■3■ ごく・きょく・ぎめ!
「さて、と。涼しくなってきたことだし、今日は向こうに見える旅館に泊まるとして、夕方のチェックインまではそこの図書館で寛ぐとしますか」
「賛成、いえーい!」
私は彩お姉ちゃんの提案に即賛成の意を表明した。
「千歳お姉ちゃんは相変わらず元気だねぇ」
進がぽつりとつぶやく。元気だけが私のとりえよっ!
「それじゃあ、わたしは旅館で話をしてくるから、千歳と進は先に図書館に行ってて頂戴な」
「ラジャー!」
私は警察官の真似をして彩お姉ちゃんに敬礼した。
「じゃ、進、とりあえずあのゲツゴク駐車場の所まで競争しよっか☆」
「……」
「……!?」
暫くの間沈黙と静寂が場を支配する。
「どうしたの?」
「千歳……何駐車場だって?」
一生懸命何かをこらえているような声で彩お姉ちゃんが言う。
「ゲツゴク駐車場?」
とたんに彩お姉ちゃんと、進まで笑い出す。
「何!? 何がおかしいの!?」
「何って、あれを『ゲツゴク駐車場』って読む? フツーっ!」
看板には月極駐車場って書いてある。満月のゲツに、極道のゴク、だよね、だよね!?
「千歳ったら可笑しー! あれをゲツゴク駐車場って読む人がいるなんてッ! 普通に読んだらゲッキョク駐車場でしょ!」
それを聞いて進がさらに笑い出す。
「彩お姉ちゃん、それも、違っ! あはっ、はははっ! あれはツキギメ駐車場って読むんだよ! 二人とも高校生なんだから、しっかりしてってば」
それを聞いて彩お姉ちゃんの顔が一気に赤くなる。
「あー、やーい、彩お姉ちゃんも間違えてっるぅー。あははっ☆ 彩お姉ちゃんも人のこと言えないんだーっ!」
「ち、千歳! あんたも間違ったでしょっ!」
彩お姉ちゃん、かなりうろたえている、ぷくくっ。
「彩お姉ちゃんも間違えたー♪」
プチンと何かの切れる音がした気がした。進が笑うのをやめておどおどし始める。
「千歳……この 彩 様 を笑うとはいーぃ度胸してるじゃないの?」
やばいっ! 目が据わってるとかそんなレベルじゃなくなってるっ!?
「あやや……ははぁ、御見逸れ致しましたぁ!」
時代劇でよく見るアレよ、アレ。この場を乗り切るにはこれ!
「……なーんちゃって」
そう言って彩お姉ちゃんは声を上げて笑い出した。私と進も自然と笑えてくる。それは、本当に自然な、心の底から湧き出てくるような、そんな笑い。私達三人は、その場でしばらく声を上げて笑っていたのでした。めでたしめでたし♪