■1■ 男子が三日の鰹節
「お母さん元気にしてるかなー♪」
私が言うと、ボックス席の向かいで外を眺めていた彩お姉ちゃんが車内に視線を戻す。
「進を見たら、びっくりするんじゃないかしら?」
「えっ?」
私の隣に座っていた進は、急に話を振られて彩お姉ちゃんを見る。
「男子、三日会わざれば刮目して見よって言うでしょ?」
彩お姉ちゃんが軽くウインクする。
「あ、なるほど」
「えっ? 男子が三日のかつおぶし見よ?」
なんのこっちゃ。
「男の子は三日で驚くほど成長するって事よ」
もはやボケを訂正することも無く、さらっと説明する彩お姉ちゃん。
「そっかぁ、私もたっくさん成長したもんね♪」
「……」
「……」
「何その沈黙! 言いたいことがあるなら一、二の三で言っちゃった方がいいよーっ! はい一、二の三、どーぞっ!」
「千歳は、千歳のままでいいのよ。えぇ、きっと!」
言ったのは彩お姉ちゃん。私、なんだかフォローされてる?
「……もうっ! 私は私の道を行くんだからーっ!!」
周りの乗客を気にせず、高らかに宣言する。
「静かになさいっ!」
「痛っ! はぁーい……」
ボコンっとぶたれたので大人しくすることにした。このやりとり何度目だろ、とほほ……。