盗る妹が流行り、でもわたくしは与える妹。お姉様のために命をかけるわ。
「あら、お姉様。今日のドレスは一段と地味ね。まるでカビが生えたような色合いだわ」
妹のエフェルニアは、思いっきり姉フェリーヌのドレスを貶める。
エフェルニアに取って、一つ年上の姉は見ているだけでイラつく対象だった。
16歳のエフェルニア、17歳のフェリーヌ。
エフェルニアは、高貴な教育を受けてきた令嬢だ。
国王陛下に望まれて秘密の関係があった母が産んだとあって、国王の血を引いているプライドがあった。
王妃が嫉妬深い為に、秘密にされて王族として生きることが出来ない。
そして、母はバルト公爵と長い間、恋仲で、エフェルニアを連れてバルト公爵と再婚したのだ。
妻を亡くしたばかりのバルト公爵は思いを寄せていたエフェルニアの母、マリーと結婚出来てそれはもう喜んだ。
亡くなった妻との間にフェリーヌという冴えない娘がいたが、フェリーヌの意見など聞かずにさっさと再婚を決めて、家にマリーとエフェルニアを迎えたのだ。
国王陛下としては当然面白くはないが、王妃に頭が上がらないので、秘められた関係のマリーがどこへ嫁ごうが反対も出来ず。
エフェルニアは、マリーともども、歓迎されてバルト公爵家に出迎えられた。
バルト公爵はマリーを抱き締めて、
「やっと想いが叶った。君を迎える事が出来た。エフェルニアともども、大切にするよ」
「わたくしもやっと貴方との思いが叶いましたわ。ああ、なんて幸せな」
エフェルニアはそんな様子を冷めた目で見ていた。
エフェルニアは王立学園で孤独だ。
やんごとなき方の血を引いた令嬢‥‥‥
秘密にされているはずの血筋は、なんとなく皆、知っている。
母の実家は派閥には属していない伯爵家だ。
皆、エフェルニアには遠慮があるのか、親しく接しては来ない。
自分の姉になったフェリーヌ。
彼女の事は貴族なら誰しも通う王立学園で何度か見かけて知っていた。
公爵令嬢にしては、気が弱く、大人しい令嬢で、見ていてイライラしたのは覚えている。
もっと、自信満々に振舞いなさいよ。
バルト公爵家に婿に入る男は、フレール・ラセル公爵令息なのだが、派手な金髪に明るい青い瞳で美しく、女遊びが派手な令息だった。
色々な女性を侍らせて、学園でも問題になっているような酷い男だ。
それなのに、フェリーヌは何も言わない。ただただ、オドオドとフレールのご機嫌伺いをしている感じなのだ。
最近、あの女の母が亡くなったって聞いたわ。
母が嬉しそうに話していた。
あの女がわたくしの姉になるのかしら?
あああ、イラつくわ。なんで婿に来る相手に、あんなオドオドとしているの?
爵位は同じなのでしょう。それなのに。
それに同じ派閥の伯爵令嬢達からも馬鹿にされているじゃないの。
「あら、フェリーヌ様。今日もご機嫌うるわしゅう」
「いいお天気ですわね」
「は、はい。そうですわね」
「それにしてもフレール様ってなんて素敵。わたくし、観劇に誘われておりますの」
「わたくしは買い物に」
「フェリーヌ様は?婚約者なのでしょう」
「わ、わたくしは何も誘われていないわ」
「まぁ。婚約者なのに?」
「信じられない」
偶然、中庭で話をしているのを聞いたことがある。
派閥の令嬢達に馬鹿にされているじゃないの。
なんでもっと強く言えないのよ。
婚約者のフレールも、
「ああ、フェリーヌ。課題をやっておいてくれないか?婚約者だから当然だろ。君は勉強しか取り柄がないんだから」
「わ、解りました。やっておきます」
はぁ?なんで課題をやってあげちゃっているの?
