も変わらず年齢だけ重ねていく。
何も入らない。何も成長しない。そんなもどかしさもあるけど。
こうして風を感じながら空を見上げる日々もそんなに悪くないと思う。
他の生き方を選択した自分が想像出来ない。みすぼらしい生活だと罵る人達ばかりだけど。
でも。
こうしてのんびりと暮らしていくのが好きなんだ。
父さんも母さんも、姉さんもたかしくんも。みんなみんなニート野郎。馬鹿。ごく潰しだって怒る。
怒られる。罵倒される。蔑まれる。
それはきっと正しくて当たり前の事で。
でも。
ああ、久しぶりに人と長く話したから色々考えちゃった。
こういう時こそゲームをしたくなる。
テレビの前で無心にキャラを動かして何か得たり失ったりする。
それは現実の代替作業かもしれないけど。
でも。それがやっぱり楽しいから、どうしても続けちゃうんだよね。
「良いお天気ですね、ニートさん」
「そうだねぇ」
「今度耳かき持ってきますね。ちょっと溜まってますよ」
「あら恥ずかしい。でも駄目だよ。そういうのはもっと大切な人にしてあげな」
「そうですか。残念です」
「まぁ、どうしてもって言うなら~? させてあげても良いけど~?」
なんて。どうだどうだー?
「それならどうしてもって時にやってあげますっ!!」
あはは、中年の茶目っ気に付き合ってくれるとは。本当良い子だな。
でもこういう子こそ友達作ったり同年代の子と遊んで欲しいものだけど。
「あっ」
うん?
「二、ニート野郎っ!! 誰だよそいつっ!!」
あら、彼は。
結城くんじゃないか。
「ニ、ニート。き、貴様……」
なんかあたふたしてる? ああ、そうか。今智代さんに膝枕されてるから。
それで驚いちゃったかな? あはは、そうだよねぇ。不思議な光景だ。
「ニ、ニート……。なんだそいつはっ!!」
ん? あ、そういえば結城くんには……。あ、そうだっ!!
「ねぇ結城くん」
「な、なんだよこの浮気者っ!! この、このっ!!」
「ちょっとお願いがあるんだけど」
「は?」




