■5■ 麦茶と縁側、昼下がり
「ふぅ……風があるとはいえ、暑いわね」
彩お姉ちゃんが少し気だるそうに言った。午後の昼下がり、縁側に出て三人でくつろいでいた。傍らには三人分の麦茶がコップについである。
「でも、都会の暑さよりはましよね」
「うんうんホントだねー。都会の夏はただ暑いだけだもん」
とその時、進が立ち上がった。
「お姉ちゃん、僕、外に出て遊んでくる」
「おいおい、どこにー? 遊ぶとこなんてないんじゃないの?」
「おばあちゃんから聞いたんだ。自転車で少し行ったところに小学校とか神社とかあるって」
「こんなとこにも小学校なんてあるんだ……」
私は口に手を当てて言った。
「それじゃ、行ってくる!」
「気をつけなよぉー。夕方までには帰って来るんだよー」
私の声は家の中に響いて、蝉の鳴き声にかき消された。
「進はまだまだ子供だねー」
くすっと笑って私が言うと、彩お姉ちゃんも同じように笑った。
「千歳も、ね」
「むっ、失敬な。私のどこが子供だって言うのよ」
「ほらほら、そうやってすぐ怒るところっ」
「そんなことないもんっ」
「あらあら、仲ぁよろしかで」
おばあちゃんがいつの間にか縁側に来ていた。
「そんなことないもんっ。彩お姉ちゃんなんか知らないもんっ!」
そんな風にして、私たちの午後は過ぎて行った。