■1■ 電車に揺られてゆらゆらり
がたん、ごとん……もうすっかり聞きなれてしまった電車の音。私も彩お姉ちゃんも進も、揺れる電車に身を任せてる。
お母さんの実家ではお盆の間のんびりと過ごした。でも、一つだけ変わったことがあった。目的地が出来たのだ。
「睦月家、ねぇ……」
ボックス席で向かい合った彩お姉ちゃんがぽつりとつぶやく。進は私の隣ですぅすぅと寝息を立てている。この寝顔、可愛いったらありゃしない!
「実家の人達、何か隠してるみたいだったけど……母さんも一枚かんでるみたいだし」
彩お姉ちゃんは窓の外に目を移した。如月家の当主に言われたのは、山陰地方の旧家・睦月家に向かうように、とのこと。お母さんの許可云々言ってたから、お母さんも何か関係があるみたい。詳しいことは教えてもらえなかったけど……。
「その時の私達には知る由もなかった……果てしなく続くこの線路こそが、睦月家で起こる忌まわしい惨劇へ導く道標だったことを……」
「千歳お姉ちゃんってば物騒だなぁ」
「あひぇら!? す、進、起きてたの!?」
すっかり眠っていると思い込んでいた進が急に声を出すものだから、びっくりしてしまった。
「もう充分寝たから大丈夫」
小さくあくびをして進が目をこする。昨日夜更かしなんてするから、もぅ。
「おはよ、進」
彩お姉ちゃんが進に笑いかける。さっきの悩み顔から一瞬で切り替え……すごい。
「とりあえず今日の夜に着くって連絡は入れてあるから、それまではこの近くでのんびりしましょ」
「はいっ、それなら遊園地がいいです!」
ビシッと挙手して提案、小学校で習ったもんねっ!
「進君、それに対して何かご意見は?」
彩お姉ちゃんは即座に司会役を演じてくれる。
「え? あ、うん……いいと思う……よ」
そして乗り遅れる進。
「それじゃ、久々の遊園地へ、レッツゴーっ☆」
私は挙手した手を握り拳にしてさらに高く手を掲げた。
「千歳、静かになさいっ!」
彩お姉ちゃんの鋭い注意(裏拳)が飛んできた。結構痛い。
「は、はぁーい……」
痛みは一時の恥って言うもんね。えっ? 言わない?
そんなやりとりをしながら、電車でコトコト進んでいったのでした。