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■3■ トゥインクル・アット・イレヴン・オクロック
夜の十一時、クーラーの効いた部屋で、私達三人──おや、進はもう寝てるから二人か──はそれぞれの時間を過ごしていた。彩お姉ちゃんはコツコツと宿題をやっている。
「絶対に今日は一日お姉ちゃんと語り合う!」と意気込んでいた男の子も流石に十一時まではもたないようで、十時を回った頃には健やかな寝息をたてて眠ってしまった。今は別室に連れて行かれて、母親の側で寝ている。
「この旅、いつまで続くのかなー」
私は不意に気になったので言ってみた。
「さぁ、ね。少なくとも夏休みが終わる前には帰れると思うけど」
勉強をする手を止めず、ノートに目を落としたまま彩お姉ちゃんが答えた。
「そっかー、夏休みが終わるまで、か……お母さんから何か連絡あった?」
「メールが来てたわ。まだまだ旅してなさい、だって。あと、明後日は千里町に泊まるといいって」
「千里町?」
「昔、父にピアノの手ほどきをしてくれた先生がいるらしいわ」
「そ……なんだ」
私は窓の外、遠く彼方できらきらと輝いている星達を見ながら物思いにふけった。