おかしいでしょ。
見ていて何度もイラついた。
学園はエフェルニアが一年下でクラスも違うのに、何故かフェリーヌがフレールや、派閥の令嬢達にいいように使われているのを、馬鹿にされているのを見てしまうのだ。
そんなフェリーヌが自分の姉になるだなんて。
毎日毎日、顔を合わせなくてはならない。
なんであんな地味なドレスを着ているのかしら。
あれじゃただでさえ暗い顔なのに、もっと暗く見えてしまうじゃないの。
ああ、イライラするわ。
公爵家の娘なんだから、もっと派手に華やかに咲き誇りなさいよ。
父になったバルト公爵は、
「エフェルニアが我が娘になってくれて嬉しい。よい婚約者を探してやらんとな。大きな声では言えないが陛下の血を引いているんだ。それなりに良い家に嫁がせないと」
母マリーも微笑みながら、
「そうね。素晴らしい婚約者を探してあげないと」
エフェルニアには自分の容姿に自信がある。
国王陛下に似て鮮やかな金髪に緑の瞳。
鏡を見る度にそれはもう美しい自分‥‥‥
それに比べて暗い茶の髪、茶の瞳のフェリーヌ。
フェリーヌは共に食事をしているが、まったく話をしない。
俯いて黙々と食事をしている。
エフェルニアはテーブルを両手で叩いて立ち上がった。
「お父様、お母様。まずはお姉様の問題を片付けなくてはなりません」
バルト公爵は驚いて、
「フェリーヌの問題?フェリーヌは別に問題を抱えてはいないが」
母マリーも、
「そうよ。何が問題だというの?」
エフェルニアは、
「派閥の令嬢達にも婚約者フレールにも馬鹿にされておりますわ。我がバルト公爵が甘く見られている証拠です。ここはしっかりと周りに釘を刺さないといけませんわ」
フェリーヌは蚊が鳴くような小さな声で、
「やめて、わたくしが悪いの‥‥‥わたくしがこんなに冴えないから、わたくしが全て悪いの」
エフェルニアはバルト公爵を睨みつけた。
「お父様。どういう教育をなさってきたのかしら?」
バルト公爵は慌てたように、
「妻に任せていたから‥‥‥私は知らん」
徹底的に現状を改善するために、エフェルニアは動く事にした。
まずはフレール・ラセル公爵令息の行動を徹底的に調べさせた。
色々な女性達と浮気をしている。中には身体の関係がある女性もいた。
父バルト公爵と共に、フレールと、身体の関係を持っている女性リーヌ・フェルト男爵令嬢と、ミレア・カルバル男爵令嬢を呼びつけて、
エフェルニアは書類を三人に叩きつけ、
「我が公爵家としましては、婚約破棄を致したいと思っております。不貞をしていますわね。もちろん、慰謝料をしっかりと三人に請求させて頂きますわ」
フレールは真っ青な顔になって、
「慰謝料だって?フェリーヌはどうした?フェリーヌは何でも許してくれた。だから私は」
「だからって我が公爵家を馬鹿にしていいと?」
男爵令嬢達も、
「私達はフレール様に求められたから」
「そうよ。私達も被害者よ」
「でも、婚約者がいると知っていて身体の関係を持ったのでしょう。貴方達の家にしっかりと慰謝料を請求させて頂きます」
フレールは文句を言ってきた。
「婚約破棄は困る。そもそもフェリーヌがいけないんだ。フェリーヌが冴えない女だから私は」
「お姉様のせいに?不貞を犯した貴方がいけないのでしょう。貴族同士の婚約をどう思っているのかしら?」
バルト公爵も頷いて、
「そちらの家に、正式に婚約破棄を言い渡すことにしよう。そこの二人の女どもの家にも慰謝料を請求するからそのつもりで」
令嬢達は真っ青な顔になり、
「お許し下さいっ」
「どうかお許しを」
エフェルニアは、学園でフレールとデートをしてきたと自慢していた伯爵令嬢達にもしっかりと文句を言う事にした。
教室に三人を呼びつけて、
「貴方達にも婚約者はいるはずだわ。それなのに、フレール様とデートですって?」
三人の伯爵令嬢達は、
