■1■ 風に任せて東へ西へ
時の流れはあっという間だった。
津々浦々、電車に揺られていつも通りの旅程。右から左へ、左から右へ流れる景色を眺めながら、彩お姉ちゃんや進と楽しく過ぎる旅。思い返してみれば、いろんな人と出会って、別れて、また出会って……いろんな土地に、いろんな思い出が染み込んでいくみたいだった。
「ねぇねぇ彩お姉ちゃん?」
「ん? 何、千歳?」
私の隣に座っていた彩お姉ちゃんは、窓の外に向けていた目をこちらに向ける。
「ぁははっ、何でもなーい」
彩お姉ちゃんの肩に頭を乗せる。特等席ー♪
「仕方ないわね……」
彩お姉ちゃんは慣れっこといった風で、軽く私の頭をなでてくれた。
「お姉ちゃん達って本当に仲いいね」
向かいに座った進は、少し呆れ混じりに笑って言った。
「おっ? 優しくって可愛らしい才色兼備な千歳お姉ちゃんにかまってもらえなくて、進君はすねちゃってるのかな? それじゃあ進も混じりますかぁ? にゅふふ」
ここは弟をからかってあげるのがお姉ちゃんの務めなのだ!
「千歳お姉ちゃんって、どっちかというと天然・暴食・我侭・奔放、でしょ?」
「そうね」
冷静にツッコミをいれる進と間髪を容れず同意する彩お姉ちゃん。
「ふ、二人ともーっ! 失礼しちゃう!」
「はいはい、何か反論があればどうぞーっ」
彩お姉ちゃんがレポーターの真似をして私に空気マイクを向ける。
「私、天然じゃないもんね!」
「暴食?」
「え、えっとぉ、ちょっとだけ……」
「わがまま?」
「そのぉ、これでも自重してるというか……」
「奔放?」
「自由に生きるのが私のとりえでありますっ! ……って、あれっ?」
「全部当てはまるじゃない」
にっこりと微笑んで言う彩お姉ちゃん。
「て、天然は当てはまってないよ!」
「自覚が無いから天然なのよ」
「っ! 彩お姉ちゃんのイジワルー……」
「あははっ」
成り行きを見てた進が笑いをこぼす。
「進までー、もぅ……」
いつも通りの電車の中、いつもながらの三人なのでした。
でも、いつかこの二人を越えてみせる! 私頑張る! 超頑張るんだからーっ!!