■1■ お姉様と呼ばれたい
駅のホームで、私達は別れることになった。
「千歳お姉ちゃん、彩お姉様、進兄、ありがとう!」
少年は精一杯元気に言った。何故か彩お姉ちゃんのことは彩お姉様と呼ぶ少年……な、なんかくやしい。
最初は一泊だけして出発する予定だったけど、もう一泊していかないかと誘われて、もう一日お世話になってしまった。
「元気にして、お母さんの言うことをきちんと聞くんだよ」
私は少年の頭をなでて言った。
「うん!」
真っ直ぐな返事が帰ってくる。
「そしたら、勉強ぐらい少しサボっても全然問題ないからね☆」
「あらあらまぁまぁ、そんなことはわたしが許しませんよ」
後ろで会話を聞いていた少年の母親が笑顔で少年の肩に手を乗せる。
「ありゃりゃ、君のお母さん、怒った時の私のお母さんにそっくりだよ」
ふっと少年に笑いがこぼれる。私も思わず笑ってしまった。電車の発車ベルが鳴り響き、別れの合図を告げる。
「それでは、大変お世話になりましたっ!」
私は深々と頭を下げて電車に乗り込んだ。電車のドアが閉まり、ゆっくりと動き始める。
私が手を振ると、少年と母親も手を振った。私は口パクで「さよなら、げんきでね」と言った。通じたのかどうかは分からないけど、少年は大きく頷いてくれた。