「フレール様が誘って下さったから」
「わたくし達はお付き合いをしただけですわ」
「身体の関係があったわけじゃないの。ただあの美しいフレール様と素敵な学生時代の思い出を」
「そう。学生時代の思い出を?」
エフェルニアは三人に向かって、
「身体の関係は無かったにしても、デートを重ねるうちに身体の関係に発展したかもしれませんわ。もしかしたらキスの一つでもしたかもしれないわね。ね?そう思いません?」
三人の令嬢達の婚約者の男性達がいつの間にか教室に入って来た。エフェルニアの言葉に頷いて、
「フレールとデートするとは」
「本当に尻軽で困る」
「婚約も考え直さないとな」
婚約者達の言葉に令嬢達は真っ青になった。
「許してっ。貴方に嫁げなかったらわたくしは」
「ただ、学生時代の付き合いよ」
「そうよ。ただ、デートをしただけよ」
三人の令嬢達の言葉に、令息達は冷たい視線で、睨みつけて。
背を向けて行ってしまった。
後に令嬢達は婚約破棄をされた。
新たな婚約者を見つけるのは大変だろう。
エフェルニアは、バルト公爵家の派閥の引き締めを図った。
16歳のエフェルニアにとって出来るのは王立学園での引き締めである。
社交界での引き締めは母マリーに任せておいた。
「わたくしがバルト公爵家の娘になったからには、徹底的に貴方達の引き締めを行います。わたくしとフェリーヌお姉様をしっかりと敬いなさい。逆らったらどうなるか。いいこと?」
派閥の令嬢達は真っ青になって、
「勿論、敬います」
「エフェルニア様。フェリーヌ様を敬いますわ」
「どうかどうか、お許しを」
家に戻ると、フェリーヌが真っ蒼な顔で、
「貴方、やりすぎだわ」
「やりすぎ位が丁度良いのです。お姉様。そのカビ色のドレスはおやめになって。もっと空色の明るいドレスを着てみません?」
化粧も明るい感じにするように、メイドに指示し、
空色のドレスを姉に着て貰った。
フェリーヌの地味な茶の髪も、豪華な巻き髪にしてもらい。
エフェルニアはフェリーヌの傍に行って、
「お姉様はもっと自分に自信を持たねばなりません。公爵家の娘なのですから。社交界のトップに君臨しなくては」
フェリーヌは悲し気に、
「お母様が、わたくしを愛してくれなかったの。お前みたいな冴えない娘なんて産まなければよかったって。だからわたくしは、自分の事を責めていたわ」
「お姉様は素晴らしいです。ほら、鏡をごらんなさい。着飾れば綺麗でしょう。だからこれからは自信を持って。わたくしと共に参りましょう」
「そうね。貴方の言う通りだわ。努力するわ。わたくし‥‥‥」
王立学園でもエフェルニアが付き添って、フェリーヌをなるべくサポートするようにした。
いつも孤独だったエフェルニア。
お昼ご飯も一人で食堂で食べていた。
クラスは違えども、フェリーヌと一緒に食べるようになった。
派閥の令嬢達が遠巻きに見ていたので。
「たまにはご一緒に如何?」
フェリーヌも微笑んで、
「貴方達が一緒に食べてくれると嬉しいわ」
「いいのですか?」
「わたくし達もご一緒して」
令嬢達はエフェルニアを怖がっているようだがフェリーヌには笑顔で対応している。
もう、馬鹿にするような令嬢達はいない。
フェリーヌを馬鹿にしていた令嬢達は皆、婚約破棄されて、親が怒って修道院へ行かされたから。
微笑みながら話をするフェリーヌを見て、エフェルニアは本当に良かった。そう思えた。
「お姉様。わたくしも孤独じゃなくなってとても幸せだわ。いつも一人でお昼を食べていたの。皆、わたくしに遠慮していて友達もいなかったわ」
「それはわたくしも同じよ。いつもオドオドしていて、誰かと一緒にお昼を食べるのも怖かったの」
二人して笑った。
フェリーヌと共に王宮の夜会に出席した。
華やかな深紅のドレスを着たエフェルニア。
爽やかな空色のドレスを着たフェリーヌ。
