■1■ 出発!
「千歳、早く! 早く!」
「およよよよよ」
急がなきゃ。電車のベルがもう鳴り始めてる! ええい! 滑り込みだー!
「はぁ、はぁ……ギリギリセーフッ!」
「ほんっと、千歳といると、寿命が何年縮まったか分かったもんじゃないわね」
彩お姉ちゃんの小さなため息が一つ。
「駆け込み乗車はー、おやめくださいー」
「ご、ごめんなさーいっ!」
車掌さんのアナウンスが流れてきたので、つい謝ってしまった。
「大丈夫? 千歳お姉ちゃん」
進が私を心配して言ってくれた。
「大丈夫大丈夫。心配してくれるなんて、進は優しい子だなー。どっかのお姉ちゃんとは大違い」
周りの目も気にせず、ちろりんとした眼を彩お姉ちゃんに向けてやった。
「千歳……あなた、いい度胸してるじゃない?」
ギロリンとした眼が私に返ってきた。空手、合気道、なぎなたにかけては町一番と言われる彩お姉ちゃんに勝てるはずはなかった。
「ふっふっふ。今日の私はいつもの私とはちょーっと違うのよ?」
「何が違うの? 面白いこと言うわね。何が変わったか、見せてもらいましょうか」
「服の裾、ドアの隙間に挟まれて動けない……」
「……」
「……」