ふりかけ
子供たちが卓袱台の前で、家族が食料を探しに行った火災で真っ黒に煤け倒壊寸前の建物が連なる街の地下で見つけてきた、本を読んでいる。
川向こうの住民が全滅した核シェルターから大量の食料を得ることができ、部落の子供たちは今まで食料を探しに行っていた時間を勉強に当てる事が出来るようになった。
ただ子供たちにしてみれば、食料探しの間にできた摘み食いが出来なくなった不満がある。
子供の1人が白蟻を炒っている老婆に声をかけた。
「婆ちゃん、何か食い物ない? 腹減った」
子供の問いかけに老婆は、足下に転がっていた中身が詰まった透明な容器を子供に手渡す。
「これでも食ってな」
手渡された透明な容器にはラベルが貼られていた。
それを子供達は読む。
「ふりかけ、のりたまこ?
胡麻、鶏卵、砂糖、小麦粉、豚、乳糖、大豆、食塩、etc
製造者、丸〇屋弁当店、か。
ねえ婆ちゃん、ふりかけってなに?」
「昔、戦争が起こる前にごはんにかけて食べていた食い物だよ」
「フーン」
子供たちは容器の中に手を突っ込み、中に入っている物を口に放り込む。
ポリポリクチャクチャプチプチモグモグポリポリ
「昔の人も食べていたんだね、虫を」
子供たちは容器に詰まった、成虫、蛹、幼虫などや虫の卵を見ながら老婆に問いかけるのであった。