二人の令嬢達に男達の視線は釘付けになった。
フレールが転がるように二人の前に現れて、
「どうか、私と再び婚約をしてくれ。フェリーヌ。こんなに美しく化けるだなんて」
エフェルニアはフェリーヌに、
「お姉様。言ってやって」
フェリーヌは頷いて、
「貴方とは婚約破棄が成立しております。わたくしは、再び貴方と婚約を結ぶつもりはないわ。もう近づかないで」
フレールのやらかした事は社交界に知られている。
フレールは肩を落として、その場を去っていくのであった。
そこへオリビア王妃と、第二王子ディセールが現れた。
皆が一斉に礼をする。
「騒がしいわ。なんの騒ぎかしら」
エフェルニアがオリビア王妃に、
「申し訳ございません。姉の元婚約者がしつこく言い寄って来たので、追い払っておりました」
「そう。下賤な騒ぎは程々にして欲しいわね」
ディセール第二王子が、
「母上、しつこくしてきた男の方が悪いのですから。私もフレール・ラセル公爵令息の素行の悪さには呆れ果てていたのですよ」
そしてフェリーヌの方を見て、
「という事は今、君の婚約者はいない訳だ。私など、どうかな?生憎、隣国の王女の素行が悪く、婿入りの話が流れてしまった。バルト公爵家なら私の婿入り先の家として、贅沢すぎる程、素晴らしい縁だと思うが」
オリビア王妃が眉を顰めて、
「わたくしは反対だわ。あの女のいる家でしょう。愛しいわたくしの息子があの女のいる家に婿入り?絶対に許さないわ」
王妃は知っているのだ。
国王が母マリーを愛していたという事を。
母の心はバルト公爵にあったというのに、
だから、わたくしという娘を、国王の娘を‥‥‥
エフェルニアは王妃の前でカーテシーをし、
「王妃様。ディセール第二王子殿下の婿入り先として、我がバルト公爵家は申し分ないとわたくしも思いますわ」
「貴方が言うの?あの人の娘の貴方が。ああ、貴方、陛下にそっくりね。その眼差し。許さないわっ。絶対に反対よ」
そこへ国王陛下が会場にやってきた。
王妃付きの侍女が国王に今まであったやりとりを説明する。
国王陛下はオリビア王妃に、
「お前の気持ちは良く解る。すまなかった。だが、バルト公爵家にディセールを婿入りさせることは我が王家にとっても利になる話だ。だから私は賛成だ。正式にバルト公爵家に近々話を入れよう」
エフェルニアとフェリーヌは揃ってカーテシーをし、
「有難うございます。国王陛下」
「有難うございます」
ディセール第二王子は有能で、金髪碧眼の美男だ。
フェリーヌはディセール第二王子を見上げて、頬を染めている。
エフェルニアは、これで、お姉様も安心だわ。と胸を撫で下ろすのであった。
二日後、何故かエフェルニアはオリビア王妃に、お茶に呼ばれた。
テラスに用意されたお茶の席には、オリビア王妃とエフェルニア二人だけ。
人払いされていて他に誰もいない。
王宮の庭の薔薇が鮮やかに咲き誇っていて。
初夏の風が頬を撫でる、昼下がりの午後。
オリビア王妃は黒色のドレスを纏い、優雅にエフェルニアに向かって、
「さぁ、紅茶を用意致しましたわ。冷めないうちに」
そう言って微笑んだ。
エフェルニアはぞっとした。
紅茶の中に、黒い薔薇が浮かんでいたのだ。
それも小さな細工で作った薔薇が。
この王国では黒薔薇は貴方を憎んでいる。殺したい程にと言う言い伝えがある。
オリビア王妃は微笑みながら、
「貴方がこの紅茶を飲んだら、わたくしは、ディセールとフェリーヌの婚約を祝う事が出来るわ。だから飲んで頂戴」
この黒薔薇は毒?毒が入っているの?
でも、これでお姉様が幸せになれるのなら。
フェリーヌは語ってくれたのだ。
幼い頃から母に愛された事はなかった。父は自分に無関心だったと。
だから、自分に自信が持てなかった。
なんでどうして?わたくしはこんな冴えないどうしようもない女に生まれてしまったの?
