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ボイスメモ

作者: タケウチX
掲載日:2025/12/26

俺、かなり忘れっぽい。


だから車を運転するようになってから、スマホのボイスメモをよく使うようになった。

運転中に思い出した用事とか、後で絶対忘れるやつを、赤信号のときに一言だけ吹き込む。


「今日のお昼、証券会社に電話」

「帰りに柔軟剤」

「土曜はタイヤ交換」


そんな感じ。

自分にだけ分かればいいから、主語も要らないし丁寧語でもない。


で、たまにあるよな。

あとでボイスメモを見返して、


――あ、こんなの残してたっけ?


ってなるやつ。

たぶんそのときは急いでて、入れたこと自体を忘れてるだけなんだと思う。


……まあ、ここまでは普通だ。


でも、このメモだけは違った。


ある日、運転前に何気なくボイスメモを整理してたら、見覚えのない一件があった。

タイトルは自動生成の日時だけ。


再生してみる。


「……とこむらさんに、ありがとうございます……」


俺の声に似ていた。

でも、大きな違和感があった。

内容が分からない。とこむらさんって誰だよ。


それに、音質がおかしい。

ザーッ、って低いノイズがずっと被ってて、声が水の中みたいに歪んでいる。


誰かが俺のスマホを触った?

一瞬そう思ったけど、録音時刻を見ると、その時間はちょうど高速を運転してたはずだった。


まあ、押し間違えたのかもしれない。

変な独り言を言った可能性も、ゼロじゃない。


そうやって無理やり納得して、そのメモは放置した。


数日後、また増えた。


「……今日は、早めに終わった……」


またノイズだらけ。でも前より少ない。

変な言い方かもしれないけど、めっちゃ俺に似てきた。


内容は相変わらず意味が分からないけど、

語尾の癖とか、間の取り方とか、俺の話し方に近い。


さすがに気味が悪くなって、

その日の行動を思い出そうとしたけど、

何をしてたか、うまく思い出せない。


まあ、俺は忘れっぽいから。


さらに数日後。


「……次は、こう言えばいいんだな……」


ノイズは、ほとんど無かった。

完全に、俺の声だった。


このあたりから、ボイスメモを開くのが怖くなった。

でも、開かないわけにもいかない。

だって、用事を忘れるから。


そして、さっき。


たった今、通知が来た。


新しいボイスメモが保存されました。


嫌な予感がした。

でも再生した。


「今から、帰る」


俺は今、家にいる。

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― 新着の感想 ―
 多重人格なのか、声を似せた幽霊の類いなのか判断に迷いますね。ノイズが減る度に反比例するように増す恐怖困惑の物語、よかったです。
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