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ちあふる☆じゃーにー ~三人姉弟の電車旅~  作者: 霧南
西園寺-さいおんじ-(8月11日)
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■2■ 鳥居に仏の西園寺

「ここはお寺……だよね?」


 彩お姉ちゃんに案内されたのは掃除の行き届いた、立派なお寺らしき場所だった。ぽちぽちと人の姿も見える。


「ええ。西園寺よ。どうして?」

「だって、鳥居なんてあるよ?」

「神仏習合」


 進が慣れた様子で辺りを見回しながら言った。


「シンブツシューゴー?」

「八世紀の奈良時代に始まったとされる、簡単に言えば神道と仏教の堺が曖昧になっていった現象だよ。それに伴って、ここみたいに鳥居のある寺とか、寺のような神社が出来たりしたってわけ。珍しいってほどでもないよ」


 進はさらさらと説明した。


「イマドキの小学生って、恐ろしい子……」


 私が言うと、寺からお坊さんらしき人が顔を出した。五十歳くらいに見えるけど、実際のところは何歳なんだろ。


「如月様、ですか?」


 彩お姉ちゃんがあらかじめ電話をいれておいたのだ。


「ええ、わたしが如月彩です。それと妹の千歳、弟の進です。今日はお世話になります」


 彩お姉ちゃんは丁寧に紹介していった。


「そうですか、お待ちしておりました。ささ、こちらへどうぞ」


 お坊さんがお辞儀をするので、私と進もぺこりと頭を下げた。


「おじゃましまーす!」




 寺はそれなりに広く、清潔感と質素さ、古風さが調和した寺だった。こういうの、わびさびっていうんだったっけ?


「ねぇねぇ、ぼーさん!」

「はい?」


 部屋に案内される途中で、和尚さんは笑顔で振り返った。


「こらこら、千歳、初対面でぼーさんだなんて……」

「ハハッ! 別に構いませんよ。近所の子供なんて、生臭坊主とか平気で言ってますから」


 ぼーさんは楽しそうに笑って話した。子供好きの寛容な人って感じだ。


「でね、ズバリッ! ぼーさんはここに一人で住んでるんですか!?」


 私は指をビッと立てて質問した。


「ん? 一人で? そんなわけないじゃないですか。こんな広い土地を一人じゃ管理しきれません」

「え? じゃあ、他に誰がいるんですか?」

「弟子が二人住み込みで修行してます。今は二人とも出かけてていないのですが……」


 ふぅーん……二人は修行僧ってワケね。でもこのぼーさんなら修行をサボるのもきっと楽勝ね!


「さ、こちらです」

「わぁー広ーいっ!!」


 ぼーさんが案内してくれた部屋は、八畳部屋二つ分くらいの広さだった。


「では、わたしは昼食の支度をしてきますので」


 そう言ってぼーさんはこの場を離れた。


「風流ー、雅ー♪」


 外には、なんの花かよく分からないけど綺麗な花が植えてあるのが見えた。南に面した部屋らしく、太陽の光が部屋いっぱいに差し込んでくる。


「そんなノリノリで言う言葉じゃないわね」


 ため息混じりに彩お姉ちゃんが言う。


「彩お姉様にはこの雅楽は分からないんですのね、オホホ」


 お嬢様笑いをしてちろりんと彩お姉ちゃんを見てやる。


「雅楽は音楽よ」


 またか、とでも言わんばかりにため息をつく。


「……」

「……」

「……彩お姉ちゃんのばかぁ!」


 私の声は空しく夏の音にかき消されてしまいました。

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