とフェリーヌは泣きながら語ってくれた。
だからフェリーヌを慰めて、自信が持てるように付き添った。
空色のドレスも勧めて、暗い茶色の髪も豪華に巻いて貰って。
もっともっと高みへ。お姉様は高みへ登れるはずよ。
血は繋がっていないけれども、初めて出来た姉だった。
イラついた姉。どうしようもない姉。
でも、姉には幸せになって欲しい。輝いて欲しい。
だから、エフェルニアは紅茶を飲もうとカップを手にした。
リュード王太子とディセール第二王子が駆けつけて来て、
「飲んではいけない」
「近衛騎士、この紅茶を回収しろ」
オリビア王妃は笑って、
「何でもない紅茶よ。この娘の覚悟を知りたかったの。貴方は死にたかったの?毒かもしれなくてよ」
エフェルニアは立ち上がって、
「わたくしは姉フェリーヌに幸せになって貰いたかったのです。血は繋がっていなくても唯一の姉ですから」
「でも、貴方は国王陛下と血が繋がっているのだわ。あああああっ。わたくしの愛する国王陛下が‥‥‥あの女をっ。あの女が憎い。憎いのっ」
涙を流すオリビア王妃をリュード王太子とディセール第二王子が抱き締めて、
エフェルニアはただただ、それを眺めていた。
ディセール第二王子とフェリーヌは無事、婚約が成立した。
エフェルニアは心の底からホッとした。
フェリーヌはとても幸せそうだ。
ディセール第二王子はとてもフェリーヌに優しいし、紳士的である。
自分がフェリーヌを慰めて、高みに引き上げようと頑張ったのに、比べて、
フェリーヌは更に自分に自信をつけたようだ。
ディセール第二王子がフェリーヌに自信をつけさせてくれたのだろう。
「君は十分美しいし、有能だ。王立学園での成績も上位だと聞いている。私は君と結婚出来る事を誇りに思うよ」
「嬉しいですわ。ディセール様」
そんな様子の姉を見て、ちょっと寂しい思いがした。
姉は姉の幸せを見つけたのだ。
これから先、さらに姉を高みに引っ張っていって、笑顔にする役目はディセール第二王子で、自分ではない。
なんだか寂しさを感じた。
男爵家から慰謝料が払われた。
フレールと身体の関係があった令嬢達は、まともな結婚相手は見つからず、2人とも女好きの伯爵の元へ嫁がされた。妻が何人もいる伯爵だ。あまりいい噂も聞かない。
フレールはというと、両親が慰謝料を支払った為、フレール自身は反省もせず、ふらふらと遊び歩くようになった。
貴族の令嬢達にはもう相手にしてもらえず、下町で娼婦を相手に遊び歩き、学園にも来なくなった。
とある貴族のパーティで、屑の美男をさらって教育するという変…辺境騎士団の情報部長オルディウスと知り合った。
美しい銀髪碧眼で、情報部の貴公子と呼ばれているオルディウス。
オルディウスは、
「私もとある皇族の隠し子なんですよ。だから、貴方の気持ちが少しは解る気がしますね」
と優雅にワインを飲みながら労ってくれた。
だから、
「そういえば、姉の元婚約者フレール・ラセル公爵令息は金髪美男ですわ。貴方の騎士団の方々が好むのではなくて?」
「確かに。情報を流しておこう」
フレールは数日後、行方不明になった。
変…辺境騎士団がさらっていったのね。
少しは自分の行いを反省すればいいのだけれども。
と、エフェルニアは思った。
もう、姉フェリーヌを煩わせた連中は一人も残っていない‥‥
姉は姉で幸せを見つけたのだ。
エフェルニアは隣国へ留学することにした。
この王国に自分がいる限り、国王陛下にそっくりの自分がいる限りオリビア王妃の心は晴れないのだ。
だから、隣国に行って二度と戻らない覚悟を決めた。
隣国へ向かう馬車に乗り込むときに、父バルト公爵と母マリーが手を握って、
「手紙を書いてくれ。仕送りは出来るだけするから」
「愛しのエフェルニア。いつもあなたの事を思っているわ」
姉フェリーヌは抱き締めてくれた。
「貴方のお陰でわたくしは、前を向いて歩く事が出来るの。有難う。エフェルニア。貴方はわたくしの大事な妹だわ」
「お姉様」
嬉しかった。心の底から嬉しかった。
隣国へ行って何を学ぼう。
隣国へ行って素敵な縁を探そうか。
馬車の中で希望に胸を膨らませて、エフェルニアは隣国へ旅立つのであった。




