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■1■ 夢丘町
そこは、小高い丘の上だった。
昼下がり、何となく降り立った町。今日は比較的涼しい日で、そよ風がさらさらと丘に流れていく。丘にあるのは、どこにでもあるような普通の一本の木。その木の下で、彩お姉ちゃんは静かに町を見下ろしていた。
流石の彩お姉ちゃんでも、睦月家で聞かされたことは相当ショックだったみたい。私だって、すごくショックだった。
「彩お姉ちゃん……」
昨日の夜も、今日の電車の中でも、彩お姉ちゃんはずっと考え込んだままだった。普段だったら、多少心配事があってもそれを表に出さず振舞う彩お姉ちゃんだけど、今回はそれも無理みたいだった。唐突に事実を突きつけられただけでなく、将来に関わる選択までしなきゃならないんだから──