■2■ 睦月家
「いいかい、よぉくお聞き……」
昨日の話。睦月家の当主から聞かされたのは、寝耳に水の話だった。
「わたしが……睦月家の子……?」
彩お姉ちゃんが驚いて聞き返す。私と進は驚きで何も言えなかった。
「ちょ、ちょっと待って。わたし、物心ついた時から……」
それも当然、と頷く婆様。一つ一つ言葉を選びながら、婆様は昔のことを話していった。婆様の話をまとめると次のような感じだ。
睦月家と如月家には、同い年のお嬢様がいた。二人はとても親しくて、それぞれの家は遠いけど、頻繁に連絡をとりあい、暇を見ては遠出して遊ぶ仲だった。
二人が十八歳になり高校を卒業した後、二人はすぐにそれぞれ結婚することになる。結婚した後も、忙しさに追われながらも、二人の連絡が途絶えることはなかった。
三年くらいたった頃、そんな二人にも違いが出てくる。睦月家のお嬢様は第一子、第二子と子宝に恵まれたけど、如月家のお嬢様には全く子が生まれなかったのだ。如月家のお嬢様が子どもを産めない体だと宣告されたのはその頃。そして、その後もいろいろあって、睦月家に生まれた第三子が、如月家に養子に出されることになった。
しかしなんと、養子に出した直後、どんな神様のイタズラか、如月家のお嬢様は普通に懐妊してしまったのである。それでも、今まで子どもを産めないと言われていた手前、ちゃんと生まれてくれるのか……生まれても、ちゃんと育ってくれるのか……。睦月家には既に長男長女が生まれていたこともあり、養子に出された子はそのまま、如月家の娘として育てられていくことになった。
もう気付いてると思うけど、この如月家のお嬢様というのが私達のお母さん、養子に出された子というのが彩お姉ちゃんだった……と。