001.
「……んぁ?」
じとりと肌に張り付く冷たい空気と瞼を焼く光に目を覚ます。
ごつごつとした岩と湿ったコケの独特の臭いが鼻をくすぐる。どうやら俺は洞窟の中にいるらしい。
体を起こしあたりを見渡すと少し先から太陽の光らしきものが差し込んでいる。そして後ろに続く道は無く、洞窟というよりは洞穴のようだ。
「な、何だここは……?」
記憶があいまいだ。自分が何をしていたのか、なぜこんな洞窟にいるのか。それ以前に自分が何者であるかすらわからない。
だが何か……。
激しい戦い、土と煤、そして血に塗れて、傷だらけで歩くのもままならない。敵は見上げるほど巨大で、強大で、ただただ絶望の中を進んでいて……。
俺はいったい何と戦っていたんだ?
「いや、待てよ」
―――あれは夢だ。
考えれば考えるほど現実感が薄まっていく。
というか、あれ、俺はどんな夢を見ていたんだ……?
何か変だ、俺は何を忘れて……。
「―――っ!?」
すべてが今、まるで脳みそに直接刻まれていたかのように一瞬でフラッシュバックした。
軽い頭痛に思わず頭を抱える。
俺は遠い地にある故郷からの旅の途中でここで休憩していて、そのまま寝てしまっていたようだ。記憶はそう言っている。
何か奇妙な感覚があるが、そんなことはどうでもいい。今は先を急がなければ行けなかった気がする。
そんな強迫観念にも似た焦りが沸いてくる。
「アンデアの街へ急ごう」
目指しているのはアンデアという街。
救世会という魔王討伐を主目的としてその配下の魔物を討伐したり、その他救世という名目でいろいろな慈善活動をしている組織の大本がある街だ。
そこで救世者としての仕事があるのだ。そのトップである救世主を目指すこと。それが俺の目的である。
体に力を入れ立ち上がろうとする。
「っつつ……」
岩場で寝ていたためか体が痛むがそれに耐えて無理やり立ち上がる。
日の光が差し込む方へ歩いていくと外が見えてくる。
見渡す限りの広々とした草原と雲一つない空に心が沸きあがり、自然と口角が上がった。
気持ちのいい朝だ。おそらく今日中に街につくだろう。これからアンデアの救世者として自分の力で、生きていくのだ。




