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前世の夢、現世の音

黒竜歴448年夏テルア村南の坂は蒸し暑くて、風すら熱くて動かない。あれから1週間くらい経ったかな。私は庭の大木の下で涼んでいた。やっと音楽の先生が来た。ちょっと憂鬱そうな雰囲気で、30歳くらい。爆発ヘアに生意気そうな小さいメガネをかけてて、背中にはピカピカに磨かれた骨ギターを背負ってる。前世の俺がイメージするミュージシャンそのまんまだ。骨ギターなんて初めて見た。面白いね。でも戦闘で使うなら納得だ。「エドワード・ミサトだろ。俺はレイン・レノン、レイン先生って呼べよ。」レイン・レノンって、神様の悪ふざけみたいな名前だな。彼が笛を投げてきて、私はしっかりキャッチした。ちょっと獣臭くて、うっすら緑に光ってる。「蛇牙骨笛」「蛇牙」って、数日前のあの蛇の牙を削ったやつだろ? 蛇牙の大剣を持って人を斬る勇気はあるけど、これを口にくわえる勇気はまだない。でも、もう吹くしかないか。手が震えて、ビクビクしながら笛を口に近づけた。すぐ地面に投げなかっただけでも、音楽への最大の敬意だよ。頭の中にはツルツルの鱗の感触とか、鋭い牙が人を食ったかもしれないとか、そんなことばっかり浮かんでくる。レインが横でイライラして、

「おい、ガキ、遅いんだよ!」と、蛇牙骨笛を私の口に押し込んできた。目が虚ろになって、「蛇牙」って言葉が頭の中でエンドレスリピート。足がガクッとなって動かなくなった。殺してくれ、神様。(蛇牙が人を食ったなら、俺が蛇牙を咥えたら俺も人食ったことになるのか?)「目つきがやばいぞ、死ぬなよ。」と彼が斜めに見てくる。両親は横で何も言わないけど、父親が笑いを我慢してるのがバレバレだ。足が震えて顔が真っ赤、肩がプルプルしてて、「嘲笑」って文字が顔に浮かんでるみたい。母親はあんまりバレてないけど、笑窪で気づいた。肩を叩いて、

「大丈夫よ、エドワード。今回ダメでも次は上手くいくよ。」受け入れるも何も、前世でゴキブリをキーボードで叩くのだって焼酎3本飲まなきゃ無理だったのに、いきなりこんなハードなの来るかよ。1週間経って、やっと蛇牙骨笛を受け入れられるようになった。使わないと魔法が覚えられないし、今後もっと魔物楽器が出てくるだろうし、異世界に慣れるにはまず始めなきゃ。家族の励ましもあって、最初ほど怖くなくなった。笛に触れないこの1週間は、理論知識の授業で代用した。理論なら俺、完璧に覚えてるよ。「お前、ガキのくせに楽理覚えるの早いな。才能あるじゃん。」と彼がビックリして言う。才能じゃないよ。前世で必死に楽理勉強したのがここで役に立っただけ。

「楽理覚えたなら、実践だ。理論だけじゃダメだ。この楽譜通りに吹いてみろ。一音もミスるなよ。」俺、デモしてやるよって、彼がベルトから笛を取り出した。深呼吸して、笛を口に当て、目を軽く閉じる。軽い風が吹いて、暑い夏でも涼しくなった気がした。久しぶりに清涼感があって、少し元気が出た。

「おい、お前だ。覚えたぞ、一音もミスるな。」私も真似して深呼吸して、蛇牙を口に当てた。熱風が吹いてきて、大量のカラスがガアガア鳴いてきた。小清新からデスメタルに急変。彼が首を振って、

「理論はいいけど、実践はカラスよりひどいな。ガキに笛を期待するもんじゃないか。」俺、気まずく顔を掻いた。ネットで見たのと違うな。でも、前世みたいに逃げなくていいのは嬉しいよ。苦笑いしながら思った。数日後、大蛇の内臓や軟骨とか魔物素材が運ばれてきた。肉は大髭に分けてやった。意外と気前いいな。黒竜歴448年秋また数週間経って、完全には上達してないけど、少なくとも吹いてカラスを呼び寄せることはなくなった。うちが近所なしで山を独占しててよかったよ。不でんと、カラスと熱風だけで異端扱いされて1万回処刑されてる。この日、また庭で骨笛吹いてた。レインがイライラして、

「ガキ、音程もう少し練習しろよ。お前の魔法ノイズで耳が爆発しそうだ。」でも両親は俺の「ノイズ」に慣れてるみたい。子供に厳しくしたくないのか、プロの音楽家じゃないから音に鈍感なのか。レインが本を投げてきて、

「理論はバッチリだけど、笛は初心者レベルだ。この曲を練習しろ。連続で音を外さずに吹けたら入门だ。」俺、ちょっと不満そうに、

「笛って何だよ、俺、ギター使いたい。」

(音外しても、パンクバンドみたいにベース叩いて攻撃すればいいだろ。頑丈だし壊れないし。)最悪なアイデアだな、エドワード、何考えてんだ。夢忘れたのかよ。レイン、

「お前、ギター持てるのか? 戦闘楽器は魔物素材でできてて、壊れないように重いんだぞ。」仕方ない、ちょっとだけやってみるか。どうせ持てないし。半年くらい経って、黒竜歴449年春俺、家に飛び込んで、皿洗い中の母親を見つけて、腕をつかんで庭に引っ張った。でも止まった。

「小エドワード、どうしたの?」

「来れば分かるよ。」

「でも忙しいよ。」

「本当に来ないの?」俺、目を丸くして、可愛く見えるように頑張った。窓から差し込む陽光が金髪をキラキラ照らして、前世の俺でも落ちてたかも。彼女、口を押えて笑って、

「普段は小さい大人みたいだけど、可愛いとこもあるんだね。」俺、可愛い目つき攻撃発動、効果抜群。やっぱりついてきた。父親は庭の鍛冶場にいて、彼も呼ぶよ。また同じ可愛い攻撃を試した。

「お前、馬鹿っぽくするにも限度があるぞ。」って、吐きそうな顔で口を押える。

(普段大人っぽすぎて、ダンカンには効かないみたいだ。)「ついてきて、秘密あるよ。」

「お前が父ちゃんの鍛冶の邪魔したら許さねえぞ、クソガキ。」

(でも子供には甘いみたいだ。)俺、両手で腕をつかんで大木のとこまで連れてった。レインが木に寄りかかってて、俺の骨笛持って、

「受け取れ、弟子。」俺、ジャンプして笛を受け取って、手で2回転させて、深呼吸して口に当てた。穏やかな秋風が吹いて、金髪がちょっと乱れた。地面の緑草と小雨が合わさって、草の匂いが漂う。ゆったりした曲にピッタリだ。風に運ばれて空中に浮いた俺、目を閉じて夢中で吹いた。前世の俺、学業に押し潰されて息もできない。音楽を習いたかったけど、金がなくて、両親の空手形が叶うのを毎年夢見てた。大学入って、音楽を学ぶ歳は過ぎてたって気づいた。寮に引きこもって、ネットで自分を逃がして、麻痺させてた。動画サイトで誰かのコンサートや万人合唱見るたび、羨ましくて。ステージに立つのが俺だったらって。楽理の動画を何度も見て、自分が音楽マスターになった気でいた。曲が終わり、涙が目に浮かんだ。やっと分かったかも。ベートーヴェンが聾病でも作曲を続けた理由が。

魔法知識クイズ:なんでエドワードは音楽を習いたいんだろ? ♪(^∇^*)

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