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ちあふる☆じゃーにー ~三人姉弟の電車旅~  作者: 霧南
夏樹橋-なつきばし-(8月5日)
12/48

■1■ 見送り少女と老婦人

「だいぶお世話になっちゃって、本当にありがとうございました」


 電車のドアの前でそう言って彩お姉ちゃんは頭を下げる。私と進も頭を下げた。


「いえいえ、これといったもてなしも出来ずに恐縮です。この子の遊び相手までしてもらって、こちらこそありがとうございました」


 ホームはまばらに人がいるばかりで、老婦人の凛と澄んだ声が私の耳に余韻を残した。


「それでは、さよならですね」

「ええ。またいつか、どこかでご縁があるといいですね。ほら、あなたもさよならなさい」


 老婦人は後ろでもじもじしている少女を軽く送り出した。


「さ、さよ……なら……」


 少女はうつむきながらもちゃんとお別れの挨拶を言った。


「これ」


 進が小さな紙切れを少女の手に持たせた。


「絶対、手紙書くんだよ!」


 そう言って振り向くと、進は走って電車内に駆け込んだ。発車の時刻を知らせるベルが鳴り響く。


「やれやれ、進もませちゃってー。それじゃあ、本当にさようなら」

「さようなら」


 老婦人はそう言って手を振った。私はしゃがみこんで少女の頭に手を置き、話しかける。


「おばあさまの言うことをきちんと聞いて、いい子にしてるんだよ」


 こくりと頷いて少女は老婦人の陰に隠れた。本当に可愛いー、進にはもったいないね。


 ドアが閉まり、電車はゆっくりと出発した。老婦人と少女の姿が次第に小さくなり、周りの景色が速くなっていく。そうして二人の姿は見えなくなっていった。

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